
【裁判・民事】自衛隊情報保全隊による国民監視文書の存在・監視行為の違法性を認定し、損害賠償を命じた仙台高裁判決(H28・2・2)と原告側声明・当事者コメント
本日(2月2日(火)11時00分)に言い渡しがなされました。仙台高裁は自衛隊(国)の違法性を認定し、1名に賠償を命じました(原判決は5名でした)。
自衛隊の国民監視差止・賠償請求控訴審判決に対する声明
1 本日、仙台高等裁判所は、自衛隊の国民監視差止・賠償請求訴訟につき、原審原告91名中1名に対し、慰謝料の支払いを命ずる判決を言い渡しました。
2 2007年6月6日、陸上自衛隊情報保全隊の国民監視文書が公表されました。
同文書には、国民の街頭でのアピール行為等の自衛隊イラク派兵反対運動など個人・団体の幅広い行動が、「イラク自衛隊派遣に対する国内勢力の反対動向」「反自衛隊活動」として自衛隊によって監視され、個人名も含め詳細に記載されていました。
私たちは、自衛隊の上記監視活動は、国民の思想信条の自由・プライバシー権はもとより平和的生存権を侵害する重大な違憲・違法な行為であるとして、人権保障の最後の砦である裁判所へ、司法救済(差止請求・損害賠償)を求め、同年10月5日、提訴し、仙台地方裁判所は、2012年3月26日、原審被告の主張を排斥し、原審原告5名に対する違法行為・人格権侵害を認定し、慰謝料の支払いを命じました。私たちは、同判決で示された違法行為につき、自衛隊及び国(国会)に対し、自衛隊が何故本件監視行為に及んだのか、徹底した原因究明および防止策を求めてきました。
しかしながら、原審被告は、仙台地裁判決や私たちからの求めを無視するかの如く、控訴審においても不合理・不誠実な主張・立証を重ねる有様でした。
3 本日の仙台高裁判決は、仙台地裁に引き続き、自衛隊(国)の監視行為の違法性を明確に認定し、損害賠償を命じたものです。仙台高裁判決も、自衛隊(国)が頑なに作成の認否を拒否してきた本件内部文書が自衛隊(国)によって作成されたことを明確に認定した上、監視行為等の違法性判断基準について、情報収集行為の目的、必要性、態様、情報の管理方法、情報の私事性、秘匿性の程度、個人の属性、その他の事情を総合考慮する必要があるとし、自衛隊(国)の本件監視行為について違法性を認定し、損害賠償を命じたものです。
4 仙台高裁判決は、仙台地裁に引き続き高等裁判所においても違法判断を示し、自衛隊(国)の監視行為の違法性を認めたものであり、自衛隊(国)の情報収集活動に一定の制限を加え、原審原告らの憲法上の人格権(プライバシー権)を認めたものであり一定の評価をし得るものです。係る判断は、仙台高裁で元保全隊長らの証人尋問を実施するなどの実体的審理が図られたことによるものです。
しかしながら、原審で勝訴した4名はじめ多大な被害を受けた原審原告らの請求を棄却した点、差止請求を却下した点、憲法上の人権への理解が不十分である点、自衛隊の軍隊としての本質を捉えきれていない点、情報収集の必要性を認めてしまった点など不当な点があります。
5 私たちは今回の仙台高裁判決を受け、国民の人権活動が違憲・違法に抑圧されることない、平和で自由な社会の実現のため活動を続けていくものです。
2016年2月2日
自衛隊の国民監視差止訴訟原告団
自衛隊の国民監視差止訴訟弁護団
自衛隊の国民監視差止訴訟を支援するみやぎの会
〇 勝訴当事者コメント
自衛隊情報保全隊の私に対する情報収集・探索が違法だと繰返し認められた。当然の判決だと受け止めている。
しかし,これで良かったと安心はできない。私の情報をいったいこまで探索したのか,どんな情報を収集・保有しているのか,国
は全く説明していない。それが今後どのように利用されるかを考えと恐怖を感じる。
違法に集めた本名や職業の情報,その他違法に集めた情報がれば,直ちに削除して欲しい。また,こんな国民監視は直ちに
やめて欲しい。
他の原告の請求が認められなかったのはおかしい。憲兵がやっいたような情報収集・探索は全部違法だと言って,すべての原
告の請求を認めて欲しかった。
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