弁護士メモ|千葉晃平のひとこと
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  • 【民事・霊感商法】浄霊等の儀式により多額の金員を支出されたことにつき、寺院関係者の共同不法行為責任・寺院の使用者責任が認められた事例(名古屋地裁H24・4・13判決)
  • 【民事・霊感商法】浄霊等の儀式により多額の金員を支出されたことにつき、寺院関係者の共同不法行為責任・寺院の使用者責任が認められた事例(名古屋地裁H24・4・13判決)

    いわゆる霊感商法被害の事例です。信教の自由との慎重な判断が求められる一方、信教・宗教に名をかりた悪質被害もあとをたちません。違法性判断基準として参考になると思われ、当該部分を、引用・アップいたします(判例時報2153号54頁)。

     

    一般に、宗教団体が、当該宗教団体の宗教的教義の実践として、信者等に対して、儀式等を受けるように勧誘したり、任意に寄附や献金をするよう求めること自体は、信教の自由の一様態としての宗教活動の自由として保障されなければならないものであって、これを殊更に制限したり、違法と評価することは厳に慎まなければならない。

     また、金員の出捐を伴う儀式等を受けることを勧誘するに際して、特定の宗教を信じる者が、当該宗教団体における教義等に基づく、科学的に証明し得ない様な事象、存在、因果関係等を理由とするような吉凶禍福を説き、儀式等を受けることによって、そうした吉凶禍福を一定程度有利に解決することができるなどと信者等に説明することについても、その説明内容がおよそ科学的に証明できないことなどを理由として、直ちに虚偽と断じ、あるいは違法と評価することもすべきではないし、予め信者等の境遇や悩み等を把握した上で、そうした悩み等を解決する手段として、金員の出捐を含む宗教的教義の具体的実践を勧誘することも、直ちに違法と評価されるものではない。
     しかしながら、上記のような行為が、信者等をいたずらに不安に陥れたり、畏怖させたりした上で、そのような心理状態につけ込んで行われ、社会一般的に信者等の自由な意思に基づくものとはいえないような態様で行われたものである場合や、信者等の社会的地位や資産状況等に照らして不相当な多額の金員を支出させるなど、社会的に考えて一般的に相当と認められる範囲を著しく逸脱するものである場合などには、そのような行為は、反社会的なものと評価され、公序良俗に反するものとして、違法なものになるといわざるを得ない。そして、そのような行為の違法性の有無は、常に一つ一つの行為ごとに判断されるべきものとはいえず、信者に対する一連の行為を全体として見た場合に、社会的に相当と認められる範囲を逸脱するといえる場合には、その全体をもって違法な行為ということもできるというべきである。」