弁護士メモ|千葉晃平のひとこと
  • HOME
  • >
  • カテゴリー: 製造物責任
  • 【裁判・民事】バイク転倒事故の原因が製造物責任法上の欠陥にあたるとして輸入業者に賠償を命じるとともに、業者から出版社への情報提供者に対する損害賠償請求を排斥した事案(東京地裁H28・9・28)

    判例タイムズ1440号213頁以下に掲載されています。

    製造物責任法の適用事例として参考になるとともに、業者から被害者に対する威嚇的訴訟(いわゆるスラップ訴訟)について、「一般に、雑誌の記事の編集権は当該雑誌の出版社にあり、出版社は、その責任と権限において、種々の取材を行った上、事実を取捨選択して記事の内容を構成し、これを雑誌に掲載するものであるから,出版社に対して他人の名誉等を毀損する情報を提供した者は、自己の提供した情報がそのままの形で記事として掲載されることは予見していないのが通常であることから,情報提供者の名誉毀損を主張する者において,情報提供者が自己の提供した情報がそのままの形で記事として掲載されることを予見していたことを示す特段の事情を立証しなければならないものと解するのが相当である。またこの点からすれば,少なくとも情報提供行為との相当因果関係が肯定されない限り,他人の名誉等を毀損する記事等の掲載について情報提供者が教唆幇助を含む共同不法行為責任を負わないものと解するのが相当である。」と判示して業者の威嚇的訴訟を棄却しました。

    【参考・情報】警察庁の注意喚起「現在実用化されている『自動運転』機能は、完全な自動運転ではありません!! 」(警察庁HPより)

    平成29年4月14日付け発表です。
    掲載文書 → https://www.npa.go.jp/koutsuu/kikaku/jidounten/kouhou/290414kotsukyoku.pdf
    「平成 28 年 11 月、千葉県八千代市において、日産自動車(以下「日産」という。)社製の試乗が、「プロパイロットシステム」を使用した走行中に、運転者が前方停止車両を認識していたも関わらず、自動車販売店店員の誤った認識に基づく指示により、ブレーキをかけずに走行た結果、走行環境の影響から衝突被害軽減ブレーキが作動せず、前方停止車両に追突し前方停止車両に乗車中の2名が負傷する事故が発生しました。」との事故や他の例に基づく注意喚起です。
    同掲載文書の「ドライバー責任」と法的責任とは一致するものではないと思われ、事業者の公表・説明内容も含め、製造側の事業者への対応が強く求められるものです。

    【参考・情報】月刊国民生活3月号 自転車問題の特集(国民生活センターHP)

    自転車の使用面からの問題点が検討されています。なお、自転車については製造物責任が問題となる場面もあります。
    掲載のページ http://www.kokusen.go.jp/wko/index.html
    【目次・抜粋】

    自転車事故をめぐる諸問題

    自転車は誰でも手軽に使える便利な乗り物ですが、自転車による交通事故も多発しており、一歩間違えると取り返しのつかない事態になります。それでは、自転車事故を防ぐためにはどのような環境づくりが必要なのでしょうか。また、自転車を使う側はどのような知識と意識を身につければいいのでしょうか。さまざまなデータと法律から解説します。また、自転車の上手な使い方と選び方もお伝えします。

    【裁判・民事】クロスバイク(自転車)の走行中の転倒事故の原因は、前輪サスペンション部の分離にあるとして、製造物責任法上の欠陥を認定し、損害は2億円を超えるとした上で過失相殺1割とし、輸入販売業者に金1億8900万円超の支払いを命じた裁判例(東京地裁H25・3・25)

    メーカーはビアンキです。

    東京地判平成25年3月25日(判タ1415号346頁)は、「前記二のとおり、原告太郎は、本件自転車により走行中、そのサスペンションが分離し、前輪及びこれと連結しているアウターチューブが脱落したことによって、支持を失って転倒して受傷したものであるところ、以上によれば、原告太郎は、本件自転車を、その特性に従い、通常予想される使用形態で使用していたのであって、購入後の経過期間、保管やメンテナンスの状況を考慮しても、本件自転車は、走行中にサスペンションが分離したという点において、通常有すべき安全性を欠いていたといわざるを得ない。」「前記二にみたとおり、本件自転車のサスペンション内のスプリングが破断し、原告太郎の走行中にサスペンションが分離するに至った具体的、科学的機序の詳細については、証拠上、いまだ十分には解明されていないところではあるが、本件における製造物責任法にいう「製造物」とは自転車であって、上記アからウのとおりの本件自転車の特性、通常予想される使用形態、引渡時期からすれば、本件事故における転倒の原因が本件自転車の部品であるサスペンションの分離であることが主張立証されれば、製造物責任法に定める欠陥についての主張立証としては必要十分であり、これ以上に、サスペンションの分離に至る詳細な科学的機序、あるいは、サスペンションの構造上の不具合までを主張立証する必要はないと解するのが相当である。このように解しても、製造物責任法に定める「欠陥」の捉え方としては十分に具体的であって、欠陥の有無についての攻撃防御を尽くすことは可能であり、また、製造業者等の行為規範としても具体性に欠けるところはないと考えられる。」と判示したものです。

     

    法的被害救済の判断枠組みは確立しつつありますが、製造物の欠陥の場合の被害の甚大さに鑑みれば、その予防策を怠った点にも重い責任が問われるべき時期にきているものと思われます。

     

    控訴後和解となっています。

    【裁判・労働刑事】荷物搬送用のエレベーターがカゴ到着前にドアが開く故障状態を放置し、その結果、従業員が2階から落下し、エレベーターのカゴに足切断され失血死した労災事故につき、労働安全法違反・業務上過失致傷罪として有罪とされた事案(神戸地裁H25・4・11)

    判決文は裁判所HPに掲載されています。

    http://www.courts.go.jp/app/files/hanrei_jp/579/083579_hanrei.pdf


    本件エレベーターは、「本件エレベーターは、設置後数年が経過した頃から種々の不具合が出現し始めた。不具合が発覚した場合、被告人Cら、第3工場の従業員が被告人Bに報告し、必要に応じて修理を求めるなどしていた。被告人Bは、修理業者を呼んで修理を行わせたこともあったが、一部の不具合については放置し、十分な修理がされないまま利用が続けられていた。
    平成21年2月当時、例えば、1階の外扉については、東西(工場外側及び内側)の扉とも、搬器が1階にないのに開き、また、外扉が開いていても搬器が動く状態であった。2階の外扉についても、搬器が2階にないのに開く不具合が年に数回程度発生していた。2階の外扉についても、搬器が2階にないのに開く不具合が年に数回程度発生していた。」という状況にあったものです。

    その上で、本件事故は、「平成21年2月25日午後1時1分頃、第3工場2階の製造ラインで業務を行っていた従業員のF(以下「被害者」という。)は、段ボール詰めされた製品を1階に運び降ろすため、通常の作業手順どおり、段ボール箱15箱をパレットに載せた上、それをハンドリフトを使用して本件エレベーター2階出入口の前室付近まで運んだ。そのとき、本件エレベーターの搬器は1階に停止しており、本来であれば被害者が2階外扉を開けようとしてもドアロックが掛かるべきところ、何らかの理由でドアロックが機能せず、被害者によって本件エレベーターの2階外扉が開けられた。被害者は、搬器が2階に停止していないことに気付かないまま、ハンドリフトを押し込んだため、ハンドリフトは段ボール箱を載せたパレットごと昇降路内に突入した(以下、「本件突入事故」という。)。その後、具体的な経過は不明であるが、被害者は本件エレベーターの2階出入口から昇降路内に転落し、1階に停止していた搬器の天井板の上面に落下した。同日午後1時14分頃、被告人Cは、被害者が昇降路内に転落している事実に気付かず、本件エレベーターを作動させて搬器を1階から上昇させた。その結果、被害者は、搬器天井板の上面東側から落下し、上昇する搬器と昇降路壁面の間に挟み込まれて左下腿部を離断して失血死するに至った(以下、本件突入事故後、被害者が昇降路内に転落し、さらに被告人Cが搬器を上昇させたことにより被害者が死亡するまでの経過全体を「本件事故」という。)。」との内容です。

    荷物搬送用エレベーターでの事故は多発しており、同種案件はもとより、労災事件において刑事責任を問われるケースが少ないなか、刑事責任を負うべき違法レベルの把握にも、参考になるものと思われます。

    【情報・製造物責任】制定20周年を迎える製造物責任法の現状と課題(日本消費者法学会第7回大会資料・現代消費者法№24)

    現代消費者法№24・2014年9月号の特集記事として約70頁にわたり掲載されています。朝見行弘久留米大学教授によるこの20年間の軌跡と現状・課題のまとめのほか、欠陥判断・立証問題・損害論等々、実務的・理論的にとても参考になる多数の論考が掲載されています。消費者側から、欠陥推定規定の必要性などが提言されながら、安易な裁判所信頼論を述べてきた元立法関与者・裁判官の視点が、真の被害者救済のための制度設計を阻害してきた要因との指摘もあります。

    259件にのぼる裁判・和解一覧表もあり、実務家にとってとても参考になる特集です。

    国民生活センターHPでも、製造物責任法関係の訴訟一覧のページがあります。

    http://www.kokusen.go.jp/pl_l/

    【裁判・民事】陸上自衛隊の対戦車ヘリコプター落着事故に係るエンジン製造業者の製造物責任法に基づく2億3400万円余(修理費・搭乗者治療費)を認めた裁判例(東京高裁H25・2・13)

    請求人は国、賠償義務者・製造者は川崎重工業株式会社です。

    自衛隊機が前進飛行を開始しようとした際に、突然、急激にエンジンが出力を失って落着し機体損傷・搭乗者2名が重症となる重大事故であり、国民・近隣住民との関係で国・自衛隊の責任・問題も問われる事案と思われますが、ここでは製造物責任の論点に絞ると、東京高裁平成25年2月13日判決(判例時報2208号46頁)が「『欠陥』の存在についての主張、立証は、本件エンジンを適正な使用方法で使用していたにもかかわらず、通常予想できない事故が発生したことの主張、利生で足り」るとして、それ以上エンジン内での欠陥部位や科学的機序の主張・立証は不要であると判示した点は、製造物責任法の趣旨から当然のことですが、他の被害事案における被害救済に役立つものと思われます。

    【裁判・製造物】自転車の走行中の転倒事故の原因が、前輪サスペンション部分の分離にあるとして、輸入業者に対する製造物責任法に基づく損害賠償(1億5000万円余)が命ぜられた裁判例(東京地裁H25・3・25)

    被害者は、「重度の四肢麻痺の後遺障害を有し、上肢は両肘がかろうじて屈曲できる程度、車いすの操作についても全て介助を要し、排尿、排便も自力では困難な状態にあって、最低限の身辺の清潔及び健康維持を持続的に行うことができない状態」という極めて重大な被害を受けている事案です。

     

    東京地裁H25・3・25は、自転車の欠陥につき、「前記二のとおり、原告太郎は、本件自転車により走行中、そのサスペンションが分離し、前輪及びこれと連結しているアウターチューブが脱落したことによって、支持を失って転倒して受傷したものであるところ、以上によれば、原告太郎は、本件自転車を、その特性に従い、通常予想される使用形態で使用していたのであって、購入後の経過期間、保管やメンテナンスの状況を考慮しても、本件自転車は、走行中にサスペンションが分離したという点において、通常有すべき安全性を欠いていたといわざるを得ない。」「前記二にみたとおり、本件自転車のサスペンション内のスプリングが破断し、原告太郎の走行中にサスペンションが分離するに至った具体的、科学的機序の詳細については、証拠上、いまだ十分には解明されていないところではあるが、本件における製造物責任法にいう「製造物」とは自転車であって、上記アからウのとおりの本件自転車の特性、通常予想される使用形態、引渡時期からすれば、本件事故における転倒の原因が本件自転車の部品であるサスペンションの分離であることが主張立証されれば、製造物責任法に定める欠陥についての主張立証としては必要十分であり、これ以上に、サスペンションの分離に至る詳細な科学的機序、あるいは、サスペンションの構造上の不具合までを主張立証する必要はないと解するのが相当である。このように解しても、製造物責任法に定める「欠陥」の捉え方としては十分に具体的であって、欠陥の有無についての攻撃防御を尽くすことは可能であり、また、製造業者等の行為規範としても具体性に欠けるところはないと考えられる。」として、製造物責任法の趣旨に鑑みた妥当な判断を示しています(過失相殺1割)。

    かかる判断は、最高裁でも確定している仙台高裁平成22年4月22日・判例時報2086号42頁(携帯電話機やけど事件)で示された考え方に従うものと理解され、同仙台高裁判決とともに、製造物責任法の被害救済に大きな力となる判断と思われます(業者側から控訴あり)。

     

    仙台高裁平成22年4月22日に関する「弁護士メモ」↓

    http://www.kc-law.jp/myblog/2010/04/post-30.html

    【製造物責任・裁判】いすの脚部分の溶接不具合欠陥と、うつ病発症との間に因果関係を肯定し、販売製造業者の製造物責任法上の責任を認めた裁判例(福岡高裁H23・12・15)

    いすの脚部分に溶接不具合という欠陥が存し、これによって転倒し被害が生じた事案につき、福岡高裁は、被害者が本件事故を受け、「身動きがとれないために日常生活に不便が生じ、家族の面倒がみられないばかりか、逆に家族らに迷惑をかけているという負い目ないし悲しみ、健康が回復しないことに対する不安や焦り、経済的負担に対する不安、賠償交渉の不調に対する憤りに加えて、本件事故の精神的衝撃等が複合的に原因となって」うつ病が発症したものと認められると判示しました(後遺障害等級7級、6割の素因減額)(判例時報2164号61頁)。

    交通事故被害救済は、相当程度定型化されており、こうした定型化が被害救済に資する面もなくはないですが、他方、「事故前に、どんなにお金をつまれても事故被害を引き受けることはない」という被害者の当然の心情に配慮した加害者側(保険会社)の対応がなされているとは言い難い現実があります。

    そうした被害者の窮状を救うための裁判例として、参考例になると思われます。

     

    【製造物責任・裁判】シュレッダー爆発事故につき、業者に製造物責任法の賠償を命じた裁判例(東京地裁H24・11・26)

    東京地裁、は家庭用シュレッダーを使用していたところ、当該シュレッダーが破裂したため、右耳難聴等の被害が生じた事案につき、製造業者に対し、製造物責任法に基づき、約3900万円の賠償を命じました(平成24年11月26日・公刊物未掲載)。

    業者の反論に対し、「原因については十分に解明されていないものの、カッターカバー内に細断くずが滞留し続けた事実自体が本件シュレッダーの欠陥と評価せざるを得ない」として排斥しており、携帯電話やけど事件仙台高裁判決(平成22年4月22日・下記アドレスご参照で示された製造物責任法の趣旨から消費者側の主張・立証を適格に把握する判断と思われ、今後の被害救済に大きな力となる裁判例と思われます。

    仙台高裁判決 http://www.kc-law.jp/myblog/2010/04/post-30.html

    国民生活センターPL事案一覧 http://www.kokusen.go.jp/pl_l/index.html