弁護士メモ|千葉晃平のひとこと
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  • 【裁判・家族】公正証書遺言を遺言能力を欠き無効とした裁判例(東京高裁H25・8・28)
  • 【裁判・家族】公正証書遺言を遺言能力を欠き無効とした裁判例(東京高裁H25・8・28)

    死亡6日前に作成された公正証書遺言の有効性が争われた事案で、東京高裁平成25年8月28日判決(判例タイムズ1419号173頁)は、公正証書遺言を無効としました(確定)。若干前の判決ですが、公正証書遺言が無効とされる事案として、実務上参考になると思われます。以下、判示内容を抜粋します。

    「前記認定事実によれば、確かに、被相続人は、遺言する意思を有し、自己の遺産の配分等について、遅くとも平成22年1月ころより検討していたことが認められる。しかしながら、被相続人は、進行癌による疼痛緩和のため、同年2月末ごろから、慶應義塾大学病院より麻薬鎮痛薬を処方されるようになり、同年7月23日に同病院に入院した後は、せん妄状態と断定できるかどうかはともかく、上記の薬剤の影響と思われる傾眠傾向や精神症状が頻繁に見られるようになった。そして、本件遺言公正証書作成時の被相続人の状況も、公証人の問いかけ等に受動的に反応するだけであり、公証人の案文読み上げ中に目を閉じてしまったりしたほか、自分の年齢を間違えて言ったり、不動産を誰に与えるかについて答えられないなど、上記の症状と同様のものが見受けられた。加えて、本件遺言の内容は、平成22年1月時点での被相続人の考えに近いところ、被相続人は、同年7月に上記考えを大幅に変更しているにもかかわらず、何故、同年1月時点の考え方に沿った本件遺言をしたのかについて合理的な理由は見出しがたい。」「以上のような本件遺言公正証書作成時ころの被相続人の精神症状、同公正証書作成時の被相続人の態様及び合理的な理由がないにもかかわらず、被相続人の直近の意思と異なる本件遺言が作成されていることに鑑みると、被相続人は、本件遺言公正証書作成時に遺言能力を欠いていたと認めるのが相当である。」