弁護士メモ|千葉晃平のひとこと
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  • 【裁判・民事】民事訴訟における名誉棄損表現を含む内容の陳述書の作成・提出行為を違法とする損害賠償請求を排斥した裁判例(大阪地裁平成30年1月11日)
  • 【裁判・民事】民事訴訟における名誉棄損表現を含む内容の陳述書の作成・提出行為を違法とする損害賠償請求を排斥した裁判例(大阪地裁平成30年1月11日)

    判例タイムズ1455号211頁に掲載されています。

    大阪地裁は次のように述べており、争いある訴訟では、結果的には当事者の一方が事実に反する主張を行っていたとならざるを得ない側面もあることからすれば、穏当な判断と思われます。

     

    「民事訴訟における陳述書が主尋問を一部代替又は補完する機能を有していることからすれば、その内容の真実性が要請されるものであることは疑いなく、作成者があえて内容が虚偽の陳述書を作成して実態の解明を阻害することが許されないことは、いうまでもない。しかしながら、陳述書が、訴訟を念頭に置いて作成されるものであって、作成者の法廷での供述内容を事前に相手方に明らかにする証拠開示機能(反対尋問権保障機能)を有していることを踏まえると、その真実性の要請のみを過度に重視すべきではない。すなわち、仮に、訴訟において書証として提出された陳述書に当事者等の社会的評価を低下させる事実や当事者等の名誉感情を害する事実が記載されている場合に、同事実が裁判所に認定されなかったときや同事実と相容れない事実が裁判所によって認定されたときに、当該陳述書を作成し訴訟において書証として提出する行為が直ちに違法と評価されるとすれば、陳述書の作成者は自己の認識にかかわらず裁判所によって認定されることが確実と思われる事実しか記載しなくなるため、陳述書の前記各機能が失われるとともに当事者の立証活動に大きな萎縮的効果が生じ、ひいては実態の解明を困難にするなど、民事訴訟の運営に支障を来す事態が容易に生じ得るといえる。」「そこで、当事者等の社会的評価を低下させる事実や当事者等の名誉感情を害する事実が記載された陳述書を作成し訴訟において書証として提出する行為は、作成者が陳述書記載の当該事実の内容が虚偽であることを認識しつつあえてこれを記載して行った場合に限り、違法性を帯びるというべきである。」