弁護士メモ|千葉晃平のひとこと
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  • 【裁判・強制執行】信託財産の土地と固有財産の家屋に係る賃料債権の差押えが適法とされた事例(最高裁H28・3・29)

    最高裁平成28年3月29日判決(判例時報2310号39頁)の判断です。原判決(大阪高裁)の判断を破棄したもので微妙な事案でしたが、最高裁の判断として今後の強制執行実務上、重要な判断と思われます。

    【裁判・行政】破産免責を受けた都営アパートの家賃滞納者に対する、従前の和解条項(滞納の場合は退去)に基づく明渡強制執行は認められないとする裁判例(東京地裁H26・10・27)

    東京地裁は、強制執行を認めれば破産免責の趣旨に反するとして、東京都の強制執行を差し止める判決を出したとのことです。判例地方自治388号112頁記載の判決ニュース掲載のもので判決全文が確認できていませんが、実務上も重要な判断と思われ、アップします。

    【裁判・民事】免責許可決定の効力が及ばない破産債権であるとして、破産債権者表に記載されていることを理由にする執行文付与は認められないとする最高裁判例(H26・4・24)

    破産債権者表(いわゆる債権者一覧表)に記載された債権は、破産手続終了後、確定判決と同様の効力が認められるという規定(破産法221条)を前提に、強制執行実施のために民事執行法33条1項の適用・準用により執行文付与を求められるかが問題となった事案につき、結論として、認められないとしたものです(最高裁平成26年4月24日判決・最高裁HP)。

    免責許可決定の意味・効果との関係では、穏当な結論と思われますが、その理論的根拠等、一度は確認・検討する意味もあろうかと思い、参考までにアップします。


    裁判所HP

    http://www.courts.go.jp/app/hanrei_jp/detail2?id=84146

    【民事・裁判】代表者1名の口座に積み立てた、友人4名の海外旅行等積立資金につき、信託財産として友人3名分に対する強制執行を否定した裁判例(東京地裁H24・6・15)

    Aを含む友人4名で、海外旅行等のための積立てとして、A名義の口座に約240万円の積み立てがなされていたところ、Aの債権者がその口座の全額につき強制執行を実行した事案につき、同口座の積立金は信託財産であるとして、A以外の3名分(約180万円)に対する強制執行は認められないとした事案です(判例時報2166号73頁)。

    信託財産とされればAの財産からの独立性が認められるものです。

    相外旅行目的に限らず、知人間のこのような積立ては日常的に行われているものと思われ、裁判例はこうした日常生活の実態・銀行口座利用の有用性を保護したものと思われ、また、今後の積立ての方法等のあり方の参考になると思われます。

     

    【民事・家族】審判に基づく子どもの引き渡し(強制執行)は困難であるとしながら、監護権者を定めて子どもの引き渡しを命じることが相当とされた裁判例(東京高裁H24・6・6決定)

    妻が子ども(9歳、5歳)と同居していたところ、夫が子どもを奪取した事案で、妻から子どもの引き渡し審判が申し立てられた事案です。子どもの意向等を踏まえ、夫のもとから強制的に子どもを引き離すことはできないとし強制執行が不能であるとことを認める一方、妻を監護権者と定めて夫に対し子どもの引き渡しを命じたものです(判例時報2152号44頁)。

    法的問題点としては、強制執行が不能であれば、子どもの引き渡しを命じる意味はないのではないかという点にありますが、子の福祉の観点等から、上記決定を相当としています。親族関係を扱う家庭裁判所にはこうした紛争に踏み込んで解決案(判断)を示すことが求められていること、法的正義を示すこと、違法行為の放置を避けること等から意味ある判断と思われます。

     

     

    複数店舗の預金執行につき預金債権額による特定を認めた決定(東京高裁H23・10・26)

    預金債権を差し押さえるためには、同じ銀行でありながら、支店毎に手続きをとるべきだというのが旧来の考え方でした。しかしながら、この考え方ですと、銀行が名寄せ可能なシステムを有していること、そもそも銀行は各支店ではなく当該銀行自体がひとつの権利主体であること、民事訴訟で権利が確定しながら現実の回収が困難となり、ひるがっては民事訴訟という法制度自体の信頼性・有用性が揺らぎつつあること等々の問題があり、近時、強制執行の場面で、こうした問題をのりこえる決定例が多数出されるようになっています。本件は、全店一括順位付け方式による特定を否定した最高裁H23・9・20(判時2129号41頁)の後の判断でもあり、重要な意義を有すると思われます(判時2130号4頁)。

     

    強制執行につき、保険契約の年月日の先後で債権の特定性が認められた事例(東京高裁H22・9・8決定)

    強制執行の場合において、差し押さえ債権をどの程度特定する必要があるかにつき、従前は保険契約の種別・種類までを特定すべきとされていましたが、債権者が必ずしも種別・種類まで特定できるものではなく、権利の実現(強制執行)をあきらめざるを得ない場面もありました。しかしながら、東京高裁H22・9・8(判時2099号25頁)は、契約の年月日の先後で特定されるとして、強制執行を認めました。被害回復に大きな力となる判断と思われます。

    債権者側代理人は、投資被害救済等つき先進的な活動をなされ、本決定も債権者側代理人の熱意溢れる活動によるものです。HPからもとても有益な情報が得られます↓。

    あおい法律事務所 http://www.aoi-law.com/