弁護士メモ|千葉晃平のひとこと
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  • 【消費者・参考】「二十歳の君へ-消費者トラブルに巻き込まれない成人(おとな)になろう!!-」(国民生活センターHP)

    民法の成年年齢の引下げ(20歳から18歳へ)が、現実的問題となっております。

    消費者被害予防・救済の点から、国民生活センターも注意喚起をしています。
    ww.kokusen.go.jp/news/data/n-20180104_1.html

    消費者問題に長年取り組まれてきた河上正二教授は、「今まで、われわれ自身、若い頃に、その未成年者取消権で守られてきた存在なのです。それを、今、若者から奪おうとしているわけですから、それについての、いわばセーフティー・ネットを張っておくことは、これから大人に仲間入りしようとする若者に対する私どもの義務」(9月8日日弁連消費者契約法シンポジウムにおける河上正二教授のご発言)と述べられており、消費者被害救済・消費者教育の現場にいる私たちも、こうした視点も基礎に、問題に取り組む必要があるかと思っています。

    【消費者・参考】「消費者問題に関する2017年の10大項目」(国民生活センターHP)

    例年公表されているものです。下記は概要です。下記ページから報告書本文も見ることができます。
    http://www.kokusen.go.jp/news/data/n-20171221_2.html
    2017年は、還付金詐欺や訪問購入などで高齢者をターゲットにした悪質な勧誘、仮想通貨や格安スマホなどの新たな分野の相談が多く寄せられた年となりました。

    2017年の10大項目

    • 狙われる高齢者 「還付金詐欺」、「訪問購入」での相談目立つ
    • 依然として多い「定期購入」トラブル 20歳未満でも多くみられる
    • 仮想通貨の利用広がる 「必ず儲(もう)かる」と勧誘されて購入するもトラブルに
    • 情報通信の多様化 格安スマホなどの相談も
    • 子どもの事故 加熱式たばこの誤飲、宅配ボックスに閉じ込めなどが発生
    • 「プエラリア・ミリフィカ」を含む健康食品の危害 若い女性に多発
    • 格安旅行会社「てるみくらぶ」が経営破綻(はたん)
    • 景品表示法による初の課徴金納付命令 品質への信頼揺らぐ企業の不祥事
    • 改正特定商取引法施行 約120年ぶりとなる民法改正も
    • 集団的消費者被害回復制度の整備進む 特定適格消費者団体の認定と国民生活センター法の改正

    【裁判・消費者】時効完成後の支払(継続)について、時効援用は信義則に反しないとして債務消滅を認めた裁判例(名古屋簡裁H29・7・11、福岡簡裁H29・7・18)

    いずれも消費者法ニュース113号217頁、219頁に掲載されています。

    時効完成後の支払いについては、業者側から、最高裁昭和41年4月20日判決があり信義則に反し援用できないと判例が引用されますが、同最判は、個別事案の判断であり(とくに債務者から支払いを積極的に申し出ていたもの)、当然、全ての事案においては時効援用が信義則に反するわけではありません。名古屋簡裁の事案は和解契約書も作成されていたもの、福岡簡裁の事案は40回もの支払いが存したものですが、いずれも、個別具体的事情を踏まえ、時効援用・債務消滅を認めたものです。

     

    実務上、被害救済に大いに参考になるものと思われます。

    【消費者・情報】国民生活センター「2016年度のPIO-NETにみる消費生活相談の傾向と特徴」が公表されています(国民生活センターHP)

    8月8日付けで国民生活センターHPに掲載されています。
    http://www.kokusen.go.jp/news/data/n-20170810_1.html
    相談総数は、2016年度の88.7万件で、2015年度の約93.0万件に比べ減少しているようですが、架空請求、還付金詐欺等による被害が多数を占めるなどの状況にあるようです。

    【消費者・参考】「平成28年度消費者意識基本調査」の結果が公表されています(消費者庁HP)

    クーリング・オフ制度は約9割の認知度になっている一方、未成年者取消権の存在について親の立場で7割程度しか認識されていないなど、現行制度の周知等の課題なども把握し得るものです。


    全文は、消費者庁HPに掲載されています(平成29年6月28日付け)。

    http://www.caa.go.jp/adjustments/index_16.html

    【情報・消費者】、「消費者被害の救済手法と抑止手法の多様化及び両者の連携に関する比較法政策的研究」(国民生活センターHP)

    文部科学省の科学研究費補助金(科研費)関係の報告です。平成28年度の報告が下記アドレスから見ることができます。
    日本のほかドイツ、フランス、イギリス、アメリカ、ブラジル、中国の概要・雰囲気を感じることができ、参考になるものです。
    http://www.kokusen.go.jp/news/data/n-20170330_4.html

    【裁判・消費者】消費者契約法12条1項・2項にいう「勧誘」について、限定的な行政解釈を否定し、不特定多数の消費者に向けられたものであっても、「勧誘」該当可能性を認めた最高裁判例(H29・1・24)

    最高裁平成29年1月24日(金融商事判例1510号30頁)は、「クロレラには免疫力を整え細胞の働きを活発にするなどの効用がある旨の記載や、クロレラを摂取することにより高血圧、腰痛、糖尿病等の様々な疾病が快復した旨の体験談などの記載がある本件チラシ」について、「原審は、法12条1項及び2項にいう「勧誘」には不特定多数の消費者に向けて行う働きかけは含まれないところ、本件チラシの配布は新聞を購読する不特定多数の消費者に向けて行う働きかけであるから上記の「勧誘」に当たるとは認められないと判断して、上告人の上記各項に基づく請求を棄却した。」ことについて、「原審の上記判断は是認することができない。その理由は、次のとおりである。」として、「法は、消費者と事業者との間の情報の質及び量並びに交渉力の格差に鑑み、消費者の利益の擁護を図ること等を目的として(1条)、事業者等が消費者契約の締結について勧誘をするに際し、重要事項について事実と異なることを告げるなど消費者の意思形成に不当な影響を与える一定の行為をしたことにより、消費者が誤認するなどして消費者契約の申込み又は承諾の意思表示をした場合には、当該消費者はこれを取り消すことができることとしている(4条1項から3項まで、5条)。そして、法は、消費者の被害の発生又は拡大を防止するため、事業者等が消費者契約の締結について勧誘をするに際し、上記行為を現に行い又は行うおそれがあるなどの一定の要件を満たす場合には、適格消費者団体が事業者等に対し上記行為の差止め等を求めることができることとしている(12条1項及び2項)。」「ところで、上記各規定にいう「勧誘」について法に定義規定は置かれていないところ、例えば、事業者が、その記載内容全体から判断して消費者が当該事業者の商品等の内容や取引条件その他これらの取引に関する事項を具体的に認識し得るような新聞広告により不特定多数の消費者に向けて働きかけを行うときは、当該働きかけが個別の消費者の意思形成に直接影響を与えることもあり得るから、事業者等が不特定多数の消費者に向けて働きかけを行う場合を上記各規定にいう「勧誘」に当たらないとしてその適用対象から一律に除外することは、上記の法の趣旨目的に照らし相当とはいい難い。」「したがって、事業者等による働きかけが不特定多数の消費者に向けられたものであったとしても、そのことから直ちにその働きかけが法12条1項及び2項にいう「勧誘」に当たらないということはできないというべきである。」と判示しました。

     

    原審(大阪高裁平成28年2月25日・金融商事判例1490号34頁)は、従前の行政解釈に従ったものでしたが、最高裁はこれを否定し、実質上、チラシも消費者契約法上の「勧誘」にあたるとしたもので、実務上、他の勧誘行為の理解・解釈においても消費者被害救済のみちを拡げる極めて重要な判断です。

     

    裁判所HPに判決全部が掲載されています。

    http://www.courts.go.jp/app/hanrei_jp/detail2?id=86454

    【裁判・消費者】いわゆる特殊詐欺に用いられた銀行口座開設に関し、内職募集に応じて運転免許証や住基ネットワーク等の本人確認書類を提出した者らの幇助責任を認め損害賠償を命じた裁判例(東京地裁H28・3・28)

    特殊詐欺は銀行口座等の金員受領先がなければ成り立たない一方、その口座から検挙されないために仮名・他人名義の口座を必要とします。内職募集に応じた者らからは明確な特殊詐欺関与の意識がなかった旨の反論がなされますが、東京地裁平成28年3月23日判決(判例時報2318号40頁)は、郵便転送の業務内容、本人確認書類の重要性等から少なくとも過失が存するとして幇助責任(共同不法行為責任)を認めました(確定。一部のものについて過失相殺あり)。

     

    特殊詐欺被害救済にとても参考になる判断です。

    【裁判・消費者】新車の売買契約において車両の足回り等の部分に多量の錆が存在することにつき、隠れた瑕疵の存在を肯定し、車両減価分(5万円)の損害賠償を認めた裁判例(富山地裁H27・7・8)

    本件(判例時報2315号83頁)は新車に関するものですが、実際には中古自動車売買でのトラブルも多く、中古自動車について瑕疵担保責任を認めた事案として、メーター巻き戻し事案について大阪地裁平成20年6月10日判決(判例タイムズ1290号176頁)、ガソリン漏れ事案について東京地裁平成16年4月15日判決(金融・商事判例1231号56頁)などがあります。

    【裁判・消費者】債務整理を依頼された認定司法書士が、当該債務整理の対象となる債権に係る裁判外の和解について、金140万円を超えるものとして代理することができないとした最高裁判例(H28・6・27)

    最高裁は、 債務整理を依頼された認定司法書士(司法書士法3条2項各号のいずれにも該当する司法書士)は、当該債務整理の対象となる個別の債権の価額が金140万円(司法書士法3条1項7号に規定する額)を超える場合にはその債権に係る裁判外の和解について代理することができないことを明確にしました(判例時報2311号16頁、判例タイムズ1428号25頁)。

    各種論評等ありますが、弁護士法72条違反は公序良俗違反・無効を構成するものであり(最高裁昭和38年6月13日・民集17巻5号744頁)、近時の下記名古屋高裁平成27年11月25日判決(判例時報2310号90頁)など下級審裁判例もこうじた流れを踏まえたものであり、最高裁平成28年6月27日判決は、職務権限を越える司法書士の受任は、結局、消費者への不利益・負担となりうることを示したものでもあると思われます。判決文は下記のとおりです。

     

    判決文・最高裁HP

    http://www.courts.go.jp/app/hanrei_jp/detail2?id=85969

     

    名古屋高裁平成27年11月25日判決(判例時報2310号90頁)

    140万円を超えるいわゆる過払金返還請求について、司法書士を代理人とする和解契約が弁護士法72条に違反し無効とされ、債務者の業者に対する無効主張も信義則に反しないとする裁判例(名古屋高裁H27・11・25)