弁護士メモ|千葉晃平のひとこと
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  • 【裁判・労働】海外赴任中の病死に対する労災保険不支給決定を取り消した裁判例(東京高裁H28・4・27)
  • 【裁判・労働】海外赴任中の病死に対する労災保険不支給決定を取り消した裁判例(東京高裁H28・4・27)

    労災保険の適否について、「海外出張者」(適用有)か「海外派遣者」(適用無)かが争われた事案です。

    東京高裁平成28年4月28日判決(労働判例1146号46頁)は、「検討するに、前記のとおり、労災保険法の施行地内(国内)で行われる事業に使用される海外出張者か、それとも、同法施行地外(海外)で行われる事業に使用される海外派遣者であって、国内事業場の労働者とみなされるためには同法36条に基づく特別加入手続が必要である者かについては、単に労働の提供の場が海外にあるだけで、国内の事業場に所属して当該事業場の使用者の指揮に従って勤務しているのか、それとも、海外の事業場に所属して当該事業場の使用者の指揮に従って勤務しているのかという観点から、当該労働者の従事する労働の内容やこれについての指揮命令関係等の当該労働者の国外での勤務実態を踏まえ、どのような労働関係にあるかによって、総合的に判断されるべきものである。」と述べ、事実認定のうえ、「以上認定の事実によると、亡Bについては、単に労働の提供の場が海外にあるにすぎず、国内の事業場に所属し、当該事業場の使用者の指揮命令に従い勤務する労働者である海外出張者に当たるというべきであり、海外の事業場に所属して当該事業場の使用者の指揮に従って勤務する海外派遣者ではないというべきである。したがって、海外派遣者を対象とする特別加入手続がされていないことを理由に、亡Bを労災保険法上の保険給付の対象から除外することは相当ではない。」として不支給決定を是認した地裁判決及び不支給決定とそのものを取り消したものです(確定しています)。

     

    海外赴任がふえるなか労働者救済につながる判断と思われます。