弁護士メモ|千葉晃平のひとこと
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  • 【裁判・時効】明示的一部請求訴訟につき、提訴により残部は催告の効果が生ずるとしたが、本件提訴は2度目の催告にあたるとして、消滅時効が成立しているとする判例(最高裁H25・6・6)

    明示的一部請求における残部の時効中断効の議論がありますが、最判平成25年6月6日(判例時報2190号22頁)は、裁判上の催告の効果を認め、判決確定後6か月以内に残部につき提訴すれば時効中断効を確保できる旨判示しました。

    この点の判断も重要ですが、弁護士実務的には、上記判示がありながら、本件では、明示的一部請求訴訟の前に、内容証明で残部部分の請求をしていたから、明示的一部請求訴訟は2度目の催告にあたり、催告の繰り返しによる期間延長は認められないとした点も、とても重要と思われます。なぜなら、弁護士実務上、訴訟提起前や受任後、内容証明郵便で請求することは通常の方法なので、これをもって催告となり事後の明示的一部請求訴訟に催告の効果が認められないことになるのであれば、慎重な対応と留意が求められるからです。

    一般の判例解説とは異なる視点ですが、参考までアップさせていただきます。

    【裁判・時効】昭和62年(1987年)の国鉄分割・民営化の事案につき、消滅時効の成立・主張を認めずに、国鉄側の不法行為を認めた裁判例(東京地判H24・6・29)

    本件はいわゆる国鉄分割・民営化に関する事案であり、国鉄が行った新会社(JR各社)への採用候補者名簿不記載基準の策定等が不法行為を構成する旨判示するものであり、係る判断もとても重要ですが、国鉄側の消滅時効の主張を認めなかった点でもとても重要な判断を示しています。

    詳細は判決文にあたっていただくことになりますが(東京地裁平成24年6月29日・判例時報2187号95頁。なお時効136頁以下です)、「最高裁判決が言い渡された時点(平成11年12月17日時点)で加害者が国鉄であることを知ったと解する余地がないわけではない。」としながら、「しかしながら、前記イで説示したとおり、『損害及び加害者を知った』時点とは、被害者による損害賠償請求権の行使が事実上可能な状況にあることをその前提とする」と判示し、最高裁・裁判例でも見解が別れていたこと、紛争の本質からすれば当時原告らに本件請求を行わせるのは矛盾する面もあること等を指摘し、「採用候補者名簿不記載にかかる損害賠償請求権の消滅時効は。最大限遡ったとしても平成15年12月22日以降であるというべきである」として、国鉄側の消滅時効の主張を排斥したものです。

    消滅時効の問題は被害者救済の大きな壁となることがありますが、本判決は、そうした不当な障害を取り除く重要な判断を示しているものと思われます。

    なお、消滅時効・除斥期間の問題について、松本克美教授「新・時効と正義ー消滅時効・除斥期間論の新たな展開」(日本評論社)が、被害救済の実務にも大きな力となっています。

     

    【民事・時効】消費者被害救済のための参考文献  松本克美教授「続・時効と正義ー消滅時効・除斥期間論の新たな展開」(日本評論社)

    投資被害、欠陥住宅被害など、消費者被害の場面では、『加害行為を基準とすると3年、20年』といった時効・除斥期間という、権利消滅期間が経過してしまっている事案も少なくありません。東日本大震災をきっかけに被害が発覚した事案も少なくありません。

    こうした事案について、被害者側が『時の経過』のみで救済されなくなってしまうことは正義に反することも多いと感じられるなか、ご紹介させていただいた書籍は、正義の実現・被害者救済にむけて、多くの判例を分析され、実務上も大きな力をいただける内容となっています。

    『時の経過』を乗り越え被害救済に取り組む方はもとより、法的正義の考え方に触れることができる文献として、紹介させていただくものです。

     

    【民事・時効】手術の約25年後に、体内にタオル残置されていたことが判明した事案につき、債務不履行の消滅時効の適用を否定し、賠償を命じた裁判例(東京地裁H24・5・9)

    東日本大震災の建物・造成の瑕疵等が問題となる事案において、法律上の権利行使期間(時効・除斥期間)が問題となる相談事案も多くあります。本裁判例が、不法行為について手術時から20年経過しているとして権利行使期間(20年の除斥期間・民法724条)が経過していると判断した点は、疑問も残りますが、債務不履行構成について、「権利を行使することができる時」(民法166条1項)につき、最高裁昭和45年7月15日を引用したうえ、タオル残置の手術時ではなく、「本件摘出手術」というタオル発見時の手術時によって「初めて本件タオルの残置を知り、その権利行使を現実に期待しうるようになった」として、権利行使期間(消滅時効期間)が経過していないと判断したことは、参考になると思われます(判例時報2158号80頁)。