2017年1月アーカイブ

いわゆる生活保護基準引下げ違憲処分等請求事件に関し、従前、国側代理人だったものが、いわゆる人事異動(法務省と裁判所の人事交流)で、途中から裁判官として当該事件に関与するようになった事案です。

市民感覚からも弁護士実務的にも、当然、当該人物はその事件に裁判官として関わることはできないと思われ、結論としては、金沢地裁平成28年3月31日決定(判例時報2299号143頁)もその結論を採用しましたが、そもそも、本件のような紛争が生じること自体に司法の大きな根深い問題が存するものと思われます。

最高裁平成28年6月3日第二小法廷(判例時報2311号13頁)は「花押を書くことは、印章による押印と同視することはできず、民法968条1項の押印の要件を満たさないというべきである。」と判示しました。

 

最高裁平成元年2月16日(民集43巻2号45頁)は、押印は指印をもって足りる旨述べていましたが、いわゆる花押は、サインや記号的なものといわれる一方、それらとは全く同じではないともいわれ、概念自体が不明確なものでもあり、「我が国において、印章に押印に代えて花押を書くことによって文章を完成させる慣行ないし法意識が存するものとは認め難い」として、異なる扱いになったものと思われます。

 

実務上重要な判断でありますが、事案としては、死因贈与の有効性について審理を原審(福岡高裁)に差し戻している点も留意が必要かとは思われます。

横浜地裁平成28年4月12日判決(判例時報2310号147頁)で、自動車の運転により人を死傷させる行為等の処罰に関する法律5条ただし書きを適用したもので、確定しています。条文は下記のとおりです。

 

(過失運転致死傷)

第五条  自動車の運転上必要な注意を怠り、よって人を死傷させた者は、七年以下の懲役若しくは禁錮又は百万円以下の罰金に処する。ただし、その傷害が軽いときは、情状により、その刑を免除することができる。

福岡地裁平成27年11月11日判決(判例時報2312号114頁)は、宮司の「ぶん殴りたい」「お前根性焼きしようか」「給料泥棒」「腐ったみかん」などとの発言を認定し、神社・宮司にパワハラに係る慰謝料100万円、弁護士費用10万円の賠償を命じました(その他、未払賃金の支払いも命じています)。

福岡地裁小倉支部平成28年1月18日判決(判例時報2300号71頁)は、原則として専有部分の床面積割合で取り扱われるべきであるとして、その居住年数に応じて返金する旨の決議は公序良俗に反するとしたものです。

事例として珍しいと思われ、マンション管理運営の参考になると思われます。

最高裁平成28年2月26日判決(第二小法廷。下記裁判所HP、判例時報2301号92頁)は、(1)相続の開始後認知によって相続人となった者が他の共同相続人に対して民法910条に基づき価額の支払を請求する場合における遺産の価額算定の基準時は、価額の支払を請求した時であること、(2)民法910条に基づく他の共同相続人の価額の支払債務は、履行の請求を受けた時に遅滞に陥ることを明確にしました。

 

事案としては必ずしも多いものではありませんが、これまで明確となっていなかった点を明らかにするもので、実務上も重要な意味を有するものです。

 

判決文・最高裁HP http://www.courts.go.jp/app/hanrei_jp/detail2?id=85705

 

(相続の開始後に認知された者の価額の支払請求権)

第九百十条  相続の開始後認知によって相続人となった者が遺産の分割を請求しようとする場合において、他の共同相続人が既にその分割その他の処分をしたときは、価額のみによる支払の請求権を有する。

特定商取引法は原則クーリング・オフを認めながら、同法26条1項1号「営業のために若しくは営業のため」に該当する場合には例外的にクーリング・オフを認めないとしています。東京地裁平成27年10月27日判決(判例時報2300号67頁)は、後者への該当性を否定し、原則どおりクーリング・オフを認めたものです(控訴あり)。

東京地裁平成27年10月27日判決(判例時報2300号67頁)など同種判断も複数見られますが、消費者被害救済の参考となる判断事例です。

離婚慰謝料の合意に基づき離婚前に差押えが認められるか否かが争点となった事案です。東京地裁は認められないとしましたが、東京高裁平成28年1月7日決定(判例時報2312号98頁)は認めたものです。条項解釈の相違でもありますが、実務上は、合意条項の工夫等も必要となろうかと思われ、条項整理の関係でも参考になると思われます。

最高裁平成28年7月8日第二小法廷判決(労働判例1145号6頁。国・行橋労基署長(テイクロ九州)事件)は、「原審は、上記事実関係等の下において、本件歓送迎会は、中国人研修生との親睦を深めることを目的として、本件会社の従業員有志によって開催された私的な会合であり、Bがこれに中途から参加したことや本件歓送迎会に付随する送迎のためにBが任意に行った運転行為が事業主である本件会社の支配下にある状態でされたものとは認められないとして、本件事故によるBの死亡は、業務上の事由によるものとはいえないと判断した。」ことについて、「労働者の負傷、疾病、障害又は死亡(以下「災害」という。)が労働者災害補償保険法に基づく業務災害に関する保険給付の対象となるには、それが業務上の事由によるものであることを要するところ、そのための要件の一つとして、労働者が労働契約に基づき事業主の支配下にある状態において当該災害が発生したことが必要であると解するのが相当である(最高裁昭和57年(行ツ)第182号同59年5月29日第三小法廷判決・裁判集民事142号183頁参照)。」としたうえ、本件懇親会等について、「上記アの経過でBが途中参加した本件歓送迎会は、従業員7名の本件会社において、本件親会社の中国における子会社から本件会社の事業との関連で中国人研修生を定期的に受け入れるに当たり、本件会社の社長業務を代行していたE部長の発案により、中国人研修生と従業員との親睦を図る目的で開催されてきたものであり、E部長の意向により当時の従業員7名及び本件研修生らの全員が参加し、その費用が本件会社の経費から支払われ、特に本件研修生らについては、本件アパート及び本件飲食店間の送迎が本件会社の所有に係る自動車によって行われていたというのである。そうすると、本件歓送迎会は、研修の目的を達成するために本件会社において企画された行事の一環であると評価することができ、中国人研修生と従業員との親睦を図ることにより、本件会社及び本件親会社と上記子会社との関係の強化等に寄与するものであり、本件会社の事業活動に密接に関連して行われたものというべきである。」「また、Bは、本件資料の作成業務を再開するため本件車両を運転して本件工場に戻る際、併せて本件研修生らを本件アパートまで送っていたところ、もともと本件研修生らを本件アパートまで送ることは、本件歓送迎会の開催に当たり、E部長により行われることが予定されていたものであり、本件工場と本件アパートの位置関係に照らし、本件飲食店から本件工場へ戻る経路から大きく逸脱するものではないことにも鑑みれば、BがE部長に代わってこれを行ったことは、本件会社から要請されていた一連の行動の範囲内のものであったということができる。」として原判決(1審含む)の判断を誤りとして、業務起因性を認めたものです。

 

労働の現場を踏まえた労働者保護につながる判断と思われ、実務上も重要な判断です。

東京地裁平成28年3月8日判決(判例時報2296号112頁)は、中学校までは義務教育であること等を指摘し、受験を必要とするか否かは児童及び保護者のみが決定すべき事項等とし、保護者からの請求を認めませんでした(確定)。なお、学校側から保護者側への不当訴訟を理由とする訴訟(反訴)も排斥されています。

 

事案の特性も含め、今後の参考になろうかと思われます。

水戸地裁平成28年1月28日判決(判例地方自治414号42頁)は、「一般に、法律が行政処分に理由を付記すべきものとしている場合に、どの程度の記載をなすべきかは、処分の性質と理由付記を命じた各法律の規定の趣旨・目的に照らしてこれを決すべきところ、地公法49条1項が、職員に対し、懲戒等の不利益処分を行う場合にその処分の事由を記載した説明書を交付しなければならないとしているのは、職員に直接に義務を課し又はその権利を制限するという不利益処分の性質に鑑み、処分権者の判断の慎重と合理性を担保してその恣意を抑制するとともに、処分の事由を職員に知らせて不服の申立てに便宜を与える趣旨に出たものと解されるから、その記載を欠く場合には、処分自体の取消しを免れないと解するのが相当である。そして、このような理由付記制度の趣旨に鑑みれば、処分事由説明書に記載すべき処分事由としては、いかなる事実関係に基づきいかなる法規を適用して不利益処分がされたかを、被処分者においてその記載自体から了知しうるものでなければならず、単に不利益処分の根拠規定を示すだけでは、それによって当該規定の適用の基礎となった事実関係をも当然知り得るような場合を別として、地公法49条1項の要求する処分事由の記載として十分でないといわなければならない(最高裁昭和38年5月31日第二小法廷判決・民集17巻4号617頁、最高裁昭和60年1月22日第三小法廷判決・民集39巻1号1頁参照。)。」と判示したうえ、本件事実関係の基づき処分無効としました。

 

処分対象事実(職員の生活保護受給者に対するわいせつ行為)は認定されているので、行政機関の処分のあり方について、実務上、注意すべき点を明確にしたもので、行政・自治体、職員・労働者側ともに参考になると思われます(確定しているようです)。

 

最高裁平成28年3月29日判決(判例時報2310号39頁)の判断です。原判決(大阪高裁)の判断を破棄したもので微妙な事案でしたが、最高裁の判断として今後の強制執行実務上、重要な判断と思われます。

改正内容は、①個人情報の定義の明確化、②匿名加工情報などの利活用、③個人情報保護の強化、④個人情報保護委員会の新設等、⑤グローバル化への対応、⑥オプトアウトによる第三者提供の場合の届出等ですが、本年5月30日には全面施行となります。

 

※ 個人情報保護委員会のHP http://www.ppc.go.jp/personal/preparation/

 

個人情報法保護法は、目的(1条)に「個人情報の適正かつ効果的な活用が新たな産業の創出並びに活力ある経済社会及び豊かな国民生活の実現に資するものであることその他の個人情報の有用性に配慮しつつ、個人の権利利益を保護することを目的とする。」とあり、個人情報の利活用が経済的に必要との考え方にたっている点は、問題が指摘され、また、法律名が国民に誤解が生じさせている面もあろうかとは思いますが、いずれにせよ、本年から全面施行となりますので、実務上も、少なからず影響はあると思われるところです。

大阪地裁平成27年12月12日11日判決(判例時報2301号103頁)は、飼い主は「調教するなどの飼育上の注意義務を負う」として、飼い主が民事調停申立てを受けた後も、真摯な対応等を行わなかったこと等も踏まえ、「本件犬の鳴き声は、一般社会生活上受忍すべき限度を超えたもの」として、不法行為に基づき、飼い主に対し、金37万円超えの賠償を命じました(確定)。

 

日常生活でみられるトラブル事案であり、民法718条という動物占有者等の責任に基づく判断でもあり、実務上も参考になると思われます。

 

(動物の占有者等の責任)

 第七百十八条  動物の占有者は、その動物が他人に加えた損害を賠償する責任を負う。ただし、動物の種類及び性質に従い相当の注意をもってその管理をしたときは、この限りでない。

 占有者に代わって動物を管理する者も、前項の責任を負う。

本年も事務所一同、皆様・社会に役立てるよう日々与えられた立場を全うすべく業務に取り組みますので、
何卒、宜しくお願い申し上げます。

司法関係の挨拶です。現時点で新年のものが未掲載の機関もあります。

日本弁護士連合会・中本和洋会長(1月1日掲載)
http://www.nichibenren.or.jp/jfba_info/organization/message.html

最高裁判所・寺田逸朗長官(1月4日掲載)
http://www.courts.go.jp/about/topics/sinnennokotoba_h29/index.html

検察庁・西川克行検事総長(平成28年9月5日就任時のもの)
http://www.kensatsu.go.jp/kenjisouchou/index.htm

法務省・金田勝利大臣(平成28年8月4日就任時の訓示)
http://www.moj.go.jp/hisho/kouhou/hisho08_00800.html

名古屋地裁平成28年1月21日判決(判例時報2308号119頁。確定)の判断です。破産管財人が返還を受けることによって被害者への配当(実質被害弁償)につながる判断で、消費者被害救済に参考となる事案です。

こうした事案については、無限連鎖講配当金の返還請求を認める最高裁平成26年10月28日判決(民集68巻8号1325頁)がリーディングケースといわれています。

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