2014年1月アーカイブ

さいたま地裁は、「生活保護実施機関の義務」につき、「生活保護実施機関は、生活保護の開始の申請があったときには保護の要否、種類、程度及び方法を決定し、これを書面で申請者に通知する義務を負う(生保法24条1項。以下「審査・応答義務」という。)。また、後記(2)の申請行為が認められないときでも、相談者の申請権を侵害してはならないことは明らかであり、生活保護実施機関は、生活保護制度の説明を受けるため、あるいは、生活保護を受けることを希望して、又は、生活保護の申請をしようとして来所した相談者に対し、要保護性に該当しないことが明らかな場合等でない限り、相談者の受付ないし面接の際の具体的な言動、受付ないし面接により把握した相談者に係る生活状況等から、相談者に生活保護の申請の意思があることを知り、若しくは、具体的に推知し得たのに申請の意思を確認せず、又は、扶養義務者ないし親族から扶養・援助を受けるよう求めなければ申請を受け付けない、あるいは、生活保護を受けることができない等の誤解を与える発言をした結果、申請することができなかったときなど、故意又は過失により申請権を侵害する行為をした場合には、職務上の義務違反として、これによって生じた損害について賠償する責任が認められる。」として、市の対応の違法性を認定しました(判例時報2196号88頁。確定しています)。

 

窓口規制の問題を指摘し、行政側に適正な対応を求めるもので、実務上も参考になると思われます。

パブリシィ権については、最高裁平成24年2月2日判決が「人の氏名、肖像等(以下、併せて「肖像等」という。)は、個人の人格の象徴であるから、当該個人は、人格権に由来するものとして、これをみだりに利用されない権利を有すると解される(氏名につき、最高裁昭和58年(オ)第1311号同63年2月16日第三小法廷判決・民集42巻2号27頁、肖像につき、最高裁昭和40年(あ)第1187号同44年12月24日大法廷判決・刑集23巻12号1625頁、最高裁平成15年(受)第281号同17年11月10日第一小法廷判決・民集59巻9号2428頁各参照)。そして、肖像等は、商品の販売等を促進する顧客吸引力を有する場合があり、このような顧客吸引力を排他的に利用する権利(以下「パブリシティ権」という。)は、肖像等それ自体の商業的価値に基づくものであるから、上記の人格権に由来する権利の一内容を構成するものということができる。他方、肖像等に顧客吸引力を有する者は、社会の耳目を集めるなどして、その肖像等を時事報道、論説、創作物等に使用されることもあるのであって、その使用を正当な表現行為等として受忍すべき場合もあるというべきである。そうすると、肖像等を無断で使用する行為は、①肖像等それ自体を独立して鑑賞の対象となる商品等として使用し、②商品等の差別化を図る目的で肖像等を商品等に付し、③肖像等を商品等の広告として使用するなど、専ら肖像等の有する顧客吸引力の利用を目的とするといえる場合に、パブリシティ権を侵害するものとして、不法行為法上違法となると解するのが相当である。」と述べるとおりであり、本件は、これの具体的な適用事例です(東京地裁判決は判例時報2195号45頁)。社会的に活動中の有名グループらの事案であり、その賠償額も含め参考になると思われます。

 

最高裁平成24年2月2日判決・最高裁HP↓

http://www.courts.go.jp/search/jhsp0030?hanreiid=81957&hanreiKbn=02

新築住宅について、木製窓・木製サッシを設置後、雨漏り等により内部に雨水が浸入し、窓に腐蝕や変色等が生じた事案において、請負人に設置上の瑕疵があるとして、金244万円余の賠償を命じた事案です(判例時報2196号12頁)。

この事案では、請求者の権利行使期間(除斥期間)の経過も争点とされましたが、東京高裁は、当該瑕疵は、住宅の品質確保の促進等に関する法律(品確法)94条1項の「雨水の浸入を防止する部分」にあたるとして、10年間の権利行使を認めました。

品確法94条(瑕疵担保期間を10年とする規定)の事例に関する裁判例は多くはなく参考までにアップします。

 

 

岡山地裁は、ショッピングセンターの義務内容につき、「本件店舗のようなショッピングセンターは、年齢、性別等が異なる不特定多数の顧客に店側の用意した場所を提供し、その場所で顧客に商品を選択、購入させて利益を上げることを目的としているのであるから、不特定多数の者を呼び寄せて社会的接触に入った当事者間の信義則上の義務として、不特定多数の者の日常あり得べき履物、行動等、例えば、買い物袋を載せたショッピングカートを押しながら歩行するなどは当然の前提として、その安全を図る義務があるというべきである。」として、本件においては、「これを本件についてみるに、前記認定事実によれば、本件事故当日は、本件売場において、「○○の日」として一部のアイスクリームが値引きされて販売されており、また、同日はハロウィンでもあったことから、多数の客が集まり、本件事故当時も、約20名の客が行列をつくっていたこと、本件売場の飲食スペースは、机が数個、椅子が数脚存在するだけであったことが認められ、これらの事情に本件売場で取り扱うアイスクリームという商品の特性をも併せ考慮すると、本件売場でアイスクリームを購入した顧客が本件売場付近の通路上でこれを食べ歩くなどし、その際に床面にアイスクリームの一部を落とし、これにより上記通路の床面が滑りやすくなることがあることは容易に予想されるところである。そうすると、本件店舗を運営する被告としては、顧客に対する信義則に基づく安全管理上の義務として、少なくとも多数の顧客が本件売場を訪れることが予想される「○○の日」については、本件売場付近に十分な飲食スペースを設けた上で顧客に対しそこで飲食をするよう誘導したり、外部の清掃業者に対する清掃の委託を閉店時間まで延長したり被告の従業員による本件売場周辺の巡回を強化したりするなどして、本件売場付近の通路の床面にアイスクリームが落下した状況が生じないようにすべき義務を負っていたというべきである。しかるに、被告が、これらの義務を尽くしていないことは明らかであり、これにより、本件売場付近の通路の床面にアイスクリームが落下した状況を生じさせ、本件事故が発生したのであるから、被告は、不法行為に基づき本件事故により生じた損害を賠償する責任がある。」と判示し、金862万円余の賠償を命じました(賠償額過失相殺2割。確定しています)(判例時報2196号99頁)。

ショッピングセンターの増加に伴い事故も増加しており、実務上、参考となる事例と思われます。

被害者は、「重度の四肢麻痺の後遺障害を有し、上肢は両肘がかろうじて屈曲できる程度、車いすの操作についても全て介助を要し、排尿、排便も自力では困難な状態にあって、最低限の身辺の清潔及び健康維持を持続的に行うことができない状態」という極めて重大な被害を受けている事案です。

 

東京地裁H25・3・25は、自転車の欠陥につき、「前記二のとおり、原告太郎は、本件自転車により走行中、そのサスペンションが分離し、前輪及びこれと連結しているアウターチューブが脱落したことによって、支持を失って転倒して受傷したものであるところ、以上によれば、原告太郎は、本件自転車を、その特性に従い、通常予想される使用形態で使用していたのであって、購入後の経過期間、保管やメンテナンスの状況を考慮しても、本件自転車は、走行中にサスペンションが分離したという点において、通常有すべき安全性を欠いていたといわざるを得ない。」「前記二にみたとおり、本件自転車のサスペンション内のスプリングが破断し、原告太郎の走行中にサスペンションが分離するに至った具体的、科学的機序の詳細については、証拠上、いまだ十分には解明されていないところではあるが、本件における製造物責任法にいう「製造物」とは自転車であって、上記アからウのとおりの本件自転車の特性、通常予想される使用形態、引渡時期からすれば、本件事故における転倒の原因が本件自転車の部品であるサスペンションの分離であることが主張立証されれば、製造物責任法に定める欠陥についての主張立証としては必要十分であり、これ以上に、サスペンションの分離に至る詳細な科学的機序、あるいは、サスペンションの構造上の不具合までを主張立証する必要はないと解するのが相当である。このように解しても、製造物責任法に定める「欠陥」の捉え方としては十分に具体的であって、欠陥の有無についての攻撃防御を尽くすことは可能であり、また、製造業者等の行為規範としても具体性に欠けるところはないと考えられる。」として、製造物責任法の趣旨に鑑みた妥当な判断を示しています(過失相殺1割)。

かかる判断は、最高裁でも確定している仙台高裁平成22年4月22日・判例時報2086号42頁(携帯電話機やけど事件)で示された考え方に従うものと理解され、同仙台高裁判決とともに、製造物責任法の被害救済に大きな力となる判断と思われます(業者側から控訴あり)。

 

仙台高裁平成22年4月22日に関する「弁護士メモ」↓

http://www.kc-law.jp/myblog/2010/04/post-30.html

第2回目は【第2章 消費者契約の過程ー契約の成立と意思表示の瑕疵】になります。

 

この章では、消費者被害救済の基本的な法理論と、被害者消費者契約(消費者被害の原因ともいえる契約)と一般の契約と異同が述べられています。契約の基礎理論の理解を前提としていることから、やや難しい面もあるかもしれませんが、ここでもまずは第2章全体を通読し、「消費者被害は契約の悪用による」といわれる雰囲気を感じ取れればよいと思います。通読後、以下の視点で、自分なりの答え(文字にして2~5行程度のコンパクトのもの)がもてるか確認し、また、知人・友人に説明できるか確認してみるとよいでしょう(鏡に向かって自分自身に説明してみることでもよいと思います)。

 

Q1 消費者被害救済の法理として、4つあげるとすればどのような分類となるか。また、その4つは「契約の拘束力」の視点からどのような違いがあるか。

Q2 「書かれざる法律」とはどのような意味か。

Q3 消費者契約において「真意」を重視すべき必要性はどのような理由からか。

Q4 消費者取引の特色(実情)はどのような点にあるか。

Q5 「契約締結上の過失」とはどのような考え方か。

 

次回は「第3章 消費者契約の過程2ー契約内容と効力」です。

小学生の自殺という深刻な被害であり、必ずしも被害者ご遺族のお気持ちに沿う判断かは把握しかねるものではありますが、学校側に原因調査や報告義務を認めた点(地方公共団体の賠償責任も認めています)では、こうした被害において被害者・ご遺族の真の願いが真実究明・再発防止にあることが少なくない実態からみても、意味ある判断と思われます。

判示部分(規範部分)は以下のとおりです。

 

「在学中の児童が自殺し、それが学校生活上の問題に起因する疑いがある場合、当該児童の保護者がその原因を知りたいと思うのは当然のことであるが、保護者において、学校生活上の問題を調査することは困難である。他方、学校がその点を調査することは、学校が教育機関として他の児童の健全な成長やプライバシーについて配慮すべき立場にあり、その調査能力に一定の限界があることを考慮しても、保護者がこれを行う場合に比べてはるかに容易であり、その効果も期待できることは明らかである。
 学校設置者は、在学する児童の学校生活上の安全に配慮して、無事に学校生活を送ることができるように教育・指導をすべき立場にあるのであるから、児童の自殺が学校生活上の問題に起因する疑いがある場合、その原因を究明することは、健全な学校運営にとり必要な事柄である。したがって、このような場合、学校設置者は、他の児童の健全な成長やプライバシーに配慮した上、児童の自殺が学校生活に起因するのかどうかを解明可能な程度に適時に事実関係の調査をしてその原因を究明する一般的な義務を負うと理解できる。また、自殺した児童の保護者から、自殺の原因についての報告を求められた場合、学校設置者は、信義則上、在学契約に付随して、当該児童の保護者に対し、上記調査義務に基づいた結果を報告する義務を負うというべきである。」(判例時報2202号82頁以下。抜粋部分は101頁)。

いわゆる学校事故の事案であり、東京高裁は、被害生徒が約1カ月前に柔道を始めたばかりであること、試合前の練習相手と大きな技量差があったこと、試合前の練習では全力で対応すること、被告生徒が2週間ほど前に脳震盪になっていたこと等の事情から、教諭に危険が生ずる予見は可能でありながら、その対策を怠ったものとして、教諭の過失を認め、学校法人に賠償を命じたものです(判例時報2195号20頁)。なお、損害の認定にあたり過失相殺1割としています。判決は確定しています。

 

判決が「柔道における傷害により疾病や死亡に至る事故も平成15年から8年間で86件も発生しており、そのうち55.8%が中高生に発生している」と指摘するとおり、中高校生での柔道事故は、多発・深刻な状況にあり、事後的法的賠償はもとより一学校・教諭の問題ではなく、国・学校の教育制度のあり方そのものの問題として、現代的かつ現実的な対応が急務であることを示す判決であるとも把握されます。

大阪高裁は、顧客の状況につき「本件取引開始(平成20年1月20日)当時、一人暮らしの満76歳の女性であって、その年齢自体、相当な高齢であることから、年齢相応に判断能力が低下していたことが容易に推認できるし、投資に関し、適切な助言ができる者が側にいたわけでもない。」「しかも、平成17年3月には、正常圧水頭症にアルツハイマー病を合併した痴呆により、判断能力が低下し、後見を開始されていたのであり、平成19年11月30日には正常圧水頭症が改善したこと等から、後見開始の審判が取り消されたものの、それから2か月も経たないうちに本件取引が開始されているのである。」と認定し、後見開始取消審判が存したとしても、「主体的な判断で証券取等を行うことが不可能な状態であったということができる。」として、証券会社へ賠償を命じました(判例時報2197号29頁。なお、過失相殺2割。確定しています)。

 

顧客の状況は、顧客に直接会えばより一層感得されるはずですから、こうした顧客をして証券取引を行わしめる業者の実態を明らかにする意味でも、とても重要な事案と思われます。

銀行を勧誘者等とする投資関係被害が多発しており、多様かつ多数。深刻な申出がなされている状況が、全国銀行協会のホームページに掲載されています。

              

申出内容について

平成25年度7月~9月 (別紙)あっせんの申立て事案の概要とその結果

http://www.zenginkyo.or.jp/adr/conditions/index/conditions01_2502_2.pdf

 

各種データ・分析について

全国銀行協会 紛争解決等業務の実施状況

http://www.zenginkyo.or.jp/adr/conditions/

被害者の方は、「昭和5年に生まれ、第二次世界大戦中に国民学校高等科を卒業後、実家の農業を手伝い、終戦後は、宿泊施設で仲居として働いた。原告は、昭和30年に〈略〉職員であった亡夫と結婚した後は専業主婦であったが、昭和42年頃から、自宅近くの工場で化粧品のケースなどを作る作業に従事し、平成2年に定年退職した。」「原告は、以後無職であり、本件取引当時も無職であった。「本件取引の当時、77歳であり、亡夫から相続した自宅で一人暮らしをしていた。」「原告の収入は、年間247万1900円程度の年金(老齢基礎厚生年金、遺族厚生年金、〈略〉共済)であった。」「原告が本件商品購入時に解約した本件定期預金は、亡夫が被告に預け入れた1000万円の定期預金とその利息及び原告が被告に預け入れた1000万円の定期預金とその利息を合わせたものであった。」とされる方でした。大阪地裁は、かかる属性等を基礎に、「以上によれば、乙山及び丙川が、原告に対して、安定した資産であり原告の保有する金融資産の7割以上を占めていた本件定期預金を解約して、その解約金を原資として本件商品を購入するよう勧めた一連の勧誘行為は、原告の実情と意向に反する明らかに過大な危険を伴う取引を勧誘したものといえる。したがって、乙山及び丙川の上記勧誘行為は、適合性の原則から著しく逸脱した違法な行為であって、原告に対する不法行為に当たると認められる。」「本件商品の購入を勧誘した際、丙川や乙山が原告に対して、本件商品の内容等について本件パンフレットを示した上で一応の説明を行ったとは認められるが、本件パンフレットの記載内容及び原告の年齢、経歴、難聴であったこと並びに被告従業員らの説明に対する原告の対応等に照らせば、丙川及び乙山は、原告において本件商品の内容及びリスクを理解するのに十分な説明を原告に対して行わなかったと推認できる。したがって、乙山及び丙川の本件取引に関する勧誘行為には、説明義務違反の違法があったというべきである。」と判示し、過失相殺することなく銀行側に損害全額の賠償を命じました(判例時報2195号78頁。本裁判例は確定しています)。

銀行を勧誘者とする投資勧誘被害は多発しており、被害救済に大きな力となる事案と思われます。

消費者法の基本的教科書として日本弁護士連合会編「消費者法講義(第4版)」(日本評論社)があります。この本は、消費者被害救済と予防のため、理論面と実務面の両輪から基礎的な力を養うのに、有意なものとなっています。

本来は、直接読んでみることがよいとは思いますが、動機付けや読む視点があったほうが親しみやすいとも思われ、各章の導入・視点等につき、若干のコメントをさせていただこうと思います。

第1回目は【第1章 消費者問題と消費者法】になります。

この章は、いわば総論です。総論は各論(個別の問題・課題)に触れて理解が深まるものでもありますから、個々の記述につき「分かったような分かんないような」感じであっても、まずは第1章全体を通読していただくほうがよいと思います。通読後、以下の視点で、自分なりの答え(文字にして2~5行程度のコンパクトのもの)がもてれば、理解がすすんでいるものと思います。とくに知人・友人に説明してみるなど、対外的に説明してみることもとても有益です(鏡に向かって自分自身に説明してみることでもよいと思います)。

Q1 消費者法の、既存の法体系(法のイメージ、全体像)との大きな違いはなにか。

Q2 消費者問題を日本の歴史的に見るといつ頃から生じてきたといえるか。投手の段階では、消費者の権利・利益保護と、産業振興の観点からの業者規制と、どちらに重点があったといえるか。

Q3 消費者・消費者問題の特性を明らかにする意義はあるか。あるとすれば、どののような意義があるか。

Q4 合理的人間像の考え方とはどのようなものか。この考え方と消費者法における「人」「消費者」の考え方の相違はなにか。

Q5 消費者・消費者問題の3つの特性はなにか。

次回は「第2章 消費者契約の過程Ⅰー契約の成立と意思表示の瑕疵」です。