弁護士メモ|千葉晃平のひとこと
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  • 【裁判・民事】仲裁法18条4項の「自己の公正性又は独立性に疑いを生じさせるおそれのある」に関する解釈・要件を判示した最高裁判例(H29・12・12)
  • 【裁判・民事】仲裁法18条4項の「自己の公正性又は独立性に疑いを生じさせるおそれのある」に関する解釈・要件を判示した最高裁判例(H29・12・12)

    最高裁平成29年12月12日(最高裁HP、金融・商事判例1533号28頁)は、「仲裁人は、仲裁手続の進行中、当事者に対し、法18条4項の事実の全部を遅滞なく開示すべき義務を負う(法18条4項)。その趣旨は、仲裁人に、忌避の事由である「仲裁人の公正性又は独立性を疑うに足りる相当な理由」(同条1項2号)に当たる事実よりも広く事実を開示させて、当事者が忌避の申立てを的確に行うことができるようにすることにより、仲裁人の忌避の制度の実効性を担保しようとしたことにあると解される。仲裁人は、法18条4項の事実が「既に開示したもの」に当たれば、当該事実につき改めて開示すべき義務を負わないが(同条4項括弧書)、仲裁人が当事者に対して法18条4項の事実が生ずる可能性があることを抽象的に述べたというだけで上記の「既に開示した」ものとして扱われるとすれば、当事者が具体的な事実に基づいて忌避の申立てを的確に行うことができなくなり、仲裁人の忌避の制度の実効性を担保しようとした同項の趣旨が没却されかねず、相当ではない。
    したがって、仲裁人が当事者に対して法18条4項の事実が生ずる可能性があることを抽象的に述べたことは、同項にいう「既に開示した」ことには当たらないと解するのが相当である。」「仲裁人が、当事者に対して法18条4項の事実を開示しなかったことについて、同項所定の開示すべき義務に違反したというためには、仲裁手続が終了するまでの間に、仲裁人が当該事実を認識していたか、仲裁人が合理的な範囲の調査を行うことによって当該事実が通常判明し得たことが必要であると解するのが相当である。」と判示しました。

     

    仲裁法18条4項につき、関係者の忌避申立の機会を確保するという趣旨から解釈・要件を明確にしたもので、仲裁のみならず裁判外紛争手続などにも参考になる重要な判例と思われます。

     

     

    (忌避の原因等)

    第十八条
     当事者は、仲裁人に次に掲げる事由があるときは、当該仲裁人を忌避することができる。

     当事者の合意により定められた仲裁人の要件を具備しないとき。

     仲裁人の公正性又は独立性を疑うに足りる相当な理由があるとき。

     仲裁人を選任し、又は当該仲裁人の選任について推薦その他これに類する関与をした当事者は、当該選任後に知った事由を忌避の原因とする場合に限り、当該仲裁人を忌避することができる。

     仲裁人への就任の依頼を受けてその交渉に応じようとする者は、当該依頼をした者に対し、自己の公正性又は独立性に疑いを生じさせるおそれのある事実の全部を開示しなければならない。

     仲裁人は、仲裁手続の進行中、当事者に対し、自己の公正性又は独立性に疑いを生じさせるおそれのある事実(既に開示したものを除く。)の全部を遅滞なく開示しなければならない。