【裁判・労働刑事】荷物搬送用のエレベーターがカゴ到着前にドアが開く故障状態を放置し、その結果、従業員が2階から落下し、エレベーターのカゴに足切断され失血死した労災事故につき、労働安全法違反・業務上過失致傷罪として有罪とされた事案(神戸地裁H25・4・11)
判決文は裁判所HPに掲載されています。
http://www.courts.go.jp/app/files/hanrei_jp/579/083579_hanrei.pdf
本件エレベーターは、「本件エレベーターは、設置後数年が経過した頃から種々の不具合が出現し始めた。不具合が発覚した場合、被告人Cら、第3工場の従業員が被告人Bに報告し、必要に応じて修理を求めるなどしていた。被告人Bは、修理業者を呼んで修理を行わせたこともあったが、一部の不具合については放置し、十分な修理がされないまま利用が続けられていた。
平成21年2月当時、例えば、1階の外扉については、東西(工場外側及び内側)の扉とも、搬器が1階にないのに開き、また、外扉が開いていても搬器が動く状態であった。2階の外扉についても、搬器が2階にないのに開く不具合が年に数回程度発生していた。2階の外扉についても、搬器が2階にないのに開く不具合が年に数回程度発生していた。」という状況にあったものです。
その上で、本件事故は、「平成21年2月25日午後1時1分頃、第3工場2階の製造ラインで業務を行っていた従業員のF(以下「被害者」という。)は、段ボール詰めされた製品を1階に運び降ろすため、通常の作業手順どおり、段ボール箱15箱をパレットに載せた上、それをハンドリフトを使用して本件エレベーター2階出入口の前室付近まで運んだ。そのとき、本件エレベーターの搬器は1階に停止しており、本来であれば被害者が2階外扉を開けようとしてもドアロックが掛かるべきところ、何らかの理由でドアロックが機能せず、被害者によって本件エレベーターの2階外扉が開けられた。被害者は、搬器が2階に停止していないことに気付かないまま、ハンドリフトを押し込んだため、ハンドリフトは段ボール箱を載せたパレットごと昇降路内に突入した(以下、「本件突入事故」という。)。その後、具体的な経過は不明であるが、被害者は本件エレベーターの2階出入口から昇降路内に転落し、1階に停止していた搬器の天井板の上面に落下した。同日午後1時14分頃、被告人Cは、被害者が昇降路内に転落している事実に気付かず、本件エレベーターを作動させて搬器を1階から上昇させた。その結果、被害者は、搬器天井板の上面東側から落下し、上昇する搬器と昇降路壁面の間に挟み込まれて左下腿部を離断して失血死するに至った(以下、本件突入事故後、被害者が昇降路内に転落し、さらに被告人Cが搬器を上昇させたことにより被害者が死亡するまでの経過全体を「本件事故」という。)。」との内容です。
荷物搬送用エレベーターでの事故は多発しており、同種案件はもとより、労災事件において刑事責任を問われるケースが少ないなか、刑事責任を負うべき違法レベルの把握にも、参考になるものと思われます。
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