【裁判・時効】昭和62年(1987年)の国鉄分割・民営化の事案につき、消滅時効の成立・主張を認めずに、国鉄側の不法行為を認めた裁判例(東京地判H24・6・29)
本件はいわゆる国鉄分割・民営化に関する事案であり、国鉄が行った新会社(JR各社)への採用候補者名簿不記載基準の策定等が不法行為を構成する旨判示するものであり、係る判断もとても重要ですが、国鉄側の消滅時効の主張を認めなかった点でもとても重要な判断を示しています。
詳細は判決文にあたっていただくことになりますが(東京地裁平成24年6月29日・判例時報2187号95頁。なお時効136頁以下です)、「最高裁判決が言い渡された時点(平成11年12月17日時点)で加害者が国鉄であることを知ったと解する余地がないわけではない。」としながら、「しかしながら、前記イで説示したとおり、『損害及び加害者を知った』時点とは、被害者による損害賠償請求権の行使が事実上可能な状況にあることをその前提とする」と判示し、最高裁・裁判例でも見解が別れていたこと、紛争の本質からすれば当時原告らに本件請求を行わせるのは矛盾する面もあること等を指摘し、「採用候補者名簿不記載にかかる損害賠償請求権の消滅時効は。最大限遡ったとしても平成15年12月22日以降であるというべきである」として、国鉄側の消滅時効の主張を排斥したものです。
消滅時効の問題は被害者救済の大きな壁となることがありますが、本判決は、そうした不当な障害を取り除く重要な判断を示しているものと思われます。
なお、消滅時効・除斥期間の問題について、松本克美教授「新・時効と正義ー消滅時効・除斥期間論の新たな展開」(日本評論社)が、被害救済の実務にも大きな力となっています。
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