2013年1月アーカイブ

原告の方としては、市との間の地位確認等を求められており、この点が認められなかったのは、従前からの司法判断の壁である「公務の任用関係は任命権者の行政行為」という理屈によるものであり、この点は大変残念ですが、裁判所が次の判断を示し、市に金150万円の損害賠償を命じたのは、非正規公務員の権利実現にむけて大きな力となるものと思われます。控訴審で基本的維持され、双方上告なく確定したようです。

東京地裁判決抜粋

「原告の担当業務は、レセプト点検という継続性があり恒常的なものであるところ、上記認定事実、特に、原告が、21回という多数回にわたって繰り返し再任用され、任用継続期間の上限とされる5年をはるかに超える21年3か月の長期間にわたって被告のレセプト点検業務を継続して担当してきたこと、任用の当初、原告は、被告の担当者からは、勤務成績が良好であれば任用が継続されていくのではないかという趣旨の、原告にとっては長期勤務を期待させる説明を受けていたこと、原告は極めて高い評価を受ける職務成績を毎年積み上げていたこと、被告は、原告の再任用に当たり、毎年委嘱状を交付したものの、任用期間が1年であることを改めて説明することもなく、原告について本件要綱に定められた雇用継続期間の5年を超える任用が継続し、また原告もそのことを認識していた状況にあったのに、かかる状況を長期間いわば放置し、積極的な是正措置を取ってこなかったことなどに照らすと、原告が、上記期間中一貫して委嘱期間を1年とする委嘱状を交付され、その任用期間自体については認識していたと思われることや、平成3年には任用継続期間の上限が5年であることを認識し、遅くとも平成16年に誓約書を提出するころには、自分にも本件要綱の適用があることを認識していたことなどの事情を考慮しても、原告が再任用を期待することが無理からぬものと見られる行為を被告が行ったという特別の事情があると認めるのが相当である。」

このように、原告の任用継続に対する期待は法的保護に値するものというべきところ、以上の認定事実に照らすと、被告は、平成21年1月になって、突然に次年度以降原告の再任用を拒絶する旨表明したといわざるを得ないものであって、本件再委嘱拒否により、上記期待を違法に侵害したものと解するのが相当である。」

 

1つめ(東京地裁H24・2・8 判例時報2165号87頁)は、墨田区作成の高度地区の表記が誤っていたために、その表記を前提にマンション建築事業を計画したところ、その後誤りが判明し、正しい情報を前提とすると先のマンショ建築事業を断念せざるを得なくなった事案につき、953万円ほどの賠償を命じたものです。

2つめ(東京地裁H24・8・7 判例時報2168号86頁)は、千葉県が、国定公園無いの普通地域の土地を開発分譲しようとする業者に対し、特別地域であることを前提に誤った行政指導を行った事案につき、407万円ほどの賠償を命じたものです。

行政が誤った判断・行為を行った場合に責任を負うのは当然ですが、地区・地域指定など、行政分野の中でも専門性が要求される分野で、いわばこうした単純・基本的ミスが立て続けに生じることは、単に担当者個人の問題ではなく、組織の存立にかかわる重大な警鐘とも感じられます。

 

簡易裁判所では、事件処理の簡略化・迅速性等の観点から、証人尋問が実施されても、事実上録音されるものの、記録化(証拠化)されない取り扱いとされることがあります(民事訴訟法規則170条1項)。

その結果、当事者のいずれかが判決に不服で、控訴となった場合に、控訴審(地方裁判所)で、簡裁段階の証人尋問(結果)の取り扱いが問題となります。

結論としては、

・ 簡裁段階での証人尋問は何ら訴訟上の証拠・記録にはなっていない

・ それゆえ、簡易裁判所は、証人尋問調書・結果を判決の基礎にはできない

・ 控訴審裁判所(地方裁判所)も、訴訟上の正式記録ではなく事実上録音されたに過ぎない証 人尋問についての録音テープを聞いてはならない

等となります。

実務では当事者のいずれかは録音反訳書面を証拠として提出することも多いですが、証人尋問を実施しておきながら、果たしてそうした負担を当事者におわせていいのか、上記結論の妥当性など検討されるべき課題も多いように感じます。

ご紹介の判例(判例時報2165号84頁)は控訴審(地方裁判所)が上記結論・法令に違反した誤りを指摘するもので、いわゆる簡裁事件につき、実務上は留意が必要かと思われ、ご参考までにアップしました。

 

消費者が、パソコンでインターネット通信サービスを利用した結果、通信料として金20万5671円という予想外の高額請求を受けた事案につき、インターネットに係る事業者側・消費者側の特性等を詳細に指摘したうえ、「以上に掲げた諸事情を考慮すれば、本件通信時において、原告のアクセスインターネットの利用により高額なパケット通信料金が発生しており、それが原告の誤解や、不注意に基づくものであることが被告においても容易に認識し得る場合においては、被告は、本件契約上の付随義務として、原告の予測外の通信料金の発生拡大を防止するため、上記パケット通信料金が発生した事実をメールその他の手段により原告に告知して注意喚起をする義務を負うと解するのが相当である。」として、電気通信事業者に対し、金10万7138円の損害賠償を命じました(判例時報2165号106頁)。

電気通信事業者の通信サービスシステム等に対する専門・独占的立場を前提に、消費者側との格差・不均衡を救済する考え方として、実務上も大いに参考になると思われます。

 

Aを含む友人4名で、海外旅行等のための積立てとして、A名義の口座に約240万円の積み立てがなされていたところ、Aの債権者がその口座の全額につき強制執行を実行した事案につき、同口座の積立金は信託財産であるとして、A以外の3名分(約180万円)に対する強制執行は認められないとした事案です(判例時報2166号73頁)。

信託財産とされればAの財産からの独立性が認められるものです。

相外旅行目的に限らず、知人間のこのような積立ては日常的に行われているものと思われ、裁判例はこうした日常生活の実態・銀行口座利用の有用性を保護したものと思われ、また、今後の積立ての方法等のあり方の参考になると思われます。

 

国民生活センター発行の消費者問題専門誌「月刊国民生活」が、ウェブマガジンとして発行されるようになりました(紙の書籍はなくなりました)。消費者問題の貴重な情報誌で、今回は、LLCの仕組み・相談事例も分かりやすく解説されています。継続的にみていくと、消費者問題への理解がより深まると思います。是非、ご参照下さい。

ウェブマガジン国民生活 → http://www.kokusen.go.jp/wko/index.html

※ LLCの記事も、上記にアクセスいただければ、すぐにアクセスできます。

 

 

投資被害、欠陥住宅被害など、消費者被害の場面では、『加害行為を基準とすると3年、20年』といった時効・除斥期間という、権利消滅期間が経過してしまっている事案も少なくありません。東日本大震災をきっかけに被害が発覚した事案も少なくありません。

こうした事案について、被害者側が『時の経過』のみで救済されなくなってしまうことは正義に反することも多いと感じられるなか、ご紹介させていただいた書籍は、正義の実現・被害者救済にむけて、多くの判例を分析され、実務上も大きな力をいただける内容となっています。

『時の経過』を乗り越え被害救済に取り組む方はもとより、法的正義の考え方に触れることができる文献として、紹介させていただくものです。