弁護士メモ|千葉晃平のひとこと
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  • 【裁判・行政】選挙管理委員会の月額報酬を定める条例の規定が、殆ど職務遂行しなかった者に対しても一律全額支給となっている限りにおいて無効であるとされた事案(東京地裁H25・10・16)
  • 【裁判・行政】選挙管理委員会の月額報酬を定める条例の規定が、殆ど職務遂行しなかった者に対しても一律全額支給となっている限りにおいて無効であるとされた事案(東京地裁H25・10・16)

    いわゆる非常勤行政委員の月額報酬問題については、業務実態にあわない高額報酬などが問題となり多数の住民訴訟が提起され違法判断が占めされてきましたが、最高裁平成23年12月15日判決(判例時報2162号45頁)後は住民側の主張・請求を結論としては認めない判断が続きましたが、東京地裁平成25年10月16日(判例時報2218号10頁)は、前記最高裁の規範を前提に、「前記アに述べたところに照らし、杉並区選挙管理委員の報酬の支給の在り方として月額報酬制を採用した本件条例の規定が直ちに地方自治法203条の2第2項の規定に違反するとはいえないとしても、同項の規定は、その本文に規定する内容から明らかなとおり、非常勤職員の報酬について、いわゆる生活給としての要素を含まず、飽くまで職務の遂行への対価として支給されるものであることを前提とするものと解されるところ、本件条例4条2号は、月額報酬は、これを受ける者に対し、その月の25日から末日までに支給する旨を定めており、これを含む本件条例の規定によれば、杉並区選挙管理委員がその職にあった特定の月の全て又はその大部分の日において疾病等のために職務を遂行することができなかった場合にも、当該月分として月額をもって定められた報酬の全額が支給されることになるのであって、本件にみられるように、上記のような場合を含め、その勤務の態様等を格別考慮することなく、一律に上記のように報酬の支給をするものとすることについては、その全額が当然に職務の遂行への対価として支給されるものと解することは困難であり、A元委員について、本件全証拠をもっても、これと異なって解すべき事情は格別認められない。」「以上に述べたところによれば、杉並区選挙管理委員に対する月額報酬の支給を本件条例の上記の規定によるものとすることについては、本件期間中のA元委員におけるような場合を含めて一律に月額報酬の全額を支給するものとする限りにおいて、地方自治法203条の2第2項の規定の趣旨に照らした合理性の観点から議会の裁量権の範囲を超えるものとして、同規定に違反し、無効であるというのが相当である。」と判断し、金140万円ほど(月額報酬24万2000円の6か月分)の返還を命じました。

     

    本件は控訴されているようですが、前記最高裁判決後も、非常勤行政委員の月額報酬問題は、看過されるべき問題ではないことを明らかするもので、重要な意義を有するものと思われます。