弁護士メモ|千葉晃平のひとこと
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  • 【裁判・行政】事業用地取得に関し、売買契約に至らなかったとしても、土地所有者に対する信頼違背の法的責任を負うとして、地方公共団体に対し損害賠償を命じた裁判例(福岡高裁宮崎支部H29・7・19)

    判例地方自治433号45頁に掲載されています(上告・告受理申立あり)。損害は一定時期までの固定資産税相当額とされているようですが、地方公共団体の事業遂行における法的責任の有無・内容等について参考になるものと思われます。

    【裁判・行政】男性と同居した女性の生活保護停止につき、調査不十分として慰謝料支払いを命じた事例(津地裁H29・11・20)

    判例地方自治428号111頁の訴訟情報に要旨が掲載されています。

    判決において女性側にも虚偽説明の落ち度があった旨の指摘があったようですが、生活保護行政の現場における対処等のあり方に参考となる判断と思われます。

    【裁判・行政】全国学力調査に関する文書非開示処分を取り消した事例(横浜地裁H28・10・12)

    横浜地裁平成28年10月12日判決(判例地方自治428号70頁)は、全国学力・学習状況調査における市の小中学校全体の平均正答率の情報公開請求について、条例の定める非公開情報に該当しないとして、行政の非公開決定を取り消しました(確定)。

     

    一般的な情報公開請求に関する判断のみではなく、学校教育現場における取扱いとして参考になる判断と思われます。

    【裁判・行政】減額懲戒処分の不服申立てを45年間放置し棄却した裁決につき、違法手続とした事例(横浜地裁H29・11・25)

    判例地方自治428号112頁の訴訟情報に要旨が掲載されています。

    通常想定し得ないほどの著しく遅れた手続きとの指摘がなされたようであり、当然の指摘とは思われますが、労働者側からの不服申立て等に関する放置事案は本件に限ったものかどうかという問題もあろうかと思われ、根深い問題にようにも感じられました。

    【裁判・行政】公立小学校教員採用試験に不正な加点操作があった事案について、採用取消処分について結論が分かれた2つの高裁判決(①取消処分有効・福岡高裁H29・6・5、②取消処分を取消・福岡高裁H28・9・5)

    いずれも判例時報2352号3頁以下に掲載されています。

    結論が異なっている明確な違いを見出すことは難しい面もありますが、結論として採用が有効とされた②の事案は受験者が不正加点の年度後の試験も受け続け合格していること、①の事案は受験者(合格者)を指導した者が不正加点に関与しているとも把握されることあたりに相違があるようです。

    最高裁の判断が注目されますが、裁判の難しさを示す例でもあり、参考になると思われます。

    【裁判・行政】農地法5条1項の許可を受けた者の造成工事により、隣接農地の排水障害が生じた事案につき、同許可処分が違法として国家賠償請求を認めた裁判例(広島高裁岡山支部H28・6・30)

    行政法規の基づく権限行使によって損害を受けた者が国家賠償請求可能かとの論点があり、判例上、公務員が個別の国民に対して負担する義務に違反した場合には国賠法1条1項の「違法」を構成すると理解されているところ(最高裁昭和60年11月21日・民集39巻7号1512頁)、本件では、農地法5条2項4号の趣旨・理解が問題となったものです。原審は「違法」を構成しないとしましたが、広島高裁岡山支部平成28年6月30日判決(判例時報2319号40頁)は、隣接地所有者の法的利益も保護するものであるとして、国家賠償を認めたものです。

     

    行政法規の解釈・適用の例として参考になると思われます。

     

    ※ 農地法5条2項4号

     申請に係る農地を農地以外のものにすること又は申請に係る採草放牧地を採草放牧地以外のものにすることにより、土砂の流出又は崩壊その他の災害を発生させるおそれがあると認められる場合、農業用用排水施設の有する機能に支障を及ぼすおそれがあると認められる場合その他の周辺の農地又は採草放牧地に係る営農条件に支障を生ずるおそれがあると認められる場合

    【裁判・行政・労働】公立学校教員に対する懲戒免職処分・退職金不支給決定を違法として取り消した裁判例(札幌高裁H28・11・18)

    札幌高裁平成28年11月18日判決(判例地方自治418号50頁)は、懲戒処分等の対象事実である非違行為が音楽ソフトの無断複製とインターネットのオークションサイトに出品し30万円の利益を得たということを基礎に、対象者のこれまでの勤務状況が良好だったこと、真摯な反省等のほか、免職処分が教員の地位を失わせるという重大な結果を招くことも踏まえ、「本件免職処分は、社会観念上著しく妥当性を欠き、処分行政庁がその裁量権の範囲を逸脱したものというべきである。」として、懲戒免職処分・退職金不支給決定を違法として取り消しました。

     

    地裁は処分を有効としていたものですが、非違行為の内容からすれば高裁の判断が妥当と思われ、地裁判断との相違も含め、実務上、参考になるものです。

    【裁判・行政】道路使用許可申請書に記載された申請者の氏名と現場責任者の氏名が非開示情報に該当しないとして、これを非開示とした各処分を違法とし取消した裁判例(津地裁H28・3・24)

    津地裁平成28年3月24日判決(判例地方自治416号87頁)で控訴棄却で確定しています。国家賠償は認めらえなかったようです。

     

    情報公開実務上参考になるものです。

    【裁判・行政】情報開示請求について、消費者庁が行った不開示決定が取り消された事案(東京地裁H28・1・4)

    判例時報2315号44頁に掲載されています。

    消費者庁の判断は、消費者庁の機能・消費者庁に対する国民の信頼を著しく損なわせるもので、残念なものです。近時の活動等、設立時の意義・期待を再認識し実効的な判断・活動がなければ、消費者らからの信頼自体が失われかねないものと思われます。

    【裁判・行政】市の経営する競艇事業の臨時職員等で組織される共済会から離職餞別金に充てるための補助金交付は、市の裁量権逸脱或いは濫用として違法とし、条例による遡及も否定したする最高裁判例(平成28年7月15日・2つの事件)

    最高裁平成28年7月15日判決(第1事件)は、原審(高松高裁平成25年8月29日判決)・第一審(徳島地裁平成25年1月27日判決)が、市の補助金交付は地方自治法232条の2の「公益上必要がある場合」の裁量の範囲内として適法と判断したことを破棄し、違法性を認めたものです。最高裁平成28年7月15日判決(第2事件)は、市が事後的に条例を制定し遡及適用により適法化を図ったとしても、遡及的に適法になるものではないとしたものです(いずれも破棄差戻。判例時報2316号53頁)。

     

    いずれも高裁・地裁の安易な行政追随の判断の誤りを厳しくかつ明確に指摘するもので、下級審裁判所の司法機関としての判断・態度に反省をせまるものです。

     

    (寄附又は補助)

    第二百三十二条の二  普通地方公共団体は、その公益上必要がある場合においては、寄附又は補助をすることができる。