弁護士メモ|千葉晃平のひとこと
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  • 【裁判・学校】高校において日本拳法部の新入部員が上級者との対戦形式の練習中に上級者に倒され重傷をおった事案について、顧問の指導に安全配慮義務違反を認めた裁判例(大阪地裁H29・2・15)

    判例時報2352号74頁に掲載されています。

    最高裁平成9年9月4日(集民185号63頁)、最高裁平成18年3月13日(集民219号703頁)の規範を引用し、判断したものです(確定しています)。

     

    被害救済はもとより、部活動における学校側の注意義務内容の把握にも参考となるものです。

    【裁判・行政】全国学力調査に関する文書非開示処分を取り消した事例(横浜地裁H28・10・12)

    横浜地裁平成28年10月12日判決(判例地方自治428号70頁)は、全国学力・学習状況調査における市の小中学校全体の平均正答率の情報公開請求について、条例の定める非公開情報に該当しないとして、行政の非公開決定を取り消しました(確定)。

     

    一般的な情報公開請求に関する判断のみではなく、学校教育現場における取扱いとして参考になる判断と思われます。

    【裁判・行政】公立小学校教員採用試験に不正な加点操作があった事案について、採用取消処分について結論が分かれた2つの高裁判決(①取消処分有効・福岡高裁H29・6・5、②取消処分を取消・福岡高裁H28・9・5)

    いずれも判例時報2352号3頁以下に掲載されています。

    結論が異なっている明確な違いを見出すことは難しい面もありますが、結論として採用が有効とされた②の事案は受験者が不正加点の年度後の試験も受け続け合格していること、①の事案は受験者(合格者)を指導した者が不正加点に関与しているとも把握されることあたりに相違があるようです。

    最高裁の判断が注目されますが、裁判の難しさを示す例でもあり、参考になると思われます。

    【裁判・労働・学校】私立高校における年度途中のクラス担任外しについて、不当労働行為(支配介入)にあたるとして、労働委員会の救済命令を維持した裁判例(東京地裁H28・6・29)

    東京地裁平成28年6月29日判決(労働判例1150号33頁)は、学校側が生徒とのトラブルを理由に年度途中クラス担当を外した行為につき、「本件解任は、教員の重要な業務であるクラス担任としての職務を剥奪するものであり、クラス担任の年度途中での変更が異例の措置であり、教員としての不適格性を推知させるものである上、本件解任は、前記認定のとおり、必要性及び合理性を欠く措置であって、その決定に当たってD1の弁解の聴取などの相当な手続を経ていないことからすると、本件解任によってD1は職務上、精神上の不利益を被るものといえる。」として、私立高校側の不当労働行為を認定しました。

     

    本件は不当労働行為の場面ですが、現場教員におけるクラス担任の重要性や、これを年度途中に外すことの対外的意味・効果等も踏まえた判断で、教員に対する違法・不当な取扱いに対する私法上の救済にも参考になるものと思われます。

    【裁判・学校】学校外のいじめについて、加害少年側と市に対し、1億4600万円を超える損害賠償を命じた裁判例(さいたま地裁川越支部H28・12・22)

    被害者の方の被害状況等からすれば賠償額は法的判断としては通常のものと思われますが、どのような金銭賠償がなされても被害者や関係者の方に被害前の状況が戻るものではないですし、賠償額にとらわれることなく、被害事案の本質に立ち帰った学校現場での取り組みも求められているものと感じられます(判例時報2338号61頁。控訴されています)。

    【裁判・学校】県立高校男性生徒の自殺について、同級生のいじめ行為と教師らの安全配慮義務違反、高校教師の遺族への配慮を欠く発言の違法性を認め、損害賠償を命じた裁判例(神戸地裁H28・3・30)

    判例時報2338号24頁に掲載されています。

    神戸地裁平成28年3月30日判決は、加害者側の自殺に対する予見可能性を否定しており、賠償額の低額さ(数十万円)もあり、評価は分かれるところかと思われ、客観的因果関係は認めていること、学校側の遺族に対する対応への違法性を認めていることなど、本件のみならず被害救済につながる判断と思われます(確定しています)。

    【裁判・行政・労働】公立学校教員に対する懲戒免職処分・退職金不支給決定を違法として取り消した裁判例(札幌高裁H28・11・18)

    札幌高裁平成28年11月18日判決(判例地方自治418号50頁)は、懲戒処分等の対象事実である非違行為が音楽ソフトの無断複製とインターネットのオークションサイトに出品し30万円の利益を得たということを基礎に、対象者のこれまでの勤務状況が良好だったこと、真摯な反省等のほか、免職処分が教員の地位を失わせるという重大な結果を招くことも踏まえ、「本件免職処分は、社会観念上著しく妥当性を欠き、処分行政庁がその裁量権の範囲を逸脱したものというべきである。」として、懲戒免職処分・退職金不支給決定を違法として取り消しました。

     

    地裁は処分を有効としていたものですが、非違行為の内容からすれば高裁の判断が妥当と思われ、地裁判断との相違も含め、実務上、参考になるものです。

    【裁判・学校】いわゆる進学校である私立小学校の6年生担任教諭につき、最も適切な受験指導を行うべき義務を否定した裁判例(東京地裁H28・3・8)

    東京地裁平成28年3月8日判決(判例時報2296号112頁)は、中学校までは義務教育であること等を指摘し、受験を必要とするか否かは児童及び保護者のみが決定すべき事項等とし、保護者からの請求を認めませんでした(確定)。なお、学校側から保護者側への不当訴訟を理由とする訴訟(反訴)も排斥されています。

     

    事案の特性も含め、今後の参考になろうかと思われます。

    【大川小学校判決】仙台地裁平成28年10月26日判決が裁判所HPに掲載されています。

    判決後も、大川小学校には県外ナンバーの大型バスや多数の自動車(人々)が訪れていました。

    テレビ・新聞にあらわれるものだけではない事実等にも接していくことも必要と思われます。


    裁判所HP  http://www.courts.go.jp/app/hanrei_jp/detail4?id=86266

    【裁判・学校】県立高校の体育祭で行われた騎馬戦において、落下し重度の身体障害を負うに至った事案について、学校側の安全配慮義務違背があるとして県に金2億円超の国家賠償義務を認めた裁判例(福岡地裁H27・3・3)

    学校事故に関しては相当数の裁判例が蓄積されています。本裁判例の解説でも、西埜章「国家賠償法コンメンタール」勁草書房2012年・511頁以下、南川和宣「学校事故と国家賠償 新法律学の争点シリーズ八・行政法の争点」有斐閣2014年・152~153頁、塩野宏「行政法Ⅱ〔五版補訂版〕」有斐閣2013年・354頁などに裁判例・理論的問題点の文献があげられています。

    被害に遭われた方の救済を第一に、こうした被害が教育現場の活動をせばめる方向となるものではなく、従前の慣例にとらわれず騎馬戦廃止なども含め積極的な被害防止策の構築とそれを前提とした新しい活動の開始など教育活動のよりよい方向へ役立てられるべきものと思われます。