弁護士メモ|千葉晃平のひとこと
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  • 【裁判・刑事】交通トラブルに関する暴行事件について、正当防衛が認められた事案(東京地裁H28・9・16)

    判例時報2354号114頁に掲載されています。

    自動車Aの発信直前に、自動車Bが割り込んできたことから、自動車Aがクラクションを鳴らしたところ、自動車Bの運転者が降車したところ、無人となった自動車Bが発信・ガードレールに衝突するなか、激高した自動車Bの運転者が、自動車Aの運転席に横にきて車内に手や頭を入れ「ぶっ殺すぞ」と怒声を発してきた事案で、A運転者が自動車を発車させB運転者が転倒死亡したことにつき、A運転者の行為に正当防衛が成立するとして無罪としたものです(確定)。

     

    交通トラブルに関する事案は社会的にも注目されており、判例時報の解説にも複数同種事案の裁判例が掲げられています。

    【裁判・刑事】道路交通法違反につき、告知の手続を経ずになされた公訴提起として無効とした事例(大阪高裁H28・12・6)

    判例時報2354号105頁に掲載されています。

    警察官にパトカーの車載カメラの映像を見せて欲しいと求めたが見せられず、検察庁で見せられたことから、違反事実を認めた事案です。違反者は交通反則による処理を希望したところ認められず、警察段階で応じなかったことから、道交法130条2号「その者が書面の受領を拒んだため・・・第126条第1項の規定による告知・・・をすることができなかったとき」に当たるとして公訴提起されたものです。大阪高判平成28年12月6日は、「警察官の不都合な対応が交通反則告知書の受領拒否の事態を招き」として、第126条第1項の規定による告知ができなかったときに当たらないとして、公訴提起を無効としました(上告されています)。

     

    警察側が手持証拠等を提示しない不当性・不合理性を正しく捉えた参考になる判断です。

    【裁判・刑事】道路交通法違反につき、告知の手続を経ずになされた公訴提起として無効とした事例(大阪高裁H28・12・6)

    判例時報2354号105頁に掲載されています。

    警察官にパトカーの車載カメラの映像を見せて欲しいと求めたが見せられず、検察庁で見せられたことから、違反事実を認めた事案です。違反者は交通反則による処理を希望したところ認められず、警察段階で応じなかったことから、道交法130条2号「その者が書面の受領を拒んだため・・・第126条第1項の規定による告知・・・をすることができなかったとき」に当たるとして公訴提起されたものです。大阪高判平成28年12月6日は、「警察官の不都合な対応が交通反則告知書の受領拒否の事態を招き」として、第126条第1項の規定による告知ができなかったときに当たらないとして、公訴提起を無効としました(上告されています)。

     

    警察側が手持証拠等を提示しない不当性・不合理性を正しく捉えた参考になる判断です。

    【裁判・刑事】死刑確定者とその弁護士が刑事施設の職員の立会いのない面会を申し出たにも関わらず、これを許さなかった刑事施設の長の措置を違法とし賠償を命じた裁判例(東京地裁H28・2・23)

    東京地裁平成28年2月23日(判例時報2316号77頁)は、「死刑確定者又は代理人弁護士が処遇国賠訴訟に向けた打合せ(その準備の打合せ)をするために秘密面会の申出をした場合に、これを許さない刑事施設の長の措置は、秘密面会により刑事施設の規律及び秩序を害する結果を生ずるおそれがあると認められ、又は死刑確定者の面会についての意向を踏まえその心情の安定を把握する必要性が高いと認められるなど特段の事情がない限り、裁量権の範囲を逸脱し又はこれを濫用して死刑確定者の秘密面会をする利益を侵害するものとして、国賠法1条1項の適用上違法となる(ただし、代理人弁護士との関係では、国賠法1条1項の適用上違法となる余地はない。)と解するのが相当である。」として、当該事案について、被告国に損害賠償を命じました。

     

    最高裁平成25年12月10日(民集67巻9号1761頁)を基礎にした判断として、参考になるものです。

    【裁判・刑事】いわゆる現金送付型の特殊詐欺事案において、受け子の詐欺の未必の故意、騙されたふり作戦の行われた受け子の共同正犯の成立を認めた裁判例(福岡高判H28・12・20)

    判例時報2338号112頁に掲載されています。

    上告されていますが、民事上の注意義務違反、ひいては被害者救済にも参考になる判示です。

    【裁判・金融・刑事】金融商品取引法のインサイダー取引規制につき、他人がインサイダー情報を利用して不正な取引をすることを教唆する行為に可罰性があるとして、原審の有罪判断を維持した高裁判例(東京高裁H27・9・25)

    東京高裁平成27年9月25日判決(判例時報2319号123頁)は、弁護人側の『金融商品取引法167条3項(公開買付者等関係者の禁止行為)からすれば、伝達行為は不可罰である』旨の主張に対し、「金融商品取引法が、同法167条1項各号において、公開買付者等関係者が公開買付け等に関する事実を知って自ら取引を行うことを規制している趣旨は、公開買付者等関係者が、職務上知り得た、一般投資家が知り得ない会社内部の特別な情報を利用して株取引を行った場合には、一般投資家に比べて著しく有利になるのであって、そのような取引は極めて不公平であることに加え、そのような取引を放置すると、証券市場の公正性と健全性が損なわれ、ひいては、証券市場に対する一般投資家の信頼が失われることから、そのような不公正な取引を防止しするところにあると解される。そして、公開買付者等関係者が自ら取引をしない場合であっても、第三者に公開買付け等に関する事実を伝達して、脱法的に第三者に取引を行わせる場合があり得るのであり、そうでないとしても、公開買付者等関係者から公開買付け等に関する事実の伝達を受ける第三者は、公開買付者等関係者と何らかの特別な関係にあると考えられ、そのような者が取引を行った場合にも証券市場の公正性が害されるから、金融商品取引法は、同法167条3項において、公開買付者等関係者から公開買付け等に関する事実の伝達を受けた第一次情報受領者による取引も禁止の対象としている。このように、同条3項の規制は、同条1項各号の規制を補完し、インサイダー規制の趣旨を徹底することを目的としたものと理解できる。」「このように、金融商品取引法は、公開買付者等関係者自身が公開買付け等に関する事実を知って自ら取引を行うことを規制しており、それに加えて第一次情報受領者による取引をも規制してインサイダー取引の規制の徹底をはかっているのであって、そのような金融商品取引法のインサイダー取引の規制のあり方に照らせば、同法167条3項違反の罪の教唆行為は十分に可罰的であると解すべきであって、その教唆行為に対して刑法総則の教唆犯の規定を適用することは、同条の立法趣旨に何ら反していないと解される。」と述べ、原審の有罪判断を維持しました。

     

    金融商品取引法の適用事例として、実務上、参考となるものです。

    【裁判・刑事】当事者間において被告人が心神耗弱であることに争いなかった事案において、原審(地裁)は心神耗弱を認定したものの、精神障害の判断が不十分であったとして心神喪失として無罪を言い渡した事案(東京高裁平成28年5月11日)

    殺人罪の事案です。原審(長野地裁松本支部平成26年12月24日判決)は、起訴前の精神鑑定に依拠していたようです。東京高裁平成28年5月11日判決(判例タイムズ1431号144頁)は、「合理的とはいえない起訴前の精神鑑定に依拠し、心神耗弱の認定をしており、論理則、経験則等に照らして不合理な認定としたものといわざるを得ず、事実誤認がある。」としました(確定)。

     

    刑事事件における事実認定の参考になり、また、弁護活動の留意点を示す事案と思われます。

    【裁判・刑事】強制わいせつ・強姦の有罪の確定判決について、有罪の基礎となった被害者らの供述が、新供述によって虚偽であることが判明したとして、再審開始のうえ無罪が言い渡された事案(大阪地裁H27・10・16)

    判例時報の解説(2316号119頁)でも触れられているとおり、有罪判断確定の前から検察官の補充捜査によって被害者の処女膜が破れていないことが判明していたとのことです。弁護人はこの点も主張していたとのことですから、本件は、我が国の刑事裁判(検察官、裁判官)の根深い問題を示すものであり、本件に限らないと考えるのが自然であり、担当検察官・裁判官らが関与した他の事案も注意が必要であり、また、担当検察官・裁判官らの責任が問われてもやむ意を得ないものと思われます。

    【裁判・刑事】検察官が刑事被告人の勾留先を捜索して弁護人との手紙等を押収したことは違法であるとして、被告人と弁護人の国家賠償請求を認めた事案(大阪高裁H28・4・22)

    大阪高裁平成28年4月22日判決(判例時報2315号61頁)は、検察官による捜索差押許可状の請求及びその執行等を違法としたものです。裁判官の令状発付行為の違法性も問われていましたが、この点は違法性は認められないとしたものです。