【裁判・労働】非正規公務員の20回を超える再任用後の雇止めにつき、地方公共団体に対し、期待権侵害に基づく損害賠償(金150万円)を命じた裁判例(東京地裁H23・11・9)
原告の方としては、市との間の地位確認等を求められており、この点が認められなかったのは、従前からの司法判断の壁である「公務の任用関係は任命権者の行政行為」という理屈によるものであり、この点は大変残念ですが、裁判所が次の判断を示し、市に金150万円の損害賠償を命じたのは、非正規公務員の権利実現にむけて大きな力となるものと思われます。控訴審で基本的維持され、双方上告なく確定したようです。
東京地裁判決抜粋
「原告の担当業務は、レセプト点検という継続性があり恒常的なものであるところ、上記認定事実、特に、①原告が、21回という多数回にわたって繰り返し再任用され、任用継続期間の上限とされる5年をはるかに超える21年3か月の長期間にわたって被告のレセプト点検業務を継続して担当してきたこと、②任用の当初、原告は、被告の担当者からは、勤務成績が良好であれば任用が継続されていくのではないかという趣旨の、原告にとっては長期勤務を期待させる説明を受けていたこと、③原告は極めて高い評価を受ける職務成績を毎年積み上げていたこと、④被告は、原告の再任用に当たり、毎年委嘱状を交付したものの、任用期間が1年であることを改めて説明することもなく、原告について本件要綱に定められた雇用継続期間の5年を超える任用が継続し、また原告もそのことを認識していた状況にあったのに、かかる状況を長期間いわば放置し、積極的な是正措置を取ってこなかったことなどに照らすと、原告が、上記期間中一貫して委嘱期間を1年とする委嘱状を交付され、その任用期間自体については認識していたと思われることや、平成3年には任用継続期間の上限が5年であることを認識し、遅くとも平成16年に誓約書を提出するころには、自分にも本件要綱の適用があることを認識していたことなどの事情を考慮しても、原告が再任用を期待することが無理からぬものと見られる行為を被告が行ったという特別の事情があると認めるのが相当である。」
「このように、原告の任用継続に対する期待は法的保護に値するものというべきところ、以上の認定事実に照らすと、被告は、平成21年1月になって、突然に次年度以降原告の再任用を拒絶する旨表明したといわざるを得ないものであって、本件再委嘱拒否により、上記期待を違法に侵害したものと解するのが相当である。」
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