弁護士メモ|千葉晃平のひとこと
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  • 【製造物責任・裁判】いすの脚部分の溶接不具合欠陥と、うつ病発症との間に因果関係を肯定し、販売製造業者の製造物責任法上の責任を認めた裁判例(福岡高裁H23・12・15)
  • 【製造物責任・裁判】いすの脚部分の溶接不具合欠陥と、うつ病発症との間に因果関係を肯定し、販売製造業者の製造物責任法上の責任を認めた裁判例(福岡高裁H23・12・15)

    いすの脚部分に溶接不具合という欠陥が存し、これによって転倒し被害が生じた事案につき、福岡高裁は、被害者が本件事故を受け、「身動きがとれないために日常生活に不便が生じ、家族の面倒がみられないばかりか、逆に家族らに迷惑をかけているという負い目ないし悲しみ、健康が回復しないことに対する不安や焦り、経済的負担に対する不安、賠償交渉の不調に対する憤りに加えて、本件事故の精神的衝撃等が複合的に原因となって」うつ病が発症したものと認められると判示しました(後遺障害等級7級、6割の素因減額)(判例時報2164号61頁)。

    交通事故被害救済は、相当程度定型化されており、こうした定型化が被害救済に資する面もなくはないですが、他方、「事故前に、どんなにお金をつまれても事故被害を引き受けることはない」という被害者の当然の心情に配慮した加害者側(保険会社)の対応がなされているとは言い難い現実があります。

    そうした被害者の窮状を救うための裁判例として、参考例になると思われます。