2014年10月アーカイブ

いわゆる渡島信用金庫昇進昇格差別事件です。労働委員会によって、信用金庫側の行為は『不利益取扱いおよび支配介入』と認定されたにも関わらず、信用金庫側がその判断を不服として、提訴したものです。札幌地裁平成26年5月16日(労働判例1096号5頁)は、詳細な事実認定の上、信用金庫側の行為は「(労働組合)の弱体化を図ることにその目的があると推認する他はなく、(労働組合)を嫌悪した不利益取扱い及び支配加入であると認めるべきである。」と厳しく判示しました(確定しています)。

継続労使関係における労働者救済の手法、不当労働行為(不利益取扱いおよび支配介入)の具体的判断事例として、参考になるものです。

阪神電気鉄道の従業員であって、排便・排尿が困難となる身体状況を有する労働者につき、従前、勤務システム上の配慮受けていたものの、会社分割後の阪神バスでの勤務では、係る配慮が得られなくなった事案につき、神戸地裁尼崎支部平成26年4月22日判決(労働判例1096号44頁)は、「阪神電鉄は、労働承継法の規定により、原告が希望しさえすれば、本件勤務配慮に係る合意を含む本件労働契約1がそのまま被告に承継され得るにもかかわらず、そのことを原告に認識させないまま、被告における就労を希望する原告に本件同意書を提出させて、勤務配慮に係る労働条件の不利益変更を伴う転籍に応じさせたことになる。」とし、「かかる同意は、労働契約承継法いよって保障された、本件労働契約1が被告にそのまま承継されるという原告の利益を一方的に奪う手続に基づいてされたものであり、かかる手続はまさに労働契約承継法の趣旨を潜脱するものというべきものであるから、上記同意による勤務配慮に係る労働条件の不利益変更は、公序良俗に反して無効と解するのが相当である。」と判示し、会社側の対応を違法とし、従前の労働条件の維持、損害賠償責任を認めました。

 

控訴されていますが、会社分割における労働条件のあり方について、労働者保護の観点から参考となると思われます。

民法717条1項はいわゆる土地の工作物責任として不動産の占有者に対する責任を定めています。東京地裁平成24年2月7日判決(判例タイムズ1404号200頁)は、保守管理者側から「転貸を目的としており、経済的利益及び損失の一切は所有者たるAに帰属することとされ、・・・(保守管理者側の)権限は厳しく制限され、本件建物の現実の支配管理を行う実質的な権限を有していなかった」との反論につき、転貸目的が立証されていないと述べるとともに「民法717条1項の土地の工作物の占有者は事実上工作物を支配していれば足り、経済的利益や損失の帰属がないからといって占有者ではないということはできない。」と判示し、損害賠償を命じました(控訴後和解と報告されています)。

 法717条は、実務上も重要な規定であり、その具体的適用例として参考となるものと思われます。

判決文は裁判所HPに掲載されています。

http://www.courts.go.jp/app/files/hanrei_jp/579/083579_hanrei.pdf


本件エレベーターは、「本件エレベーターは、設置後数年が経過した頃から種々の不具合が出現し始めた。不具合が発覚した場合、被告人Cら、第3工場の従業員が被告人Bに報告し、必要に応じて修理を求めるなどしていた。被告人Bは、修理業者を呼んで修理を行わせたこともあったが、一部の不具合については放置し、十分な修理がされないまま利用が続けられていた。 平成21年2月当時、例えば、1階の外扉については、東西(工場外側及び内側)の扉とも、搬器が1階にないのに開き、また、外扉が開いていても搬器が動く状態であった。2階の外扉についても、搬器が2階にないのに開く不具合が年に数回程度発生していた。2階の外扉についても、搬器が2階にないのに開く不具合が年に数回程度発生していた。」という状況にあったものです。

その上で、本件事故は、「平成21年2月25日午後1時1分頃、第3工場2階の製造ラインで業務を行っていた従業員のF(以下「被害者」という。)は、段ボール詰めされた製品を1階に運び降ろすため、通常の作業手順どおり、段ボール箱15箱をパレットに載せた上、それをハンドリフトを使用して本件エレベーター2階出入口の前室付近まで運んだ。そのとき、本件エレベーターの搬器は1階に停止しており、本来であれば被害者が2階外扉を開けようとしてもドアロックが掛かるべきところ、何らかの理由でドアロックが機能せず、被害者によって本件エレベーターの2階外扉が開けられた。被害者は、搬器が2階に停止していないことに気付かないまま、ハンドリフトを押し込んだため、ハンドリフトは段ボール箱を載せたパレットごと昇降路内に突入した(以下、「本件突入事故」という。)。その後、具体的な経過は不明であるが、被害者は本件エレベーターの2階出入口から昇降路内に転落し、1階に停止していた搬器の天井板の上面に落下した。同日午後1時14分頃、被告人Cは、被害者が昇降路内に転落している事実に気付かず、本件エレベーターを作動させて搬器を1階から上昇させた。その結果、被害者は、搬器天井板の上面東側から落下し、上昇する搬器と昇降路壁面の間に挟み込まれて左下腿部を離断して失血死するに至った(以下、本件突入事故後、被害者が昇降路内に転落し、さらに被告人Cが搬器を上昇させたことにより被害者が死亡するまでの経過全体を「本件事故」という。)。」との内容です。

荷物搬送用エレベーターでの事故は多発しており、同種案件はもとより、労災事件において刑事責任を問われるケースが少ないなか、刑事責任を負うべき違法レベルの把握にも、参考になるものと思われます。

松江地裁平成26年3月10日判決(判例時報2228号95頁)は、スキー場で通常予想される危険は雪崩であり、スキー場は、雪崩の危険に対する物的設備と人的設備を備えるべきであり、本件町はこれを怠ったとし、他方、損害認定においては、自然災害性を考慮し民法722条2項を類推適用し3割減じるかたちで、賠償を命じたものです(確定しています)。

 キー場事故に関する裁判例は幾つかありますが、考え方等も含め、参考となるものと思われます。

現代消費者法№24・2014年9月号の特集記事として約70頁にわたり掲載されています。朝見行弘久留米大学教授によるこの20年間の軌跡と現状・課題のまとめのほか、欠陥判断・立証問題・損害論等々、実務的・理論的にとても参考になる多数の論考が掲載されています。消費者側から、欠陥推定規定の必要性などが提言されながら、安易な裁判所信頼論を述べてきた元立法関与者・裁判官の視点が、真の被害者救済のための制度設計を阻害してきた要因との指摘もあります。

259件にのぼる裁判・和解一覧表もあり、実務家にとってとても参考になる特集です。

国民生活センターHPでも、製造物責任法関係の訴訟一覧のページがあります。

http://www.kokusen.go.jp/pl_l/

争点は、原告が20歳に達した本件基準日当時、精神遅滞により障害等級二級に該当するか否かで、条文上、国民年金法施行規則31条2項4号の「障害の状態に関する医師又は歯科医師の診断書」の解釈が問題となったものです。東京地裁平成25年11月8日(判例時報2228号14頁)は、ここにいう「診断書」は原則的には障害問題とされる当時の実際に診療した医師によるものと理解されるが、そうでない医師によって作成されたものでも、そのこと故に「診断書」に該当しないとすることは相当ではなく、他の事情も含め総合的に判断すべきとして、本件事案でも「診断書」該当性を認め、社会保険庁の判断を取り消したものです(確定しています)。

 害基礎年金等における障害認定にあたって、行政側の判断よりも許容範囲を広げるもので、実務上も参考になるものと思われます。

公物に対する時効取得は、原則認められないとされ、長年公共の用に供されなかったなど公用廃止がなされたと評価できる場合に限って私人による時効取得が認められるとされてきました(最高裁昭和51年12月24日判決・判例時報840号55頁)。東京高裁平成26年5月28日判決(判例時報2227号37頁)も、その最高裁判例に反するものではありませんが、最高裁判例後の数少ない事案として参考になると思われます。(上告等がなされています。)