弁護士メモ|千葉晃平のひとこと
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  • 【裁判・民事】75歳の女性客がショッピングセンターのアイスクリーム売場前で足を滑らせて転倒した事故につき、ショッピングセンター運営会社の不法行為責任が認められた事案(岡山地裁H25・3・14)
  • 【裁判・民事】75歳の女性客がショッピングセンターのアイスクリーム売場前で足を滑らせて転倒した事故につき、ショッピングセンター運営会社の不法行為責任が認められた事案(岡山地裁H25・3・14)

    岡山地裁は、ショッピングセンターの義務内容につき、「本件店舗のようなショッピングセンターは、年齢、性別等が異なる不特定多数の顧客に店側の用意した場所を提供し、その場所で顧客に商品を選択、購入させて利益を上げることを目的としているのであるから、不特定多数の者を呼び寄せて社会的接触に入った当事者間の信義則上の義務として、不特定多数の者の日常あり得べき履物、行動等、例えば、買い物袋を載せたショッピングカートを押しながら歩行するなどは当然の前提として、その安全を図る義務があるというべきである。」として、本件においては、「これを本件についてみるに、前記認定事実によれば、本件事故当日は、本件売場において、「○○の日」として一部のアイスクリームが値引きされて販売されており、また、同日はハロウィンでもあったことから、多数の客が集まり、本件事故当時も、約20名の客が行列をつくっていたこと、本件売場の飲食スペースは、机が数個、椅子が数脚存在するだけであったことが認められ、これらの事情に本件売場で取り扱うアイスクリームという商品の特性をも併せ考慮すると、本件売場でアイスクリームを購入した顧客が本件売場付近の通路上でこれを食べ歩くなどし、その際に床面にアイスクリームの一部を落とし、これにより上記通路の床面が滑りやすくなることがあることは容易に予想されるところである。そうすると、本件店舗を運営する被告としては、顧客に対する信義則に基づく安全管理上の義務として、少なくとも多数の顧客が本件売場を訪れることが予想される「○○の日」については、本件売場付近に十分な飲食スペースを設けた上で顧客に対しそこで飲食をするよう誘導したり、外部の清掃業者に対する清掃の委託を閉店時間まで延長したり被告の従業員による本件売場周辺の巡回を強化したりするなどして、本件売場付近の通路の床面にアイスクリームが落下した状況が生じないようにすべき義務を負っていたというべきである。しかるに、被告が、これらの義務を尽くしていないことは明らかであり、これにより、本件売場付近の通路の床面にアイスクリームが落下した状況を生じさせ、本件事故が発生したのであるから、被告は、不法行為に基づき本件事故により生じた損害を賠償する責任がある。」と判示し、金862万円余の賠償を命じました(賠償額過失相殺2割。確定しています)(判例時報2196号99頁)。

    ショッピングセンターの増加に伴い事故も増加しており、実務上、参考となる事例と思われます。