弁護士メモ|千葉晃平のひとこと
  • HOME
  • >
  • 裁判
  • >
  • 【裁判・未成年】16歳の少年が18日で642万を超えるキャバクラ飲食遊興した事案で、少年に「詐術」はなく、民法の未成年取消が認められ、また、キャバクラ接客契約自体の公序良俗違反を認めた裁判例(京都地裁H25・5・23)
  • 【裁判・未成年】16歳の少年が18日で642万を超えるキャバクラ飲食遊興した事案で、少年に「詐術」はなく、民法の未成年取消が認められ、また、キャバクラ接客契約自体の公序良俗違反を認めた裁判例(京都地裁H25・5・23)

    16歳の少年が同居中の養父のクレジットカードを盗み取り、キャバクラ等で多額の費消を行った事案です。訴訟ではキャバクラ関係の642万円2226円の支払義務の存否等が対象とされていますが、養父はキャバクラ以外の利用代金(ブランドバック代等160万円超)は支払っています。

     

    民法は、未成年者の法律行為について、法定代理人(両親など)の同意がなければ、取り消すことできるとして、未成年者の保護を図っていますが、例外的に、未成年者が詐術を用いて成年者であると信じさせた場合などは、取り消せないとしています(民法5条)。

     

    京都地裁平成25年5月23日判決(判例時報2199号52頁)は、「成年者かどうか疑わしい風貌の原告X2について,風俗営業店側から年齢確認がされたことが一度もないことも考慮するならば,本件各契約の未成年者取消しの可否を考える場合,健全な風俗を維持しようとする風営法の要請を犠牲にしてまで取引の安全の保護を優先すべき事情は何も見当たらないから,未成年者取消しを妨げる事情はない。未成年者取消しを許容すれば加盟店被告らに取引上の不利益が発生するかもしれないが,それは加盟店被告らにおいて甘受すべきものというほかない。」として未成年者取消を認め、また、「店側が,原告X2が未成年者であることを知りながら接客契約を締結しその履行を求めた,あるいは,原告X2が未成年者であることを疑うべき当然な状況があるのに敢えて年齢を確認しようともせず(故意と同視すべき程度に重大な過失に基づき)接客契約を締結しその履行を求めたという事情があるとすれば,本件各店が風俗営業店であることに照らし,その場合の接客契約は民法90条に抵触し無効と評価するのが相当である。」として公序良俗違反性も認めました。

     

    民法は、判断力・経済力等の観点から、法定代理人の同意なき未成年者の法律行為(契約)を取り消せることにして、未成年者が過大な不利益や負担を負うことのないよう保護を図っています。これは業者・成年者の側からみれば、未成年者であるか否かの慎重かつ厳格な確認が求められることを意味するものです。この点、上記判決は基本的に係る視点にたち未成年者保護を図ったものと思われますが、養父への一部支払い義務を認めている点は、未成年者取消しを認めた意義を実質的に一部後退させる面があるのではないか等、検討されるべき課題とも思われます。

     

    判決は確定しています。