弁護士メモ|千葉晃平のひとこと
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  • カテゴリー: 投資被害
  • 【裁判・消費者:不動産】いわゆる投資マンションの勧誘・販売について、媒介業者らへの損害賠償を認めた裁判例(東京地裁H27・3・18)

    被害者(原告)は、時給1180円の派遣社員であり、不動産取引や投資経験はなかったなか、4580万円の借り入れをおこなわれたものであり、近時、社会問題点になっている投資マンション勧誘の被害救済の事案です(REIT102号110頁に概要掲載有。全文はウエストローに掲載されています)。

    被害事案は多い一方、訴訟救済の困難性が指摘されていたなか、被害救済につながる参考になると思われます。

    【お知らせ】投資・特殊詐欺被害に関する全国一斉無料電話相談が実施されます~宮城地区は2月26日(金)10~18時です!

    仙台投資被害弁護団主催です(同弁護団のHP(http://www.s-toshihigai.net/)から転載します)。

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    全国一斉『投資・詐欺的金融被害110番~その投資、大丈夫ですか?』 のお知らせ

    近時の詐欺的投資被害、銀行・証券会社を当事者とするトラブルは、被害者の生活を根底から破壊する深刻なものとなっています。また、平成27年6月1日、強い反対にもかかわらず商品先物取引の不招請勧誘を緩和する省令の改正がなされ、商品先物取引についても今後更なる被害が予想されます。係る被害の予防・救済のためには、被害実態を把握するとともに、早期発見及び対応が求められます。ついては、被害実態の究明、具体的救済を図るべく、全国一斉110番を実施することとし、仙台では下記日程で開催することと致しました。
    遠慮なくご相談下さい。

            記

    110番概要 

    日時:2月26日(金)10時~18時
    電話:022-211-7971(代表・3回線)
    相談は無料です。

    なお、上記日時以外の問い合わせは、「千葉晃平法律事務所 電話022-713-7791」までお願い致します。

    【裁判・金融】FX取引における、顧客と業者との間の、取引高によるキャッシュバック契約につき、業者の支払い拒絶を信義則違反として、顧客の請求を認めた裁判例(東京地裁H26・6・19)

    FX取引の裁判例は、通常、業者の勧誘行為やシステム上の問題に関するものが多いなか、キャッシュバックの合意等が問題とされためずらしい事案です。

    ご担当された弁護士(事務所)は投資被害救済関係などで先進的な判決を多数獲得され、また、その解説もなされており、本件もHPにおいて掲載されています。

    http://aoi-law.com/article/s_fx_02/

    【裁判・相続】共同相続された①委託者指図型投資信託の受益権、②個人向け国債について、相続開始と同時に当然に相続分に応じて分割されることはないとする判例(最高裁H26・2・25)

    最高裁平成26年2月25日判決(判例時報2222号53頁)は、①委託者指図型投資信託の受益権については、金銭支払請求権のほか信託財産に関する帳簿書類閲覧請求権等の可分給付を目的とする権利でないものも含まれていること、②個人向け国債については、一単位未満での権利行使が予定されていないこと等から、それぞれ、相続開始と同時に当然に相続分に応じて分割されることはないと判示しました。

    預金債権は通常相続分に従って分割されると理解されていますが(最高裁S29・4・8)、定額郵便貯金債権は当然に分割されないとされています(最高裁H22・10・8)。

    これらと併せ、相続問題の処理・解決にあたって注意・参考となる判断です。

    【裁判・刑事詐欺等】被告人が自己が代表者である会社名義の口座から、同口座が詐欺等の犯罪行為に利用されていることを知りながら預金の払い戻しを受ける行為は、詐欺罪或いは窃盗罪を構成するとする裁判例(東京高裁H25・9・4)

    東京高裁平成25年9月4日判決(判例時報2218号134頁)は、「本件各銀行は、預金債権を有する口座名義人から、その預金債権の行使として自己名義の通帳やキャッシュカードを用いて預金の払戻し請求がされた場合、いかなるときでも直ちに支払に応じているわけではなく、それぞれその普通預金規定において、預金が法令や公序良俗に反する行為に利用され、又はそのおそれがあると認められる場合には、銀行側において、その預金取引を停止し、又はその預金口座を解約することができるものと定めて」いることなどから、犯罪行為者(及びその関与者)の行員を相手とする払い戻しにつき詐欺罪、現金自動預払機からの払い出しにつき窃盗罪が成立するとしました(確定)。

    刑事事件における判断ですが、民事上、被害者が銀行等から返還を受ける方向を確保・拡大する方向にあるものと理解され、投資詐欺等の被害救済の参考にアップしました。

    【裁判・金融】成年後見開始取消審判後の間もない時期に行われた金融商品取引にかかる損失につき、顧客から証券会社に対する損害賠償請求が認められた裁判例(大阪高裁H25・2・22)

    大阪高裁は、顧客の状況につき「本件取引開始(平成20年1月20日)当時、一人暮らしの満76歳の女性であって、その年齢自体、相当な高齢であることから、年齢相応に判断能力が低下していたことが容易に推認できるし、投資に関し、適切な助言ができる者が側にいたわけでもない。」「しかも、平成17年3月には、正常圧水頭症にアルツハイマー病を合併した痴呆により、判断能力が低下し、後見を開始されていたのであり、平成19年11月30日には正常圧水頭症が改善したこと等から、後見開始の審判が取り消されたものの、それから2か月も経たないうちに本件取引が開始されているのである。」と認定し、後見開始取消審判が存したとしても、「主体的な判断で証券取等を行うことが不可能な状態であったということができる。」として、証券会社へ賠償を命じました(判例時報2197号29頁。なお、過失相殺2割。確定しています)。

     

    顧客の状況は、顧客に直接会えばより一層感得されるはずですから、こうした顧客をして証券取引を行わしめる業者の実態を明らかにする意味でも、とても重要な事案と思われます。

    【金融・参考】銀行を相手方とする金融トラブルの状況(全国銀行協会HPの公表内容)

    銀行を勧誘者等とする投資関係被害が多発しており、多様かつ多数。深刻な申出がなされている状況が、全国銀行協会のホームページに掲載されています。

                  

    申出内容について

    平成25年度7月~9月 (別紙)あっせんの申立て事案の概要とその結果

    http://www.zenginkyo.or.jp/adr/conditions/index/conditions01_2502_2.pdf

     

    各種データ・分析について

    全国銀行協会 紛争解決等業務の実施状況

    http://www.zenginkyo.or.jp/adr/conditions/

    【裁判・金融】銀行の定期預金を保有する顧客に対する償還条件付き投資信託の購入の勧誘行為が、適合性原則及び説明義務に違反するとして、過失相殺なき全額賠償が命ぜられた裁判例(大阪地裁H25・2・20)

    被害者の方は、「昭和5年に生まれ、第二次世界大戦中に国民学校高等科を卒業後、実家の農業を手伝い、終戦後は、宿泊施設で仲居として働いた。原告は、昭和30年に〈略〉職員であった亡夫と結婚した後は専業主婦であったが、昭和42年頃から、自宅近くの工場で化粧品のケースなどを作る作業に従事し、平成2年に定年退職した。」「原告は、以後無職であり、本件取引当時も無職であった。「本件取引の当時、77歳であり、亡夫から相続した自宅で一人暮らしをしていた。」「原告の収入は、年間247万1900円程度の年金(老齢基礎厚生年金、遺族厚生年金、〈略〉共済)であった。」「原告が本件商品購入時に解約した本件定期預金は、亡夫が被告に預け入れた1000万円の定期預金とその利息及び原告が被告に預け入れた1000万円の定期預金とその利息を合わせたものであった。」とされる方でした。大阪地裁は、かかる属性等を基礎に、「以上によれば、乙山及び丙川が、原告に対して、安定した資産であり原告の保有する金融資産の7割以上を占めていた本件定期預金を解約して、その解約金を原資として本件商品を購入するよう勧めた一連の勧誘行為は、原告の実情と意向に反する明らかに過大な危険を伴う取引を勧誘したものといえる。したがって、乙山及び丙川の上記勧誘行為は、適合性の原則から著しく逸脱した違法な行為であって、原告に対する不法行為に当たると認められる。」「本件商品の購入を勧誘した際、丙川や乙山が原告に対して、本件商品の内容等について本件パンフレットを示した上で一応の説明を行ったとは認められるが、本件パンフレットの記載内容及び原告の年齢、経歴、難聴であったこと並びに被告従業員らの説明に対する原告の対応等に照らせば、丙川及び乙山は、原告において本件商品の内容及びリスクを理解するのに十分な説明を原告に対して行わなかったと推認できる。したがって、乙山及び丙川の本件取引に関する勧誘行為には、説明義務違反の違法があったというべきである。」と判示し、過失相殺することなく銀行側に損害全額の賠償を命じました(判例時報2195号78頁。本裁判例は確定しています)。

    銀行を勧誘者とする投資勧誘被害は多発しており、被害救済に大きな力となる事案と思われます。

    【情報・消費者】ウェブ版・国民生活5月号(国民生活センターHP)

    5月版が掲載されています。

    http://www.kokusen.go.jp/wko/index.html

    デジタルコンテンツ、送りつけ商法、銀行員による投資信託被害等の具体的事案が多数掲載されています。

    【被害回復】振り込め・ヤミ金被害等に関する被害回復給付金支給制度(検察庁HPから)

    振り込め詐欺、パチンコ・競馬・投資詐欺、ヤミ金被害などにつき、組織犯罪処罰法に基づき、被害金(犯罪被害財産)が被害者へ戻される制度があります。

    検察庁・被害回復給付金支給制度のサイト→ http://www.kensatsu.go.jp/higaikaihuku/

    重要な制度ですが、被害者に直接知らされるものではないこと、被害に遭ってしばらくしてから開始されることもあること、被害者の手続きに期間制限があることなどから、必ずしも被害者にとって十分な救済制度となってない面もあります。

    弁護士実務的には、上記詐欺類型の相談・委任を受ければ上記サイトをチェックすべきですが、そうでなくても時々上記サイトを確認することは有益と思います。