弁護士メモ|千葉晃平のひとこと
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  • 【裁判・学校】町立小学校の生徒の自殺につき、学校側に被害者の保護者に対する事故調査・結果報告義務が存するとした裁判例(札幌地裁H25・6・3)
  • 【裁判・学校】町立小学校の生徒の自殺につき、学校側に被害者の保護者に対する事故調査・結果報告義務が存するとした裁判例(札幌地裁H25・6・3)

    小学生の自殺という深刻な被害であり、必ずしも被害者ご遺族のお気持ちに沿う判断かは把握しかねるものではありますが、学校側に原因調査や報告義務を認めた点(地方公共団体の賠償責任も認めています)では、こうした被害において被害者・ご遺族の真の願いが真実究明・再発防止にあることが少なくない実態からみても、意味ある判断と思われます。

    判示部分(規範部分)は以下のとおりです。

     

    「在学中の児童が自殺し、それが学校生活上の問題に起因する疑いがある場合、当該児童の保護者がその原因を知りたいと思うのは当然のことであるが、保護者において、学校生活上の問題を調査することは困難である。他方、学校がその点を調査することは、学校が教育機関として他の児童の健全な成長やプライバシーについて配慮すべき立場にあり、その調査能力に一定の限界があることを考慮しても、保護者がこれを行う場合に比べてはるかに容易であり、その効果も期待できることは明らかである。
     学校設置者は、在学する児童の学校生活上の安全に配慮して、無事に学校生活を送ることができるように教育・指導をすべき立場にあるのであるから、児童の自殺が学校生活上の問題に起因する疑いがある場合、その原因を究明することは、健全な学校運営にとり必要な事柄である。したがって、このような場合、学校設置者は、他の児童の健全な成長やプライバシーに配慮した上、児童の自殺が学校生活に起因するのかどうかを解明可能な程度に適時に事実関係の調査をしてその原因を究明する一般的な義務を負うと理解できる。また、自殺した児童の保護者から、自殺の原因についての報告を求められた場合、学校設置者は、信義則上、在学契約に付随して、当該児童の保護者に対し、上記調査義務に基づいた結果を報告する義務を負うというべきである。」(判例時報2202号82頁以下。抜粋部分は101頁)。