【裁判・製造物】自転車の走行中の転倒事故の原因が、前輪サスペンション部分の分離にあるとして、輸入業者に対する製造物責任法に基づく損害賠償(1億5000万円余)が命ぜられた裁判例(東京地裁H25・3・25)
被害者は、「重度の四肢麻痺の後遺障害を有し、上肢は両肘がかろうじて屈曲できる程度、車いすの操作についても全て介助を要し、排尿、排便も自力では困難な状態にあって、最低限の身辺の清潔及び健康維持を持続的に行うことができない状態」という極めて重大な被害を受けている事案です。
東京地裁H25・3・25は、自転車の欠陥につき、「前記二のとおり、原告太郎は、本件自転車により走行中、そのサスペンションが分離し、前輪及びこれと連結しているアウターチューブが脱落したことによって、支持を失って転倒して受傷したものであるところ、以上によれば、原告太郎は、本件自転車を、その特性に従い、通常予想される使用形態で使用していたのであって、購入後の経過期間、保管やメンテナンスの状況を考慮しても、本件自転車は、走行中にサスペンションが分離したという点において、通常有すべき安全性を欠いていたといわざるを得ない。」「前記二にみたとおり、本件自転車のサスペンション内のスプリングが破断し、原告太郎の走行中にサスペンションが分離するに至った具体的、科学的機序の詳細については、証拠上、いまだ十分には解明されていないところではあるが、本件における製造物責任法にいう「製造物」とは自転車であって、上記アからウのとおりの本件自転車の特性、通常予想される使用形態、引渡時期からすれば、本件事故における転倒の原因が本件自転車の部品であるサスペンションの分離であることが主張立証されれば、製造物責任法に定める欠陥についての主張立証としては必要十分であり、これ以上に、サスペンションの分離に至る詳細な科学的機序、あるいは、サスペンションの構造上の不具合までを主張立証する必要はないと解するのが相当である。このように解しても、製造物責任法に定める「欠陥」の捉え方としては十分に具体的であって、欠陥の有無についての攻撃防御を尽くすことは可能であり、また、製造業者等の行為規範としても具体性に欠けるところはないと考えられる。」として、製造物責任法の趣旨に鑑みた妥当な判断を示しています(過失相殺1割)。
かかる判断は、最高裁でも確定している仙台高裁平成22年4月22日・判例時報2086号42頁(携帯電話機やけど事件)で示された考え方に従うものと理解され、同仙台高裁判決とともに、製造物責任法の被害救済に大きな力となる判断と思われます(業者側から控訴あり)。
仙台高裁平成22年4月22日に関する「弁護士メモ」↓
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