弁護士メモ|千葉晃平のひとこと
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  • 【裁判・金融】銀行の定期預金を保有する顧客に対する償還条件付き投資信託の購入の勧誘行為が、適合性原則及び説明義務に違反するとして、過失相殺なき全額賠償が命ぜられた裁判例(大阪地裁H25・2・20)
  • 【裁判・金融】銀行の定期預金を保有する顧客に対する償還条件付き投資信託の購入の勧誘行為が、適合性原則及び説明義務に違反するとして、過失相殺なき全額賠償が命ぜられた裁判例(大阪地裁H25・2・20)

    被害者の方は、「昭和5年に生まれ、第二次世界大戦中に国民学校高等科を卒業後、実家の農業を手伝い、終戦後は、宿泊施設で仲居として働いた。原告は、昭和30年に〈略〉職員であった亡夫と結婚した後は専業主婦であったが、昭和42年頃から、自宅近くの工場で化粧品のケースなどを作る作業に従事し、平成2年に定年退職した。」「原告は、以後無職であり、本件取引当時も無職であった。「本件取引の当時、77歳であり、亡夫から相続した自宅で一人暮らしをしていた。」「原告の収入は、年間247万1900円程度の年金(老齢基礎厚生年金、遺族厚生年金、〈略〉共済)であった。」「原告が本件商品購入時に解約した本件定期預金は、亡夫が被告に預け入れた1000万円の定期預金とその利息及び原告が被告に預け入れた1000万円の定期預金とその利息を合わせたものであった。」とされる方でした。大阪地裁は、かかる属性等を基礎に、「以上によれば、乙山及び丙川が、原告に対して、安定した資産であり原告の保有する金融資産の7割以上を占めていた本件定期預金を解約して、その解約金を原資として本件商品を購入するよう勧めた一連の勧誘行為は、原告の実情と意向に反する明らかに過大な危険を伴う取引を勧誘したものといえる。したがって、乙山及び丙川の上記勧誘行為は、適合性の原則から著しく逸脱した違法な行為であって、原告に対する不法行為に当たると認められる。」「本件商品の購入を勧誘した際、丙川や乙山が原告に対して、本件商品の内容等について本件パンフレットを示した上で一応の説明を行ったとは認められるが、本件パンフレットの記載内容及び原告の年齢、経歴、難聴であったこと並びに被告従業員らの説明に対する原告の対応等に照らせば、丙川及び乙山は、原告において本件商品の内容及びリスクを理解するのに十分な説明を原告に対して行わなかったと推認できる。したがって、乙山及び丙川の本件取引に関する勧誘行為には、説明義務違反の違法があったというべきである。」と判示し、過失相殺することなく銀行側に損害全額の賠償を命じました(判例時報2195号78頁。本裁判例は確定しています)。

    銀行を勧誘者とする投資勧誘被害は多発しており、被害救済に大きな力となる事案と思われます。