弁護士メモ|千葉晃平のひとこと
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  • 【裁判・建築】竣工から16年経過後に発覚した漏水事故について、建物(マンション)施工業者の法的責任を認め賠償を命じた裁判例(東京地裁H26・12・15)

    REITO105号86頁に掲載されています。

    請求者(原告)との間に契約関係はない事案で、時間的問題の参考になりますし、最高裁平成19年7月6日判決、平成27年7月27日判決の適用例といえるものです。

    【裁判・マンション】マンション修繕積立金の一部を取り崩し、各区分所有者に対しその居住年数に応じて返金する旨の総会決議及び追認決議が、民法90条(公序良俗)に反し無効とされた事案(福岡地裁小倉支部H28・1・18)

    福岡地裁小倉支部平成28年1月18日判決(判例時報2300号71頁)は、原則として専有部分の床面積割合で取り扱われるべきであるとして、その居住年数に応じて返金する旨の決議は公序良俗に反するとしたものです。

    事例として珍しいと思われ、マンション管理運営の参考になると思われます。

    【裁判・消費者:不動産】いわゆる投資マンションの勧誘・販売について、媒介業者らへの損害賠償を認めた裁判例(東京地裁H27・3・18)

    被害者(原告)は、時給1180円の派遣社員であり、不動産取引や投資経験はなかったなか、4580万円の借り入れをおこなわれたものであり、近時、社会問題点になっている投資マンション勧誘の被害救済の事案です(REIT102号110頁に概要掲載有。全文はウエストローに掲載されています)。

    被害事案は多い一方、訴訟救済の困難性が指摘されていたなか、被害救済につながる参考になると思われます。

    【裁判・行政】生活保護受給者が引っ越しに伴い戸建住宅を売却し、引越しのうえマンションを購入したところ、引越先でマンション売却を指示され、これに従わず生活保護停止処分とされた事案につき、当該停止処分を違法と判断した裁判例(さいたま地裁H27・10・28)

    受給者は就労できない状態であり、もともと戸建住宅の保有は認められていたそうですが、交通事故に遭ったことなどもあり、約30年以上も通っている病院への通院も困難な状況になり、医師の意見もあり、病院近くに引越すために戸建を売却した事案です。戸建売却後、その代金を原資に、病院近くのマンションを購入したところ(担当の福祉事務所も変更)、福祉事務所からマンション売却を指示されてしまったものの、戸建売却の経緯からすれば、当該指示に問題があるとして売却に応じなかったところ、生活保護停止とされてしまったもので、当該停止処分の違法性を争ったものです。さいたま地裁平成27年10月28日(消費者法ニュース106号258頁)は、戸建住宅保有が認められていたこと、引越し理由の合理性、売却代金と購入代金とがほぼ一致していること等も踏まえ、福祉事務所のマンション売却指導が違法であり、よって保護停止処分も違法であるとして、停止処分を取り消しました。

    さいたま地裁の判断は、当然ともいえるものですが、現実には生活保護・福祉事務所の形式的判断で実務が運用されるなか、生活保護制度の趣旨に立ち返った裁判例として実務上も参考になると思われます。

    【裁判・マンション管理】一部の区分所有者が共用部分を第三者に賃貸して得た賃料について、他の区分所有者が持分割合に相当する部分を不当利得返還請求できる場合とできない場合の例を示した判例(最高裁H27・9・18)

    最高裁平成27年9月18日(判例タイムズ1418号92頁)は、「一部の区分所有者が共用部分を第三者に賃貸して得た賃料のうち各区分所有者の持分割合に相当する部分につき生ずる不当利得返還請求権は各区分所有者に帰属するから、各区分所有者は、原則として、上記請求権を行使することができるものと解するのが相当である。」として原則請求可能とする一方、「上記の集会の決議又は規約の定めがある場合には、各区分所有者は、上記請求権を行使することができないものと解するのが相当である。」として管理規約や区分所有者の集会決議などがある場合には、その規約・決議に従い個々の区分所有者は権利行使できないことになると判示しました。

    本件事案に限らず、マンション管理における規約・集団的決議の効力の例として参考になると思われます。

    【裁判・不動産】賃貸用物件であるマンション1棟の売買において1室で自殺があったことが「瑕疵」にあたるとして、収益性の低下等を考慮し損害額600万円の賠償を認めた裁判例(東京地裁H25・7・3)

    東京地裁平成25年7月3日判決(判例タイムズ1416号198頁)で、控訴棄却で確定しているようです。事案は、全29室の賃貸用マンションで、売買代金3億9000万円とのことです。自殺が心理的瑕疵を構成するとの裁判例は多数存しますが、その損害額算定はいろいろですが、収益物件の場合には、その収益性の低下も考慮されることが多いです。その例として参考になる1つと思われます。

    なお、宅建業者への請求は棄却されています。

     

    自殺・心理的瑕疵を認めた同種事例としては、東京地裁平成21年6月26日(判例秘書L06430336)、横浜地裁平成22年1月28日(判例タイムズ1336号183頁。ただし、控訴審東京高裁平成22年7月20日で損害額が半額程度に減額)、東京地裁平成20年4月28日(判例タイムズ1275号329頁)などが報告されています。

    【裁判・民事】分譲マンションの売主の、隣接マンション建設予定の説明義務の違反を認めた裁判例(大阪高裁H26・1・23)

    大阪高裁平成26年1月23日(判例時報2261号148頁)は、分譲マンションの売主が、自ら隣接地にマンションを建設予定であったことについて、(購入者らにとって)「マンションを購入するか否かを検討するに当たって極めて重要な情報」であったにも関わらず、これによる日照被害等の説明を怠ったものとして、売主に賠償を命じました(各10~20万円)。

    同一業者による隣接地マンション販売については、『眺望二度売り』などとして事後のマンション建築が差し止められた仮処分裁判例もあります(仙台地裁平成7年8月24日・判例時報1564号105頁)。
    いずれも、マンション販売に係る業者・売主側の注意義務を把握し、被害予防救済に役立つ判断と思われます。

    【裁判・民事】マンション管理規約における管理組合費用等の未払者に対し、回収に係る弁護士費用全額負担させる旨の規約が有効とされ、実額請求を認めた裁判例(東京高裁H26・4・16)

    1審・東京地裁平成25年10月25日判決は、当該規定は必ずしも金額が明確ではないこと等から裁判所が認定する金額(通常は、実際の支出額より少ない額となります)としていましたが、東京高裁平成26年4月16日判決(判例時報2226号26頁)は、同規定は有効として、管理組合が実際に支出した金額の請求を認めたものです。

    マンション管理の実務において参考になる事案と思われます(なお、上告受理申立てがなされています)。

    【ご案内】明日24日(日)13時30分~マンション被害の相談・対応方法の講演があります(講師・吉岡和弘弁護士、主催・欠陥住宅東北ネット)

    実務家・関係者にとって必須の講義です。

    概要・申込方法は、下記とおりです。
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    下記の要領でシンポジウムを開催します。参加希望の方は下記申込書或いはメール(kc-law@bloom.ocn.jp)でお申し込み下さい。

    ● 日時 8月24日(日)13:30~16:00

     内容 13時30分~ シンポジウム

    ・ 開会の挨拶、事務局報告(東日本大震災後の状況等)

    ・ 講演会 講師 吉岡和弘弁護士

    プロフィール 欠陥住宅全国ネット幹事長、姉歯マンションにつき約14億円の賠償を命じた横浜地裁判決の主任代理人など

    ・ 質疑応答

    ● 場所 仙台弁護士会館4階ホール(青葉区一番町2-9-18)

    ※ 仙台弁護士会HPご参照ください → http://senben.org/location

    ● 参加費 資料代等として500円頂戴します

    ● 問合先 千葉晃平法律事務所 電話022-713-7791

    ※ 申込書

     

    千葉晃平法律事務所 宛て

    FAX022-713-7792

    申込書

    8月24日(日)欠陥住宅被害東北ネット総会・シンポジウムにつき、次のとおり申し込み致します。

     

    1 シンポジウムについて

    (   ) 参加します。

    (   ) 欠席します。

    申込者】

     

    平成26年  月  日

     

    お名前

     

    ※ 会員以外の方は、以下もお知らせ下さい。

    連絡先住所・ファクス等

     

    所属 弁護士、建築士、相談員、研究者、一般、

    その他(              )

    ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

    【マンション・裁判】いわゆる一括検針一括徴収制度の管理組合規約を無効とした裁判例(名古屋高裁H25・2・22)

    建物の区分所有等に関する法律は、3条前段で「区分所有者は、全員で、建物並びにその敷地及び附属施設の管理を行うための団体を構成し、この法律の定めるところにより、集会を開き、規約を定め、及び管理者を置くことができる。」、30条1項は「建物又はその敷地若しくは附属施設の管理又は使用に関する区分所有者相互間の事項は、この法律に定めるもののほか、規約で定めることができる。」と規定しています。

    この点、水道料につき、現実には、管理組合が、水道局との間で一個の給水契約を締結し、水道局から請求されたマンション全体の水道料金を支払っているところも少なくないようですが(いわゆる一括検針一括徴収制度)、名古屋高裁平成25年2月22日判決(判例時報2188号62頁)は、上記各法の趣旨・目的に照らせば、「専有部分である各戸の水道料金は、専ら専有部分において消費した水道の料金であり、共有者前提に影響を及ぼすものともいえないのが通常であるから、特段の事情のない限り、上記の管理又は使用に関する区分所有者相互間の事項には該当しない」として、額・支払方法等を定めた管理組合規約の個人(構成員)に対する効力を否定しました。

    いわゆる一括検針一括徴収制度との関係で実務上も留意が必要であり、また、立法者解釈に拘泥されない判断でもあり、参考になると思われます。