弁護士メモ|千葉晃平のひとこと
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  • 【裁判・建築】中古住宅・敷地売買において、倒壊のおそれある擁壁・ブロック塀所有権の問題・境界越境の可能性等が隠れた瑕疵にあたるとして、売主・不動産仲介業者の損害賠償義務が認められた裁判例(東京地裁H25・1・31)

    東京地裁H25・1・31(判例時報2200号86頁)は、代金9450万円の中古住宅・敷地売買につき、①本件擁壁は耐震補講がなされておらず、倒壊する危険性がある、②本件ブロックの所有権の帰属が不明である、③隣地に越境している、との点から「瑕疵」があると認め、「売主」に対し瑕疵担保責任として補修費用として約330万円、「不動産仲介業者」に前記③についての説明義務違反があるとして約20万円の損害賠償を命じたものです(なお、原告の請求額は約610万円です)。判決は確定しています。

    擁壁や隣地の関係での「瑕疵」判断の例として参考になると思われます。

     

    【裁判・建築】耐震偽装マンションにつき、建築確認を行った市に対する損害賠償請求を認めた裁判例(静岡地裁H24・12・7)

    本件は耐震偽装マンションに関する事案で、構造計算業務に関与したものらへの責任も認められています(金9億5600万円ほど)。論点は多岐にわたりますが、建築確認を行った静岡市の責任が認められている点に大きな特色があります(金6億7000万円ほど)。

    建築主事・静岡市の義務違反認定の基礎は次のような点にあるようです。

    すなわち、本件は、建築主事が、構造計算書の2次設計結論部分が抜けていることに気づき、これの追完を指示したところ、後日申請者が最終ページのみを持参したが、建築主事は、その際に、「連続性について単に利用者番号、ソフトのバージョン番号、頁数を確認したのみで、九六頁、九七頁に記載されていた本件建物の各階におけるX方向の壁せん断力の数値と追完された最終頁(九八頁)に記載されている同数値が一致していることを確認しなかったものである。」とされています。その他、建築基準法の趣旨、本件建築主事の能力等もあわせて、義務違反が認定されました。

    具体的な義務違反認定の際の視点として参考になると思われます。なお、本件は分譲会社が購入者(消費者)からの買い戻しに応じたうえ、分譲会社が原告となって提起した訴訟のようであり、耐震偽装発覚後の分譲会社のあるべき姿(とるべき対応)としても参考になると思われます。

    判決文は、判例時報2173号62頁(上記部分は105頁以下)に掲載されています。

     

     

    【建築】建築行政共用データべースシステム(国土交通省関係・参考)

    非建築士による建築士詐称(一級建築士のなりすまし事案)につき、国土交通省から事案等の報告がなされています。そのなかで「発覚の経緯」として、「建築行政共用データベースシステム」の利用により発覚した旨報告されています。建築士の資格関係等の確認システムが十分でないと指摘され続けてきましたが、こうしたシステムは存在・利用されているようであり、ご参考までにアップします。

    国土交通省の当該ページ↓

    http://www.mlit.go.jp/common/000219448.pdf

    建築行政共用データベースシステムのHP↓

    http://www.icba.or.jp/DBkyougikai/

    境界標・囲障の設置請求が認められた裁判例(東京地裁H23・7・15)

    実務で境界をめぐる事案は多いですが、境界標(杭)の設置そのものを判決で認める事例は稀なケースと思われます(判時2131号72頁)。条文としては民法223条が「土地の所有者は、隣地の所有者と共同の費用で、境界標を設けることができる。」と規定しています。判決主文は次のとおりです。

    ※ 東京地裁H23・7・15 判決主文

    1 被告(反訴原告)らは,原告(反訴被告)らに対し,被告(反訴原告)らの費用負担 を一,原告(反訴被告)らの費用負担を一とする割合の費用負担をもって,別紙図面1及び2の点ロと点ハ上にコンクリート杭製の境界標を設置せよ。

    2 被告(反訴原告)Y1は,原告(反訴被告)らに対し,被告(反訴原告)Y1の費用負担を1,原告(反訴被告)らの費用負担を1とする割合の費用負担をもって,別紙図面1及び2の点ロと点Aを直線で結ぶ線上に,点ロを起点として既存のブロック塀が存する地点まで,高さ1.62メートル,幅0.1メートルの8段積みブロック塀を築造せよ。

    3 被告(反訴原告)らの反訴請求をいずれも棄却する。

    4 訴訟費用は,本訴反訴を通じ,被告(反訴原告)らの負担とする。

    建築基準法令違反の請負契約を公序良俗に反し無効とした判例(最高裁H23・12・16)

    建築基準法令違反の建築物の建築を目的とする請負契約を公序良俗に反するものとして無効と判示しました。公序良俗違反となる場合として、①目的・方法の悪質性、②違法の程度の非軽微性、③契約への関与の程度(明らかな従属性の有無)をメルクマールとしているようですが、いずれにせよ、建築基準法令が、建築物の最低の基準を定めることによって、国民の生命・健康・財産の保護を守るものであることからすれば(建築基準法1条)、これに反する契約が社会生活上許されないことも当然であり、また、建築基準法違反の建築物の違法性も強度となることを示す判断と思われます。

    判決文は、最高裁HPにのっています↓。

    http://www.courts.go.jp/search/jhsp0030?hanreiid=81840&hanreiKbn=02

    欠陥住宅勝訴判決~最判H23・7・21を引用した例(仙台高裁H23・9・16)

    かぶり厚さ不足等の欠陥が存する事案につき、1審仙台地裁(単独)は、「ひび、裂け目など構造耐力に問題が生じていることをうかがわせる様子はない。」として被害者の請求を認ない誤った判断を示していたところ(H21・12・16)、2審仙台高裁(合議)は、「検査のために破壊したコンクリート下部の鉄筋部分に錆が生じておらず、危険が差し迫ったものとまでいえないことを考慮しても、建物の基本的な安全性を損ない、これを放置すると居住者の生命、身体、財産に対する危険が現実化するおそれがある瑕疵があるといえる。」と判示し、業者らに基礎再施工のための損害賠償を命じました(H23・9・16)。

    (欠陥住宅全国ネット 平成23年11月26・27日報告から)

    欠陥住宅に関する重要判例である最判H23・7・21を引用しての判断で、被害救済実務にも大いに参考になると思われます。

    最判H23・7・21はこちら↓(最高裁HP)

    http://www.courts.go.jp/search/jhsp0030?hanreiid=81511&hanreiKbn=02

     

    被災・情報 液状化被害の基礎・対策・法制度など(日本建築学会HP)

    震災被害では液状化も大きな問題です。

    日本建築学会がHP内で、基礎知識・対策・法制度等の説明をされており、参考になります↓。

    http://news-sv.aij.or.jp/shien/s2/ekijouka/index.html

    欠陥住宅における瑕疵概念を示した最高裁判例(H23・7・21)

    最高裁平成19年7月6日第二小法廷判決(民集61巻5号1769頁)が示した「建物としての基本的な安全性」の意味につき、業者側が現実的危険が生じていることが必要だと争っていた事案につき、最高裁は、平成23年7月21日、「『建物としての基本的な安全性を損なう瑕疵』とは,居住者等の生命,身体又は財産を危険にさらすような瑕疵をいい,建物の瑕疵が,居住者等の生命,身体又は財産に対する現実的な危険をもたらしている場合に限らず,当該瑕疵の性質に鑑み,これを放置するといずれは居住者等の生命,身体又は財産に対する危険が現実化することになる場合には,当該瑕疵は,建物としての基本的な安全性を損なう瑕疵に該当すると解するのが相当である。」と判示し、業者側の主張を排斥し、『放置すれば、生命・身体・財産に対する危険が現実化するようなもの』も瑕疵となる旨判示しました。

    瑕疵概念の把握にとって重要な判断です。

    判決文・・・最高裁HP↓

    http://www.courts.go.jp/search/jhsp0030?hanreiid=81511&hanreiKbn=02

     

    ご参考・欠陥住宅被害救済に役立つ書籍「ひと目でわかる欠陥住宅」(蓑原信樹建築士・幸田雅弘弁護士)

    欠陥住宅被害救済のためには、被害実態を分かりやすく伝える必要がありまます。この書籍は、欠陥住宅被害に救済に取り組まれる蓑原信樹建築士と幸田雅弘弁護士とによるもので、「在来軸組工法の特色」「基礎の種類」などの基礎知識から溶接・シックハウス問題等まで、シンプルな図と分かりやすい解説で構成されています。被害救済に取り組まれる実務家としてもとても参考になります。

    出版社のHPの説明です↓

    http://www.minjiho.com/new_detail.php?isbn=9784896286502

    シックハウス被害の公務災害性を認める裁決(H23・2・24)

    仮設プレハブ校舎内における高濃度の化学物質放散によりシックハウス症候群に罹患した被害につき、公務災害性を認める裁決が出されました。シックハウス症候群について公務災害性を認める重要な判断です。

    手続き的には、公務災害性を否定した原処分を取り消したものですが、原処分は、シックハウス症候群への理解が不十分であるばかりか、審理も不十分であり、公務災害性の判断システム(判断基準・審査能力・手続保障等)の根深い問題を露呈するものでした。今回の裁決のようにきちんとした判断がのぞまれるところです。

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