弁護士メモ|千葉晃平のひとこと
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  • カテゴリー: 不動産
  • 【裁判・執行】競売対象不動産につき、買受人が暴力団関係者と折衝する蓋然性が高い場合に、不動産の価値的な損傷があるとして、売却許可決定が取り消された事案(東京高決H25・7・12)

    本事案は、担保不動産競売事件において、土地の売却許可決定を受けて買受人となったAが、本件土地隣接地に暴力団幹部が居住していること、土地の利用形態等から暴力団幹部との折衝が必要とされること等から、民事執行法75条1項に基づき、売却許可決定の取消しを求めた事案です。同条項は、後記のとおりです。原審(東京地決H25・4・30)と判断が分かれてることや75条の解釈・適用場面を示すものとして参考になると思われます(金融商事判例№1426・34頁)。
     
    第七十五条  最高価買受申出人又は買受人は、買受けの申出をした後天災その他自己の責めに帰することができない事由により不動産が損傷した場合には、執行裁判所に対し、売却許可決定前にあつては売却の不許可の申出をし、売却許可決定後にあつては代金を納付する時までにその決定の取消しの申立てをすることができる。ただし、不動産の損傷が軽微であるときは、この限りでない。
     前項の規定による売却許可決定の取消しの申立てについての決定に対しては、執行抗告をすることができる。
     前項に規定する申立てにより売却許可決定を取り消す決定は、確定しなければその効力を生じない。

    【宅地・情報】仙台市宅地造成履歴等情報マップ(仙台市HP)

    仙台市が、仙台市内の宅地造成地の切土と盛土の分布状況と造成履歴等をまとめた「仙台市宅地造成履歴等マップ」を作成しました。HPでの全面公開は5月17日からのようですが、一部公開されており、個々の住宅(場所)も相当程度特定できるもので、とても参考になると思われます。

    仙台市該当ページ→ http://www.city.sendai.jp/kaiken/130430zoseirireki2.html

    なお、国土交通省ハザードマップポータルサイトもあります→http://disapotal.gsi.go.jp/

    今後は、こうした情報につき、より精度を高めていくことと、いかにして市民・住民へ有意な情報として届けられる、これをもとに被害予防を図っていくこと等が課題となるでしょう。

    これに関する日弁連の提言も参考になります ↓ http://www.nichibenren.or.jp/activity/document/opinion/year/2012/120315_14.html

     

     

    【裁判・民事】登記なくして通行地役権が対抗できる場合と、その判断基準時についての最高裁判例(H25・2・26)

    不動産に関する権利は登記しなければ他のものに権利主張できないのが原則ですが(民法177条)、通行地役権は、「継続的に通路として使用されていることがその位置、形状、構造等の物理的状況から客観的に明らかであり、かつ、譲受人がそのことを認識していたか又は認識することが可能であったとき」は登記なくても権利主張できるとされてきました(最高裁H10・2・13 判例時報1633号74頁、判例タイムス969号119頁)。最高裁H25・2・26は、H10判決を前提に、不動産担保競売の場合の「認識」の判断基準時は、抵当権実行時(競売時など)ではなく、最優先の抵当権設定時であると判示しました。

    通行地役権は現実にも問題となることも多く、留意が必要と思われます。

    最高裁HP↓ 

    http://www.courts.go.jp/search/jhsp0030?hanreiid=83014&hanreiKbn=02

     

    競売物件につき建物再築不可の場合に、配当受けた債権者に対する代金返還請求が認められた事例(名古屋高裁H23・2・17)

    担保権の実行としての不動産競売事件において、当該物件(土地・建物)を買い受けたところ、条例の規制により、当該物件(建物)の再築(取り壊して新しい建物の建築すること)ができなかった事案で、買受人から、不動産競売事件で配当を受けた債権者に対する配当金の一部返還請求を認めたものです。返還を認めた金額は金220万円のようで、当該規制がはじめからわかっていれば、金220万円ほど売却代金は低かったとの判断で、法的には、民法568条、566条を類推適用しています。上告・上告受理申立てがなされているようです。

    ・ 掲載紙 判例時報2145号42頁

    ・ 関連条文 

    民法568条(強制競売における担保責任)
    1項 強制競売における買受人は、第五百六十一条から前条までの規定により、債務者に対し、契約の解除をし、又は代金の減額を請求することができる。 
    2項 前項の場合において、債務者が無資力であるときは、買受人は、代金の配当を受けた債権者に対し、その代金の全部又は一部の返還を請求することができる。
    3項 前二項の場合において、債務者が物若しくは権利の不存在を知りながら申し出なかったとき、又は債権者がこれを知りながら競売を請求したときは、買受人は、これらの者に対し、損害賠償の請求をすることができる。
     
    民負う566条(地上権等がある場合等における売主の担保責任)
    1項 売買の目的物が地上権、永小作権、地役権、留置権又は質権の目的である場合において、買主がこれを知らず、かつ、そのために契約をした目的を達することができないときは、買主は、契約の解除をすることができる。この場合において、契約の解除をすることができないときは、損害賠償の請求のみをすることができる。
    2項 前項の規定は、売買の目的である不動産のために存すると称した地役権が存しなかった場合及びその不動産について登記をした賃貸借があった場合について準用する。
    3項 前二項の場合において、契約の解除又は損害賠償の請求は、買主が事実を知った時から一年以内にしなければならない。

     

    境界標・囲障の設置請求が認められた裁判例(東京地裁H23・7・15)

    実務で境界をめぐる事案は多いですが、境界標(杭)の設置そのものを判決で認める事例は稀なケースと思われます(判時2131号72頁)。条文としては民法223条が「土地の所有者は、隣地の所有者と共同の費用で、境界標を設けることができる。」と規定しています。判決主文は次のとおりです。

    ※ 東京地裁H23・7・15 判決主文

    1 被告(反訴原告)らは,原告(反訴被告)らに対し,被告(反訴原告)らの費用負担 を一,原告(反訴被告)らの費用負担を一とする割合の費用負担をもって,別紙図面1及び2の点ロと点ハ上にコンクリート杭製の境界標を設置せよ。

    2 被告(反訴原告)Y1は,原告(反訴被告)らに対し,被告(反訴原告)Y1の費用負担を1,原告(反訴被告)らの費用負担を1とする割合の費用負担をもって,別紙図面1及び2の点ロと点Aを直線で結ぶ線上に,点ロを起点として既存のブロック塀が存する地点まで,高さ1.62メートル,幅0.1メートルの8段積みブロック塀を築造せよ。

    3 被告(反訴原告)らの反訴請求をいずれも棄却する。

    4 訴訟費用は,本訴反訴を通じ,被告(反訴原告)らの負担とする。

    15年以上前の土地・建物売買につき、接道義務を満たさず立替できないことを理由とする売主・仲介業者の説明義務違反・損害賠償責任を認めた裁判例(千葉地裁H23・2・17)

    建物・土地の売買においては、相当期間経過後、瑕疵や説明義務違反等の問題が発覚・現実することも多く、こうした事案においても参考になる裁判例と思われます(判時2121号110頁)。

     

    扶養的財産分与として、夫マンションにつき、妻への賃貸を命ずる判決(名古屋高裁H21・5・28)

    夫から妻に対する離婚等請求事件において、夫婦共有財産であるマンションにつき、清算的財産分与として、夫持分(8割程度)は夫が取得するとした上、扶養的財産分与として、「夫は妻に対し同マンションを賃貸せよ」との判決が出されました(判例時報2069号50頁)。離婚に伴う財産分与として実務上も参考になると思われます。

    耐震偽装マンション、販売業者の代金返還義務を認める判決(札幌地裁H22・4・22)います。会社住友taisinn

    札幌地裁は、平成22年4月22日、耐震偽装マンションにつき、購入者の錯誤主張に基づき、「耐震強度などの基本的性能は購入の重要な動機。誤解に基づき合意した売買は無効であり、被告は代金を返還する責任を負う」として、販売業者である住友不動産に対し、総額約3億7千万円の返還を命じる判断を示しました。耐震偽装の一番の被害者は購入者ら消費者であり、被害救済がすすむことが期待されます。

    地元・北海道新聞の記事です↓。

    http://www.hokkaido-np.co.jp/news/donai/227480.html

     

    自殺で土地に心理的欠陥・借主の賠償責任認める判決(仙台地裁H22・3・25)

    賃借人の自殺により土地に心理的欠陥が生じたとして、借主に金200万円尾損害賠償を命じる判決が出されました(仙台地裁平成22年3月25日判決)。

    http://www.kahoku.co.jp/news/2010/03/20100326t13031.htm

    判決の当否はさておき、「自殺」は大きな社会問題であり、本人の法的帰責性(責任を負担させることができるか否か)はじめさまざまな観点から、今後、議論・検討が必要と思われます。