弁護士メモ|千葉晃平のひとこと
  • HOME
  • >
  • 労働
  • >
  • 【労働】採用面接にあたり、告知すれば採用されないと予測される事項について、自発的告知義務は存しないとする裁判例(東京地裁H24・1・27)
  • 【労働】採用面接にあたり、告知すれば採用されないと予測される事項について、自発的告知義務は存しないとする裁判例(東京地裁H24・1・27)

    事案は、大学の教授である原告が、勤務先大学に対し、以前の勤務先において、パワーハラ及びセクハラを行ったとして問題にされたことを告知しなかったことなどを理由に、解職(普通解雇)されたものです。

    東京地裁は、解職無効として地位確認・給与支払いを認め、この点も重要ですが、判示のなかで、次のように述べており、実務上も、重要な判断と思われます(労働判例1047号5頁)。

    採用を望む応募者が、採用面接に当たり、自己に不利益な事項は、質問を受けた場合でも、積極的に虚偽の事実を答えることにならない範囲で回答し、秘匿しておけないかと考えるのもまた当然であり、採用する側は、その可能性を踏まえて慎重な審査をすべきであるといわざるを得ない。大学専任教員は、公人であって、豊かな人間性や品行方正さも求められ、社会の厳しい批判に耐え得る高度の適格性が求められるとの被告の主張は首肯できるところではあるが、採用の時点で、応募者がこのような人格識見を有するかどうかを審査するのは、採用する側である。それが大学教授の採用であっても、本件のように、告知すれば採用されないことなどが予測される事項について,告知を求められたり、質問されたりしなくとも、雇用契約締結過程における信義則上の義務として、自発的に告知する法的義務があるとまでみることはできない。」