弁護士メモ|千葉晃平のひとこと
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  • 自衛隊のイラク派兵にかかる国民監視訴訟、住民側控訴へ(H24・4・6)
  • 自衛隊のイラク派兵にかかる国民監視訴訟、住民側控訴へ(H24・4・6)

    仙台地裁平成24年3月26日判決は、国・自衛隊の監視行為の違法性を認める点で重要な意義を有する一方、その他の被害者、差止請求を認めなかったこと等の問題もあり、4月6日、住民側から控訴しました。現時点で国側の控訴の有無は不明です。

    仙台地裁平成24年3月26日判決が裁判所HPにアップされました↓・

    http://www.courts.go.jp/search/jhsp0030?hanreiid=82156&hanreiKbn=04

    判決に対する原告側声明等は次のページにアップしてあります↓。

    http://www.kc-law.jp/cgi-bin/mt/mt.cgi?__mode=view&_type=entry&id=170&blog_id=2

     

    4月5日、原告側が国・防衛省への要請も行っています。その要請文を貼り付けます。

     

    要 請 書

    防衛大臣 田中 直紀殿

    2012年4月5日

    自衛隊の国民監視差止訴訟を支援するみやぎの会

    代  表   伊藤 博義

    自衛隊イラク派兵差止訴訟全国弁護団連絡会議 

                              事務局長   佐藤 博文

     

     陸上自衛隊情報保全隊(当時)による監視の差止および損害賠償を求めていた訴訟で、仙台地方裁判所は3月26日、違法な情報収集が行われたことを認定し、国に原告5名に対する損害賠償の支払いを命じました。

     私たちは、自衛隊のすべての部隊が憲法と法令を遵守し人権を侵害しないことを強く求める立場に立って、この訴訟を支援してきたものですが、判決を踏まえて以下の事項について要請いたします。

     

    1、内部文書の原本を公表し、監視活動の実態について説明すること

    本裁判において、国は、日本共産党が2007年6月6日に公表した内部文書の成立について、原告側の再三の求めにも応じず認否しないという不誠実な訴訟遂行に終始しました。これに対し、仙台地裁は、内部文書について、「真の原本が存在し、かつ、これらが情報保全隊によって作成されたことが認められる」と断じました。また、「各原告がした活動等の状況等にとどまらず、これら各原告の氏名、職業に加え、所属政党等の思想信条に直結する個人情報を収集している」と、情報保全隊が国民を監視していることを認定しました。

    判決のあと各報道機関も、情報保全隊が、主権者である国民を敵対する存在とみなしていること、監視活動に関する説明を拒み続けていることを厳しく批判しています。

    私たちは、これらの問題点は文民統制によりただす必要があると考えるものです。

    そこで貴職に対して、仙台地裁が存在していると認定した内部文書の「真の原本」を公開すること、「各原告の氏名、職業に加え、所属政党等の思想信条に直結する個人情報」を情報保全隊がどのようにして収集したのか、また「情報収集等の目的、必要性等」について明らかにし説明するよう求めるものです。

     

    2、違法と認定された個人情報の収集を直ちにやめるよう情報保全隊に命じること

    仙台地裁は、監視の差止請求は却下しましたが、「行政上の目的、必要性その他の適法性を基礎付ける具体的な事由(換言すれば、上記各原告がこれを甘受すべき根拠となる具体的な事由)が存在」しない限り、国民の個人情報を収集し記録してはならないとし、「情報保全隊がした情報収集等は、違法とみるほかない」と断じました。

    法令順守の義務を負う国家公務員である情報保全隊員の行為を裁判所が違法と認定したことは、非常に重いものがあります。情報保全隊は、自衛隊に関する集会等だけではなく、マスコミの取材活動や年金問題に関する集会などあらゆる活動に対する情報収集を日本全国で行っています。情報保全隊の監視行為は、仙台地裁が認定した自己の個人情報をコントロールする権利すなわち人格権を侵害したのみならず、国民の表現活動に萎縮効果をもたらし表現の自由を侵害するのは明らかであり、また、思想の自由を侵害する行為でもあります。

    情報保全隊の監視行為・情報収集は全国で約900名もの隊員を投入し、膨大な予算を投じて行われています。裁判所が違法と断じた行為を、国が放置し、国民の税金で継続することは許されません。

    そこで貴職に対し、情報保全隊に、「氏名、職業、所属政党等の思想信条に直結する」国民の個人情報を収集し記録しないよう命じ、違法行為を直ちに停止する措置をとるよう求めるものです。

     

    3、損害賠償の支払いを命じられた原告5名に関して控訴をしないこと

     この裁判で情報保全隊は、文書の成立について認否を行わず「公務に関する秘密を明らかにすることになり、ひいては国の安全保障に影響を及ぼす」という逃げ口上で、監視活動に関する説明を避け続けてきました。そして、「市民は情報収集されているのを知らなかったのだから、表現の自由が萎縮することもありえない」とまで主張しました。この一連の不誠実な応訴態度は、法治国家の根幹たる裁判制度を愚弄するものであり「開き直りと言うほかない。誰のために自衛隊はあるのか」(「朝日新聞」3月30日付社説)などと厳しく指弾されています。

    情報保全隊は、国民に奉仕する行政機関の一員でありながら、主権者である国民の訴えに極めて不誠実な応対を繰り返してきており、私たちは違法と認定された行為については裁判所の判断を真摯に受けとめ改めるべきだと考えるものです。

    今回請求の認容された5名の原告以外にも、内部文書には個人名の記載されている国民は全国に100名以上おり、情報保全隊はこれらの者に対しても違法な監視行為を行っていたものであり、国民の被害は甚大です。

    そこで貴職に対し、個人情報の収集等の目的や必要性を説明できなかった5名の原告に対する損害賠償を命じた判決については、これを受け入れることを決断し、控訴をしないよう求めます。

     

    要請事項の第1項目と第2項目につきましては、文書にて30日以内にご回答くださいますよう要請いたします。

    以上