弁護士メモ|千葉晃平のひとこと
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  • 【裁判・弁護士法】弁護士法25条1号に違反する訴訟行為について、相手方当事者が裁判所に対し各訴訟行為の排除を申立てることができるとし、不服申立手続を判示した最高裁決定(H29・10・5)

    破産管財に関する事案で、再生申立に関与した弁護士が破産管財人からの訴えの代理人になることが弁護士法25条1号違反とするもので、また、不服申立方法等を述べるものです(金融商事判例1535号18頁)。

     

    最高裁HPにも掲載されています。

    http://www.courts.go.jp/app/hanrei_jp/detail2?id=87117

    【裁判・民事】自動車売買につき、所有権留保・販売会社名義の登録がされて、保証人が弁済した後、自動車買主の破産手続開始となった場合、その時点で販売会社名義の登録があれば、保証人は別除権行使ができるとする最高裁判例(H29・12・7)

    最高裁平成29年12月12日(最高裁HP、金融・商事判例1533号36頁)は、「自動車の購入者と販売会社との間で当該自動車の所有権が売買代金債権を担保するため販売会社に留保される旨の合意がされ、売買代金債務の保証人が販売会社に対し保証債務の履行として売買代金残額を支払った後、購入者の破産手続が開始した場合において、その開始の時点で当該自動車につき販売会社を所有者とする登録がされているときは、保証人は、上記合意に基づき留保された所有権を別除権として行使することができるものと解するのが相当である。」「その理由は、以下のとおりである。保証人は、主債務である売買代金債務の弁済をするについて正当な利益を有しており、代位弁済によって購入者に対して取得する求償権を確保するために、弁済によって消滅するはずの販売会社の購入者に対する売買代金債権及びこれを担保するため留保された所有権(以下「留保所有権」という。)を法律上当然に取得し、求償権の範囲内で売買代金債権及び留保所有権を行使することが認められている(民法500条、501条)。そして、購入者の破産手続開始の時点において販売会社を所有者とする登録がされている自動車については、所有権が留保されていることは予測し得るというべきであるから、留保所有権の存在を前提として破産財団が構成されることによって、破産債権者に対する不測の影響が生ずることはない。そうすると、保証人は、自動車につき保証人を所有者とする登録なくして、販売会社から法定代位により取得した留保所有権を別除権として行使することができるものというべきである。」と判示しました。

     

    破産関係の実務においてよく見られる事案であり、重要な判断と思われます。

    【裁判・破産】同時廃止事案の免責許可決定に対する即時抗告において、即時抗告後に判明した事情を踏まえ、再度の考案により免責許可を取り消し、免責不許可決定を行った事案(千葉地裁H29・4・20)

    自己破産免責の申立人について、同一性を失わせるため申立て2ヵ月前に離婚・復氏をしていたこと、1ヶ月半前に100万円を受領していたこと等を裁判所に報告していなかったことが事後に発覚した事案です(判例タイムズ1439号176頁)。

     

    当然の結果とは思われますが、免責不許可判断の一例として参考となるものです。

    判例タイムズ1403号13頁以下に東京地裁での免責不許可事案の一覧表も掲載されており参考になります。

    【裁判・弁護士業務】自己破産申立てを受任した弁護士側に財産散逸防止義務違反に対し1270万円超の損賠賠償を命じた裁判例(千葉地裁H28・3・25)

    判例時報2337号36頁に掲載されています。

    破産管財人を原告とする訴訟で、申立人代理人が受任後申立前に、会社代表者へ高額報酬を支払ったり、会社顧客へお詫びの品を送ったりした事案で、申立代理人弁護士と同人が社員となっている弁護士法人へ各635万円超の賠償を命じたものです。控訴後和解となっています。

     

    破産債権の総額は3億3500万円超・債権者数80名超からしても当然の判断と思われますが、実務上、参考になるものと思われます。

    【裁判・消費者】詐欺的要素の強い社債販売会社と、その従業員との間の加給金支払合意について、公序良俗に違反し無効として、破産管財人の返還請求を認めた裁判例(名古屋地裁H28・1・21)

    名古屋地裁平成28年1月21日判決(判例時報2308号119頁。確定)の判断です。破産管財人が返還を受けることによって被害者への配当(実質被害弁償)につながる判断で、消費者被害救済に参考となる事案です。

    こうした事案については、無限連鎖講配当金の返還請求を認める最高裁平成26年10月28日判決(民集68巻8号1325頁)がリーディングケースといわれています。

    【裁判・行政】破産免責を受けた都営アパートの家賃滞納者に対する、従前の和解条項(滞納の場合は退去)に基づく明渡強制執行は認められないとする裁判例(東京地裁H26・10・27)

    東京地裁は、強制執行を認めれば破産免責の趣旨に反するとして、東京都の強制執行を差し止める判決を出したとのことです。判例地方自治388号112頁記載の判決ニュース掲載のもので判決全文が確認できていませんが、実務上も重要な判断と思われ、アップします。

    【裁判・民事】公序良俗違反の無効な契約(無限連鎖講・総額約25億円の被害)につき、給付を受けた会員側が金員の返還請求を拒むことは、信義則上許されないとした事案(最高裁H26・10・28)

    民法708条では「不法な原因のために給付をした者は、その給付したものの返還を請求することができない。ただし、不法な原因が受益者についてのみ存したときは、この限りでない。」(不法原因給付)とされており、これによれば本件事業者(無限連鎖講の実施者)から、各会員への給付の返還はできないものとも考えられるところ、最高裁平成26年10月28日判決(金融・商事判例1454号16頁)は、会員側の返還拒絶は、信義則上許されないと判示し、会員側へ返還を命じました。

    本件では、下級審(東京地裁・東京高裁)とも会員側の返還拒絶を認めていたものですが、最高裁は、請求権者が破産管財人であること、返金を受けた場合に使途(配当)等も考慮し、上記判断を示しました。

    法708条(不法原因給付)の実務的感覚を理解するものとして参考になるものです。

    【裁判・民事】免責許可決定の効力が及ばない破産債権であるとして、破産債権者表に記載されていることを理由にする執行文付与は認められないとする最高裁判例(H26・4・24)

    破産債権者表(いわゆる債権者一覧表)に記載された債権は、破産手続終了後、確定判決と同様の効力が認められるという規定(破産法221条)を前提に、強制執行実施のために民事執行法33条1項の適用・準用により執行文付与を求められるかが問題となった事案につき、結論として、認められないとしたものです(最高裁平成26年4月24日判決・最高裁HP)。

    免責許可決定の意味・効果との関係では、穏当な結論と思われますが、その理論的根拠等、一度は確認・検討する意味もあろうかと思い、参考までにアップします。


    裁判所HP

    http://www.courts.go.jp/app/hanrei_jp/detail2?id=84146

    【裁判・生活保護】行政からの破産者に対する費用返還請求(生活保護法63条)に対する弁済につき、破産手続上、有害・不当として、否認されるとした裁判例(千葉地裁平成25年11月27日)

    控訴されていますが、「(行政が)費用返還義務の履行を受けるに当たっては、一般債権者に優越する何らかの地位にあると解すべき法令上の根拠も認めることができない。」との判断が示されるなど、生活保護と破産手続・制度との関係性や実務的処理を行ううえで参考になるものと思われます。

    【破産・実務】破産管財人の善管注意義務について(自由と正義7月号の特集)

    破産管財人の善管注意義務は、実務上、重要な知識ですが、日弁連が毎月発行している「自由と正義」の7月号51頁以下に特集として「破産管財人の善管注意義務と個人責任」(佐長功弁護士)が掲載されており、最判平成18年12月21日、最判昭和45年10月30日などの基本判例のほか、確認すべき裁判例・文献がコンパクトに掲載されています(全7頁)。

    弁護士実務的な話題ですが、ご参考までにアップします。