弁護士メモ|千葉晃平のひとこと
  • HOME
  • >
  • 裁判
  • >
  • 【裁判・行政】監査請求人の氏名・住所・職業等が記載された名簿(写し)を市議会議員の全員協議会の出席者に配布した行為がプライバシ―侵害にあたるとして賠償を命じた裁判例(大津地裁H30・2・27)
  • 【裁判・行政】監査請求人の氏名・住所・職業等が記載された名簿(写し)を市議会議員の全員協議会の出席者に配布した行為がプライバシ―侵害にあたるとして賠償を命じた裁判例(大津地裁H30・2・27)

    判例時報2387号115頁に掲載されています(確定)。

    賠償額は原告1名6000円です。

    市側の弁解に対し次のように厳しく指摘し排斥しており、行政の現場としても参考になるものと思われます。

    「被告は、C議員らやA市長が本件名簿の開示を要請したのは、本件監査請求に対し、高島市議会としての対応を決する上で必要だったのであり、加えて、本件監査請求の適法性を確認するとともに、以前の監査請求との関連性や住民訴訟提起の可能性等を検討する上でも、請求人が誰であるかを確認する必要性があったこと等から、本件開示行為は、所掌事務遂行のために必要であった旨主張する。」「しかしながら、住民監査請求は地方公共団体の住民であれば誰でもすることができ、住民監査請求があった場合、監査委員が監査を行うこととされており、その過程に議会及び議員が関与することは予定されていない(地方自治法242条)。したがって、被告市議会が本件監査請求自体に対応する場面は想定されておらず、同項所定の勧告への対応についても、あるいは、住民訴訟が提起された場合の対応についても、監査請求の内容と理由が判明していれば足るのであって、誰がその請求をしたのかを知る必要はない。また、請求人が高島市の住民であるか否かという点は、監査請求の適法要件にすぎず、選挙で住民の代表として選出された市議らが本件全員協議会においてわざわざ確認する必要がある事項とは考え難い。以前の監査請求との関連性についても、請求人の異同を確認すれば足り、誰が請求人であるかを個別に確認までする必要はないし、住民訴訟提起の可能性についても同様である。さらに、本件名簿の写しが開示されたことが、その後の被告議会の具体的な対応にどのように結び付いたのかについても、全く明らかではない(C市議らの陳述書(乙2~4)にも、そのことには一切触れられていない。)。以上のとおり、被告が主張する理由は、いずれも本件名簿の開示まで求める必要性を基礎付けることが全くできておらず、かえって、本件訴訟に至っても、このような主張しか提出できないこと自体、C市議らが本件名簿の開示を求めたことを正当化できる必要性が存在しなかったことを強く窺わせる。そして、A市長も、同様に、個人情報の開示の必要性について十分に検討することなく、C議員らに求めに応じてB事務局長に本件名簿の提出を命じ、同事務局長も同様にこれに応じたというほかない。」