【裁判・行政】市の斎場建設のための土地取得・補償金の支払いについて、市長の裁量逸脱濫用があるとして、不法行為責任(賠償額2億4941万超)を認めた高裁判例(名古屋高裁H26・6・6)
請求者(被控訴人)は「市」で、相手方(控訴人)は「当時の市長」です。
名古屋高裁平成26年6月6日(判例時報2233号116頁)は、「控訴人は,公共団体の長による売買代金額の決定が裁量権の範囲の逸脱又は濫用に当たるか否かの判断資料として,代金額と適正価格との比較に重きを置くことは,公共団体の長をして行政目的の遂行に消極的ならしめ,行政の迅速,円満な遂行を阻害するという弊害を招くので,相当ではないと主張する。しかし,上述したとおり,本件では,代金額が正常な取引価格の上限とすべき価格より高額であることのみではなく,かかる代金額の決定の経緯,すなわち,移転先での事業の継続に必要な費用の捻出という本件損失補償基準によれば正当化されない牧場主の意向に沿うべく,高い価格を算出するために鑑定を依頼し,正常な取引価格から乖離した評価額に依拠して代金額を決定したという経緯に加え,そもそも,正常な取引価格から乖離した高額の支出をしてまで,かつ,長期間の明渡猶予期間を本件協定書で約束してまで,その取得の条件である保安林の指定の解除に相当の困難と期間を伴うことが当初から予想された本件牧場地を,緊急性ある(と控訴人が主張する)本件斎場の建設用地として取得すべきであったかに大いに疑問があることを踏まえて,裁量権の逸脱又は濫用の有無を判断しているのであるから,控訴人の上記主張は採用できない。」と判示しました。
市長の裁量違反の事案として理論的・実務的に参考となるものです。
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