2013年9月アーカイブ

明示的一部請求における残部の時効中断効の議論がありますが、最判平成25年6月6日(判例時報2190号22頁)は、裁判上の催告の効果を認め、判決確定後6か月以内に残部につき提訴すれば時効中断効を確保できる旨判示しました。

この点の判断も重要ですが、弁護士実務的には、上記判示がありながら、本件では、明示的一部請求訴訟の前に、内容証明で残部部分の請求をしていたから、明示的一部請求訴訟は2度目の催告にあたり、催告の繰り返しによる期間延長は認められないとした点も、とても重要と思われます。なぜなら、弁護士実務上、訴訟提起前や受任後、内容証明郵便で請求することは通常の方法なので、これをもって催告となり事後の明示的一部請求訴訟に催告の効果が認められないことになるのであれば、慎重な対応と留意が求められるからです。

一般の判例解説とは異なる視点ですが、参考までアップさせていただきます。

【参考・法案】秘密保全法案の問題点

秘密保全法案(正式には「特定秘密の保護に関する法律案」)につき、内閣官房からパブリックコメント募集がなされています。

秘密保全法案は、内容的には(1)国民の表現の自由・思想良心の自由などを侵害すること、(2)法律による罰則化を図る根拠事実(立法事実)が存しないこと、手続的には(3)行政内部では条文化した法案を検討していながら、それを国民に示さないこと、(4)パブリックコメント期間が僅か2週間(9月17日まで)であること等々、問題点だらけです。

問題点の詳しい把握は、日弁連の意見書、情報公開市民センターの特集ページが参考になります。パブリックコメントの提出方法も情報公開市民センターの特集ページから入手できます。

日弁連意見書 → http://www.nichibenren.or.jp/activity/document/opinion/year/2013/130912.html

情報公開市民センターの特集ページ → http://www.jkcc.gr.jp/

 

本件は、消費者契約法13条に基づく内閣総理大臣の認定を受けた適格消費者団体である京都消費者契約ネットワークが、会員制冠婚葬祭業者において解約時に払戻金から所定の手数料が差し引かれる旨の条項(解約金条項)を使用していることにつき、係る各条項は、消費者契約法9条1号に定める平均的な損害の額を超える違約金を定めるものであり、また、信義則に反して消費者の利益を一方的に害するものである(同法10条)旨主張して、主位的に、解約金を差し引くことを内容とする意思表示等の差止めを求め、予備的に、控訴人らが現実に使用している約款等に基づく意思表示等の差止めを求めた事案であり、大阪高判(平成25年1月25日・判例時報2187号30頁)は、差し止めを認めたものです。

一審の京都地判(平成23年12月13日・判例時報2140号42頁)も差し止め等を認めています。

適格消費者団体の事案であること、個別的にも消費者契約法の具体的適用場面を示すことなど実務上も参考になると思われます。

なお、京都消費者契約ネットワークのHPもあります判決文も掲載されています。

HP → http://kccn.jp/

判決文 → http://kccn.jp/tenpupdf/2012/20130125celemahanketu.pdf

 

 

本件はいわゆる国鉄分割・民営化に関する事案であり、国鉄が行った新会社(JR各社)への採用候補者名簿不記載基準の策定等が不法行為を構成する旨判示するものであり、係る判断もとても重要ですが、国鉄側の消滅時効の主張を認めなかった点でもとても重要な判断を示しています。

詳細は判決文にあたっていただくことになりますが(東京地裁平成24年6月29日・判例時報2187号95頁。なお時効136頁以下です)、「最高裁判決が言い渡された時点(平成11年12月17日時点)で加害者が国鉄であることを知ったと解する余地がないわけではない。」としながら、「しかしながら、前記イで説示したとおり、『損害及び加害者を知った』時点とは、被害者による損害賠償請求権の行使が事実上可能な状況にあることをその前提とする」と判示し、最高裁・裁判例でも見解が別れていたこと、紛争の本質からすれば当時原告らに本件請求を行わせるのは矛盾する面もあること等を指摘し、「採用候補者名簿不記載にかかる損害賠償請求権の消滅時効は。最大限遡ったとしても平成15年12月22日以降であるというべきである」として、国鉄側の消滅時効の主張を排斥したものです。

消滅時効の問題は被害者救済の大きな壁となることがありますが、本判決は、そうした不当な障害を取り除く重要な判断を示しているものと思われます。

なお、消滅時効・除斥期間の問題について、松本克美教授「新・時効と正義ー消滅時効・除斥期間論の新たな展開」(日本評論社)が、被害救済の実務にも大きな力となっています。

 

最判平成25年4月9日(判例時報2187号27頁)は、建物の地下1階部分を賃借して店舗を営む者が従前建物の所有者の承諾の下に1階部分の外壁等に看板等を設置していたところ建物が譲渡された事案において、賃貸店舗と看板等が社会通念上一体のものとして利用されてきたという事実等に鑑み、建物譲受人が賃借人に対して当該看板等の撤去を求めることは権利の濫用にあたると判断しました。東京高判は撤去等を認めていましたが、これを誤りとしたものです。

判決文全文・事実関係は最高裁HPに掲載されています。

http://www.courts.go.jp/search/jhsp0030?hanreiid=83174&hanreiKbn=02

また、対抗力等の問題における参考判例として以下があります。

・ 借地権・権利濫用法理の保護を示すもの 最判昭和38年5月24日(民集17・5・639)

・ 一筆の土地にのみ登記建物あるケースで、他の一筆への土地の明け渡し請求が権利濫用とされたもの 最判平成9年7月1日(判例時報1614号63頁)

実務上、重要な判断を示すものと思われます。