【裁判・消費者】消費者契約法12条1項・2項にいう「勧誘」について、限定的な行政解釈を否定し、不特定多数の消費者に向けられたものであっても、「勧誘」該当可能性を認めた最高裁判例(H29・1・24)
最高裁平成29年1月24日(金融商事判例1510号30頁)は、「クロレラには免疫力を整え細胞の働きを活発にするなどの効用がある旨の記載や、クロレラを摂取することにより高血圧、腰痛、糖尿病等の様々な疾病が快復した旨の体験談などの記載がある本件チラシ」について、「原審は、法12条1項及び2項にいう「勧誘」には不特定多数の消費者に向けて行う働きかけは含まれないところ、本件チラシの配布は新聞を購読する不特定多数の消費者に向けて行う働きかけであるから上記の「勧誘」に当たるとは認められないと判断して、上告人の上記各項に基づく請求を棄却した。」ことについて、「原審の上記判断は是認することができない。その理由は、次のとおりである。」として、「法は、消費者と事業者との間の情報の質及び量並びに交渉力の格差に鑑み、消費者の利益の擁護を図ること等を目的として(1条)、事業者等が消費者契約の締結について勧誘をするに際し、重要事項について事実と異なることを告げるなど消費者の意思形成に不当な影響を与える一定の行為をしたことにより、消費者が誤認するなどして消費者契約の申込み又は承諾の意思表示をした場合には、当該消費者はこれを取り消すことができることとしている(4条1項から3項まで、5条)。そして、法は、消費者の被害の発生又は拡大を防止するため、事業者等が消費者契約の締結について勧誘をするに際し、上記行為を現に行い又は行うおそれがあるなどの一定の要件を満たす場合には、適格消費者団体が事業者等に対し上記行為の差止め等を求めることができることとしている(12条1項及び2項)。」「ところで、上記各規定にいう「勧誘」について法に定義規定は置かれていないところ、例えば、事業者が、その記載内容全体から判断して消費者が当該事業者の商品等の内容や取引条件その他これらの取引に関する事項を具体的に認識し得るような新聞広告により不特定多数の消費者に向けて働きかけを行うときは、当該働きかけが個別の消費者の意思形成に直接影響を与えることもあり得るから、事業者等が不特定多数の消費者に向けて働きかけを行う場合を上記各規定にいう「勧誘」に当たらないとしてその適用対象から一律に除外することは、上記の法の趣旨目的に照らし相当とはいい難い。」「したがって、事業者等による働きかけが不特定多数の消費者に向けられたものであったとしても、そのことから直ちにその働きかけが法12条1項及び2項にいう「勧誘」に当たらないということはできないというべきである。」と判示しました。
原審(大阪高裁平成28年2月25日・金融商事判例1490号34頁)は、従前の行政解釈に従ったものでしたが、最高裁はこれを否定し、実質上、チラシも消費者契約法上の「勧誘」にあたるとしたもので、実務上、他の勧誘行為の理解・解釈においても消費者被害救済のみちを拡げる極めて重要な判断です。
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