弁護士メモ|千葉晃平のひとこと
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  • 【裁判・行政】市職員の懲戒免職処分について、処分事由説明書に処分事由の記載がなく手続違背の程度が著しいものとして無効とした裁判例(水戸地裁H28・1・28)
  • 【裁判・行政】市職員の懲戒免職処分について、処分事由説明書に処分事由の記載がなく手続違背の程度が著しいものとして無効とした裁判例(水戸地裁H28・1・28)

    水戸地裁平成28年1月28日判決(判例地方自治414号42頁)は、「一般に、法律が行政処分に理由を付記すべきものとしている場合に、どの程度の記載をなすべきかは、処分の性質と理由付記を命じた各法律の規定の趣旨・目的に照らしてこれを決すべきところ、地公法49条1項が、職員に対し、懲戒等の不利益処分を行う場合にその処分の事由を記載した説明書を交付しなければならないとしているのは、職員に直接に義務を課し又はその権利を制限するという不利益処分の性質に鑑み、処分権者の判断の慎重と合理性を担保してその恣意を抑制するとともに、処分の事由を職員に知らせて不服の申立てに便宜を与える趣旨に出たものと解されるから、その記載を欠く場合には、処分自体の取消しを免れないと解するのが相当である。そして、このような理由付記制度の趣旨に鑑みれば、処分事由説明書に記載すべき処分事由としては、いかなる事実関係に基づきいかなる法規を適用して不利益処分がされたかを、被処分者においてその記載自体から了知しうるものでなければならず、単に不利益処分の根拠規定を示すだけでは、それによって当該規定の適用の基礎となった事実関係をも当然知り得るような場合を別として、地公法49条1項の要求する処分事由の記載として十分でないといわなければならない(最高裁昭和38年5月31日第二小法廷判決・民集17巻4号617頁、最高裁昭和60年1月22日第三小法廷判決・民集39巻1号1頁参照。)。」と判示したうえ、本件事実関係の基づき処分無効としました。

     

    処分対象事実(職員の生活保護受給者に対するわいせつ行為)は認定されているので、行政機関の処分のあり方について、実務上、注意すべき点を明確にしたもので、行政・自治体、職員・労働者側ともに参考になると思われます(確定しているようです)。