弁護士メモ|千葉晃平のひとこと
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  • 【裁判・マンション管理】一部の区分所有者が共用部分を第三者に賃貸して得た賃料について、他の区分所有者が持分割合に相当する部分を不当利得返還請求できる場合とできない場合の例を示した判例(最高裁H27・9・18)

    最高裁平成27年9月18日(判例タイムズ1418号92頁)は、「一部の区分所有者が共用部分を第三者に賃貸して得た賃料のうち各区分所有者の持分割合に相当する部分につき生ずる不当利得返還請求権は各区分所有者に帰属するから、各区分所有者は、原則として、上記請求権を行使することができるものと解するのが相当である。」として原則請求可能とする一方、「上記の集会の決議又は規約の定めがある場合には、各区分所有者は、上記請求権を行使することができないものと解するのが相当である。」として管理規約や区分所有者の集会決議などがある場合には、その規約・決議に従い個々の区分所有者は権利行使できないことになると判示しました。

    本件事案に限らず、マンション管理における規約・集団的決議の効力の例として参考になると思われます。

    【裁判・不動産】賃貸用物件であるマンション1棟の売買において1室で自殺があったことが「瑕疵」にあたるとして、収益性の低下等を考慮し損害額600万円の賠償を認めた裁判例(東京地裁H25・7・3)

    東京地裁平成25年7月3日判決(判例タイムズ1416号198頁)で、控訴棄却で確定しているようです。事案は、全29室の賃貸用マンションで、売買代金3億9000万円とのことです。自殺が心理的瑕疵を構成するとの裁判例は多数存しますが、その損害額算定はいろいろですが、収益物件の場合には、その収益性の低下も考慮されることが多いです。その例として参考になる1つと思われます。

    なお、宅建業者への請求は棄却されています。

     

    自殺・心理的瑕疵を認めた同種事例としては、東京地裁平成21年6月26日(判例秘書L06430336)、横浜地裁平成22年1月28日(判例タイムズ1336号183頁。ただし、控訴審東京高裁平成22年7月20日で損害額が半額程度に減額)、東京地裁平成20年4月28日(判例タイムズ1275号329頁)などが報告されています。

    【裁判・不動産】 土地建物売買において、建物販売者はその敷地についても基本的な安全性が欠けることがないよう配慮すべき義務があるする裁判例(名古屋高裁H26・10・30)

    名古屋高裁平成26年10月30日判決REITO97号92頁記事・ウエストロー2014WLJPCA10306002)は、地建物売買において、建物販売者は当該建物はもとよりその敷地についても基本的な安全性が欠けることがないよう配慮すべき義務があり、これを怠った売主(宅建業者)に対し建物沈下補修費用等の賠償を命じました。平成10年2月25日土地建物売買契約(1500万円)につき、補修費等の1312万円超えを認容したものです。

    販売者は宅建業者でもあり、売買時の調査・説明義務内容等を示すものとしても参考になると思われます。

    以下、判示部分の抜粋です。

     「建物は、その居住者をはじめとする利用者の生命、身体又は財産を危険にさらすことがないような建物としての基本的な安全性を備えていなければならず、また、建物の敷地の地盤の性状が、その上に建築される建物の基本的な安全性に重大な影響を与えることは明らかであるから、敷地の地盤も宅地に適した強度や安全性を有していなければならないのであって、建物を販売しようとする者は、当該建物はもとより、その敷地についても基本的な安全性が欠けることがないように配慮すべき注意義務を負うと解するのが相当であり、当該建物を販売する者が上記のような義務を怠ったために、建物やその敷地の地盤に基本的な安全性を損なう瑕疵があり、それによって居住者をはじめとする利用者の生命、身体又は財産が侵害された場合には、特段の事情がない限り、これによって生じた損害について不法行為による損害賠償責任を負うというべきである。」

     「これを本件についてみると、上記認定説示のとおり、本件建物及び本件土地は、被控訴人が盛土後の本件土地の地盤強度を計測して改良措置等を講ぜず、その地盤強度にふさわしい建物基礎を選択しなかった結果、地盤沈下による傾斜を生じさせやすい状態となっており、本件建物やその敷地である本件土地の地盤に基本的な安全性を損なう瑕疵があるものと認められる。」

    【裁判・民事】土地売買において、宅地建物取引業者が、20数年前に同土地上の建物で自死があったことが説明義務違反・不法行為にあたるとする裁判例(高松高裁H26・6・19)

    慰謝料合計150万円を認めた一審松山地判平成25年11月7日を維持するものです(判例時報2236号101頁。確定しています)。説明義務が守られていた場合に比して、不完全な状態での交渉等を余儀なくされたこと等を理由としています。自死の時期も含め、不動産取引上はもとより他の説明義務の把握に参考となるものです。

    【裁判・民事】司法書士の登記済証の真否の調査義務違反が問題とされた事案につき、義務違反を認める一方、賠償義務を否定した裁判例(東京地裁H26・4・14)

    東京地裁平成26年4月14日判決(判例時報2234号69頁)は、不動産登記申請手続を受任した司法書士が偽造登記済証の所有権移転に係る原因行為の日付に全部事項証明書の記載と齟齬があることを見過ごし何らの調査もしなかった事案につき、当該司法書士の義務違反(債務不履行)を認める一方、原告(依頼者)が不動産業者であることや実質的な損害を受けているのは別人であること等から、原告(依頼者)との関係で賠償義務は否定しました。

     

    司法書士の義務違反の判断基準や損害把握の点で参考となる一事例と思われます(確定しています)。

    【裁判・民事】不動産の信託受託者として当該不動産の転貸及び保守管理をしていた者が、当該不動産の屋上漏水事故について、民法717条1項の占有者に該当するとして損害賠償が命じられた事案(東京地裁H24・2・7)

    民法717条1項はいわゆる土地の工作物責任として不動産の占有者に対する責任を定めています。東京地裁平成24年2月7日判決(判例タイムズ1404号200頁)は、保守管理者側から「転貸を目的としており、経済的利益及び損失の一切は所有者たるAに帰属することとされ、・・・(保守管理者側の)権限は厳しく制限され、本件建物の現実の支配管理を行う実質的な権限を有していなかった」との反論につき、転貸目的が立証されていないと述べるとともに「民法717条1項の土地の工作物の占有者は事実上工作物を支配していれば足り、経済的利益や損失の帰属がないからといって占有者ではないということはできない。」と判示し、損害賠償を命じました(控訴後和解と報告されています)。

     法717条は、実務上も重要な規定であり、その具体的適用例として参考となるものと思われます。

    【裁判・民事】高齢者を売主とし、不動産取引専門業者を買主とする不動産売買契約につき、意思無能力を理由に無効とした裁判例(東京地裁H26・2・25)

    売主は時85歳でMRI画像上顕著な大脳萎縮等が確認されていたなか、所有する東京都目黒区の土地建物を600万円で売却した事案です。東京地裁平成26年2月25日は、売主が「自己の行為の結果を正しく理解し合理的な判断をする能力が著しく障害されていた」として、売買契約を無効としました。

     

    意思能力・行為能力や無効・取消等の概念の理解は難しい面もありますが、意思能力が欠けるとして契約を「無効」とする判断として、高齢者救済の観点からも参考になると思われます。

     

    また、本件では買主側が、不動産の売買・賃貸管理及びその仲介等を営む会社であることも大きな問題であり、判決においても「不動産取引の専門家として十分な注意を尽くしたとは言い難い」と述べられています。

     

    なお、控訴されています。

    【裁判・不動産売買】中古住宅と敷地の売買において、倒壊のおそれのある擁壁の存在、ブロック塀の所有権帰属が不明であること、隣地への越境の可能性が隠れた瑕疵にあたるとして、売主の瑕疵担保責任が認められ、また、不動産仲介業者の越境に関する説明義務違反による債務不履行責任が認められた事案(東京地裁平成25年1月31日)

    東京地裁平成25年1月31日(判例時報2200号86頁)は、擁壁補修費用310万円超などを損害として認めました(仲介業者は別)。土地。擁壁の耐震性は極めて重要な要素であり、擁壁の耐震性欠如を瑕疵と認めた事例、また、仲介業者の説明義務の実質化を図る事例として、参考になると思われます。

    【裁判・不動産売買】産業廃棄物の埋設された土地の売買契約において、買主(業者)から売主(市)に対する説明義務違反に基づく損害賠償請求が認められた事案(大阪高裁平成25年7月12日)

    土地の埋設物に関する紛争は少なくないですが、本件は、平成2年頃の売買契約につき平成20年頃に紛争となったこと、売主が市であること、損害額(判決認容額)が金1億9000円超と多額であること、買主(業者)が転売先に賠償していたこと、違法の構成が説明義務違反であること等の特色もあり、参考としてアップします(判例時報2200号70頁。本裁判については上告・上告受理申立てがなされています)。

    【裁判・建築】中古住宅・敷地売買において、倒壊のおそれある擁壁・ブロック塀所有権の問題・境界越境の可能性等が隠れた瑕疵にあたるとして、売主・不動産仲介業者の損害賠償義務が認められた裁判例(東京地裁H25・1・31)

    東京地裁H25・1・31(判例時報2200号86頁)は、代金9450万円の中古住宅・敷地売買につき、①本件擁壁は耐震補講がなされておらず、倒壊する危険性がある、②本件ブロックの所有権の帰属が不明である、③隣地に越境している、との点から「瑕疵」があると認め、「売主」に対し瑕疵担保責任として補修費用として約330万円、「不動産仲介業者」に前記③についての説明義務違反があるとして約20万円の損害賠償を命じたものです(なお、原告の請求額は約610万円です)。判決は確定しています。

    擁壁や隣地の関係での「瑕疵」判断の例として参考になると思われます。