弁護士メモ|千葉晃平のひとこと
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  • 【金融・参考】銀行を相手方とする金融トラブルの状況(全国銀行協会HPの公表内容)

    銀行を勧誘者等とする投資関係被害が多発しており、多様かつ多数。深刻な申出がなされている状況が、全国銀行協会のホームページに掲載されています。

                  

    申出内容について

    平成25年度7月~9月 (別紙)あっせんの申立て事案の概要とその結果

    http://www.zenginkyo.or.jp/adr/conditions/index/conditions01_2502_2.pdf

     

    各種データ・分析について

    全国銀行協会 紛争解決等業務の実施状況

    http://www.zenginkyo.or.jp/adr/conditions/

    【裁判・金融】銀行の定期預金を保有する顧客に対する償還条件付き投資信託の購入の勧誘行為が、適合性原則及び説明義務に違反するとして、過失相殺なき全額賠償が命ぜられた裁判例(大阪地裁H25・2・20)

    被害者の方は、「昭和5年に生まれ、第二次世界大戦中に国民学校高等科を卒業後、実家の農業を手伝い、終戦後は、宿泊施設で仲居として働いた。原告は、昭和30年に〈略〉職員であった亡夫と結婚した後は専業主婦であったが、昭和42年頃から、自宅近くの工場で化粧品のケースなどを作る作業に従事し、平成2年に定年退職した。」「原告は、以後無職であり、本件取引当時も無職であった。「本件取引の当時、77歳であり、亡夫から相続した自宅で一人暮らしをしていた。」「原告の収入は、年間247万1900円程度の年金(老齢基礎厚生年金、遺族厚生年金、〈略〉共済)であった。」「原告が本件商品購入時に解約した本件定期預金は、亡夫が被告に預け入れた1000万円の定期預金とその利息及び原告が被告に預け入れた1000万円の定期預金とその利息を合わせたものであった。」とされる方でした。大阪地裁は、かかる属性等を基礎に、「以上によれば、乙山及び丙川が、原告に対して、安定した資産であり原告の保有する金融資産の7割以上を占めていた本件定期預金を解約して、その解約金を原資として本件商品を購入するよう勧めた一連の勧誘行為は、原告の実情と意向に反する明らかに過大な危険を伴う取引を勧誘したものといえる。したがって、乙山及び丙川の上記勧誘行為は、適合性の原則から著しく逸脱した違法な行為であって、原告に対する不法行為に当たると認められる。」「本件商品の購入を勧誘した際、丙川や乙山が原告に対して、本件商品の内容等について本件パンフレットを示した上で一応の説明を行ったとは認められるが、本件パンフレットの記載内容及び原告の年齢、経歴、難聴であったこと並びに被告従業員らの説明に対する原告の対応等に照らせば、丙川及び乙山は、原告において本件商品の内容及びリスクを理解するのに十分な説明を原告に対して行わなかったと推認できる。したがって、乙山及び丙川の本件取引に関する勧誘行為には、説明義務違反の違法があったというべきである。」と判示し、過失相殺することなく銀行側に損害全額の賠償を命じました(判例時報2195号78頁。本裁判例は確定しています)。

    銀行を勧誘者とする投資勧誘被害は多発しており、被害救済に大きな力となる事案と思われます。

    【裁判・金融商品】違法勧誘が行われていた商品先物会社において、勧誘を行っていない取締役の、内部統制システムの整備・運営義務違反・損害賠償義務を認めた裁判例(名古屋高裁H25・3・15)

    名古屋高判平成25年3月15日(判例時報2189号129頁)は、従業員が違法勧誘を繰り返していた商品先物取引業者の、直接勧誘を行っていない取締役らにつき、「控訴人会社の従業員が適合性原則違反などの違法行為をして委託者に損害を与える可能性があることを十分に認識しながら、法令遵守のための従業員教育、懲戒制度の活用等の適切な措置を執ることなく、また、従業員による違法行為を抑止し、再発を防止するための実効的な方策や、会社法及び同法施行規則所定の内部統制システムを適切に整備、運営することを怠り、業務の執行又はその管理を重過失により懈怠したものというべきである。」として、会社法429条1項(役員等の第三者に対する損害賠償責任)に基づき、損害賠償を命じました(過失相殺3割)。

    一審判決(名古屋地判平成24年4月11日・判例時報2154号124頁)も、取締役の内部統制システム整備・運営義務違反を認めていましたが、高裁段階でも認められたことで、さらに重要な意味を有するものと思われます(なお、上告等あり)。

     

    全国銀行協会・盗難通帳等の不正利用などのアンケート結果(全国銀行協会HP・H24・6・28公表)

    「盗難通帳、盗難・偽造キャッシュカード、インターネット・バンキングによる預金等の不正払戻し件数・金額等に関するアンケート結果、口座不正利用に関するアンケート結果について」が公表されています。資料は複数になっていますが、いまなお不正利用の事案(被害)が多いことが分かります。被害救済にあたっての参考資料になると思われます。

    公表資料↓

    http://www.zenginkyo.or.jp/news/2012/06/28130000.html

     

    盗難カード払い戻しにつき銀行対する預金保護法に基づく補てん請求の適用事例(東京地裁H24・1・25判決)

    銀行・金融機関が真の預金者ではないものへ預金払戻を行ってしまった結果、真の預金者の権利が失われるという、いわゆる銀行による預金過誤払いの問題が多発してきました。

    こうした被害を受け、平成17年8月、預金保護法(偽造カード等及び盗難カード等を用いて行われる不正な機械式預貯金払戻し等からの預貯金者の保護等に関する法律)が制定され、そのなかで、盗難カードについて、以下の条項が定められています(2項以下は省略)。

    東京地裁H24・1・25判決(金融・商事判例1390号56頁)は、以下の条項の適用を認めた事例で、そのこと自体参考になりますが、窃盗手口の巧妙化・銀行窓口対応者の専門性の問題等が存するなか、預金過誤払被害及びその救済への注意喚起も含め、アップします。
     
    【関連条文】
    (盗難カード等を用いて行われた不正な機械式預貯金払戻し等の額に相当する金額の補てん等)
    第五条  預貯金者は、自らの預貯金等契約に係る真正カード等が盗取されたと認める場合において、次の各号のいずれにも該当するときは、当該預貯金等契約を締結している金融機関に対し、当該盗取に係る盗難カード等を用いて行われた機械式預貯金払戻しの額に相当する金額の補てんを求めることができる。

     当該真正カード等が盗取されたと認めた後、速やかに、当該金融機関に対し盗取された旨の通知を行ったこと。
     当該金融機関の求めに応じ、遅滞なく、当該盗取が行われるに至った事情その他の当該盗取に関する状況について十分な説明を行ったこと。
     当該金融機関に対し、捜査機関に対して当該盗取に係る届出を提出していることを申し出たことその他当該盗取が行われたことが推測される事実として内閣府令で定めるものを示したこと。

     

    投資被害関係・営業員ハンドブック(日本証券業協会HP・H24・5・30)

    日本証券業協会HPに「営業員ハンドブック」が掲載されています。企業関係のトラブルに関し、従業員個人が責任を負うのか、争点となることもありますが、投資被害関係については、「営業員ハンドブック」に「金融商品取引業者等の事業活動を実際に行う者は、主として投資者に直接接する営業員ですから、営業員の責任は極めて大きく、特にその営業活動の中心となる投資勧誘については、これを適正に行うことが強く要請されるわけです。」(2頁)とあるように、原則として担当者個人も責任を負うものと考えられ、これの参考になる資料と思われます↓(こちらから入手できます)。

    http://www.jsda.or.jp/shiryo/guidebook/index.html

    市と金融機関との間の損失補償契約を違法とし支出差止を認めた裁判例(東京高裁H22・8・30)

    地方公共団体が金融機関に対して当該金融機関の融資にかかる債務について「保証」をすることは、財政援助制限法3条本文によって禁止されていますが、現実には「損失補償」の名のもとに実質上の保証が行われるという脱法的行為が行われてきました。

    東京高裁平成22年8月30日判決は、こうした実態につき、立法趣旨・保証との異動・判決効等の詳細な分析・検討を行い、違法行為として差し止めを認めました(判例時報2089号28頁)。

    画期的な判決であり、現在上告審継続中で、最高裁の判断が注目されます。

     

    未公開株被害(株式公開準備室)につき、退任取締役の賠償責任認める判決(東京地裁H22・6・28)

    株式公開準備室などの名称で未公開株式を販売した事案につき、販売会社側の退任(辞任)した取締役らに対し、『積極的に未公開株式の売却、販売スキームに関わっており、辞任の際に、その後の被害拡大防止についての見るべき措置をとっていない』などとして、損害賠償責任を命じる判決が出されました(東京地裁平成22年6月28日判決)。

    未公開株式被害はじめ詐欺的金融被害では、加害者側が法形式を利用し責任を免れようとすることが多いですが、本判決は実態に基づき判断するもので、被害救済の大きな力となると思われます。