弁護士メモ|千葉晃平のひとこと
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  • 【裁判・民事】クロスバイク(自転車)の走行中の転倒事故の原因は、前輪サスペンション部の分離にあるとして、製造物責任法上の欠陥を認定し、損害は2億円を超えるとした上で過失相殺1割とし、輸入販売業者に金1億8900万円超の支払いを命じた裁判例(東京地裁H25・3・25)

    メーカーはビアンキです。

    東京地判平成25年3月25日(判タ1415号346頁)は、「前記二のとおり、原告太郎は、本件自転車により走行中、そのサスペンションが分離し、前輪及びこれと連結しているアウターチューブが脱落したことによって、支持を失って転倒して受傷したものであるところ、以上によれば、原告太郎は、本件自転車を、その特性に従い、通常予想される使用形態で使用していたのであって、購入後の経過期間、保管やメンテナンスの状況を考慮しても、本件自転車は、走行中にサスペンションが分離したという点において、通常有すべき安全性を欠いていたといわざるを得ない。」「前記二にみたとおり、本件自転車のサスペンション内のスプリングが破断し、原告太郎の走行中にサスペンションが分離するに至った具体的、科学的機序の詳細については、証拠上、いまだ十分には解明されていないところではあるが、本件における製造物責任法にいう「製造物」とは自転車であって、上記アからウのとおりの本件自転車の特性、通常予想される使用形態、引渡時期からすれば、本件事故における転倒の原因が本件自転車の部品であるサスペンションの分離であることが主張立証されれば、製造物責任法に定める欠陥についての主張立証としては必要十分であり、これ以上に、サスペンションの分離に至る詳細な科学的機序、あるいは、サスペンションの構造上の不具合までを主張立証する必要はないと解するのが相当である。このように解しても、製造物責任法に定める「欠陥」の捉え方としては十分に具体的であって、欠陥の有無についての攻撃防御を尽くすことは可能であり、また、製造業者等の行為規範としても具体性に欠けるところはないと考えられる。」と判示したものです。

     

    法的被害救済の判断枠組みは確立しつつありますが、製造物の欠陥の場合の被害の甚大さに鑑みれば、その予防策を怠った点にも重い責任が問われるべき時期にきているものと思われます。

     

    控訴後和解となっています。

    【裁判・民事】主債務が、再生債権として異議なく確定し、再生計画認可決定も確定した場合に、その連帯保証債務の消滅時効期間も10年に延長されるとした裁判例(東京地裁H26・7・28)

    東京地判平成26年7月28日(判タ1415号277頁)は、この場合の主債務については民法174条の2第1項により時効期間が10年となることを前提に、連帯保証債務も、民法457条1項にあらわれるところの消滅時効制度の適用場面における保証債務の附従性から延長の効果を生じ、消滅時効期間は10年となると判示しました。

    最判昭和43年10月17日(判タ228号100頁、判時540号34頁)は、主たる債務者の債務の短期消滅時効期間が民法174条ノ2の規定によって10年に延長される場合には、これに応じて保証人の債務の消滅時効期間も同じく10年に変ずるものと解するのが相当である旨判示していますので、民事再生の場面における確認的な裁判例ですが、時効問題は実務上重要ですので、参考になると思われます。


    関係条文は以下のとおりです。

    (判決で確定した権利の消滅時効)

    174条の2  確定判決によって確定した権利については、十年より短い時効期間の定めがあるものであっても、その時効期間は、十年とする。裁判上の和解、調停その他確定判決と同一の効力を有するものによって確定した権利についても、同様とする。
     前項の規定は、確定の時に弁済期の到来していない債権については、適用しない。

    (主たる債務者について生じた事由の効力)

    第457条  主たる債務者に対する履行の請求その他の事由による時効の中断は、保証人に対しても、その効力を生ずる。

     保証人は、主たる債務者の債権による相殺をもって債権者に対抗することができる。

    【裁判・民事】特定調停における清算条項は、過払金返還請求権を失わせるものではないとする最高裁判例(H27・9・15)

    原審(東京高裁)が、特定調停における清算条項を公序良俗違反として消費者救済を図っていましたが、最高裁H27・9・15は、特定調停は債務支払協議のための手続きであることから、清算条項が存するとしも、いわゆる過払金還請求権を失わせるものではないとして、調停の有効性を前提としつつ限定的ですが過払消返還請求の余地を残しました(実際には時効等も問題も生じ得るものです)。

    本判例は特定調停にとどまらず裁判上の精算条項の理解にも大きな影響が存するものと思われます。
    判決文は裁判所HPに掲載されています
    http://www.courts.go.jp/app/hanrei_jp/detail2?id=85318

    【裁判・民事】債権譲渡において異議をとどめない承諾をしても、譲受人に過失があれば対抗できるとする最高裁判例(最判H27・6・1)

    最高裁平成27年6月1日判決は、貸金業者側の債権譲渡により顧客の主張できる事由(旧貸金業法43条1項の適用がないこと)が制限されるとした主張に対し、「債務者が異議をとどめないで指名債権譲渡の承諾をした場合において、譲渡人に対抗することができた事由の存在を譲受人が知らなかったとしても、このことについて譲受人に過失があるときには、債務者は、当該事由をもって譲受人に対抗することができると解するのが相当である。」と判示しました(原判決破棄・差戻)。

    最高裁HP → ttp://www.courts.go.jp/app/hanrei_jp/detail2?id=85133

    民法の債権譲渡の規定(下記468条)の理解を前提とするものですが、実務上、大きな影響を有する判断と思われ、これまでに比し、消費者保護に有益な判断と思われます。

    第四百六十八条  債務者が異議をとどめないで前条の承諾をしたときは、譲渡人に対抗することができた事由があっても、これをもって譲受人に対抗することができない。この場合において、債務者がその債務を消滅させるために譲渡人に払い渡したものがあるときはこれを取り戻し、譲渡人に対して負担した債務があるときはこれを成立しないものとみなすことができる。
     譲渡人が譲渡の通知をしたにとどまるときは、債務者は、その通知を受けるまでに譲渡人に対して生じた事由をもって譲受人に対抗することができる。 

    【裁判・民事】相続放棄の熟慮期間(3ヶ月)の起算点につき、相続債務が存することを知った時とする裁判例(福岡高裁H27・2・16)

    被相続人死亡が昭和63年6月、相続放棄申立てが平成26年7月の事案です。原審(佐賀地裁H26・10・17)は相続財産の有無の調査を期待することが著しく困難な事情があったとも認められないとして、昭和63年6月を起算点として、相続放棄の申立てを却下しましたが、福岡高裁平成27年2月16日(判例時報2259号58頁)は、共同相続人の1人が全て相続し自らは相続すべきものがないと信じたことに相当の理由があるなどの事情から、債権者からの通知を受けた平成26年7月を起算点として相続放棄を受理・認めました。

    当然の判断かとは思われますが、実務上、問題となる場面も多く、参考になると思われます。

    【裁判・民事】分譲マンションの売主の、隣接マンション建設予定の説明義務の違反を認めた裁判例(大阪高裁H26・1・23)

    大阪高裁平成26年1月23日(判例時報2261号148頁)は、分譲マンションの売主が、自ら隣接地にマンションを建設予定であったことについて、(購入者らにとって)「マンションを購入するか否かを検討するに当たって極めて重要な情報」であったにも関わらず、これによる日照被害等の説明を怠ったものとして、売主に賠償を命じました(各10~20万円)。

    同一業者による隣接地マンション販売については、『眺望二度売り』などとして事後のマンション建築が差し止められた仮処分裁判例もあります(仙台地裁平成7年8月24日・判例時報1564号105頁)。
    いずれも、マンション販売に係る業者・売主側の注意義務を把握し、被害予防救済に役立つ判断と思われます。

    【裁判・民事】個人の顧問業務につき、弁護士法72条・公序良俗違反とする裁判例(東京地裁H27・1・19)

    弁護士・医師等の専門業務について無資格者が業務を行って金員を取得する行為が散見されます。本件は無資格者が「あたかも弁護士以上の能力を有しているかのように振る舞って本件顧問契約を締結させ」たものとして、弁護士のみが法律委任事務・有償を行い得るとする弁護士法72条はもとより公序良俗に反するものとして、顧問契約等を無効として、無資格者へ金482万円超の返金を命じました(東京地裁平成27年1月19日・判例時報2257号65頁)。

    弁護士業務のあり方等も含め、種々の問題を提起する面もあろうかとは思いますが、まずは弁護士法違反行為の法的解決事案として参考になるかと思われます。

    【裁判・民事】住宅賃貸借契約において、賃借人の延滞賃料等について、保証人の責任を限定した裁判例(東京高裁H25・4・24)

    東京高裁平成25年4月24日(判例タイムズ1412号142頁以下)は、賃貸人は一定時期以降は賃貸借契約を解除する等、損害拡大を防止し得たものとして、賃借人の責任範囲のうち、一定時期以降分を保証人に求めることは義則・権利濫用としました。

    同様の考えは、最高裁平成9年11月13日(判例タイムズ969号126頁)にも示されており、複数の下級審裁判例もありますが、東京高裁の判断でもあり、改めて実務上参考になるものと思われます。

    【裁判・民事】適格消費者団体による、クロレラやウコギの薬効説明チラシが「優良誤認表示」にあたるとした差し止め請求を認めた裁判例(京都地裁H27・1・21)

    先進的な活動を続ける京都消費者契約ネットワーク(http://kccn.jp/)による訴訟です。
    京都地裁平成27年1月21日判決(金融商事判例1467号54頁)は、「研究会チラシによる前記第1の5に掲記認定の説明は、
    医薬品としての承認を受けていない細胞壁破砕クロレラ粒等の被告商品につき、医薬品的な効能効果があると表示するものであり、一般の消費者に対し、細胞壁破砕クロレラ粒等の被告商品があたかも国により厳格に審査され承認を受けて製造販売されている医薬品であるとの誤認を引き起こすおそれがある。また、上記のような表示は、商品の宣伝広告として社会一般に許容される誇張の限度を大きく踏み越えるものである。したがって、研究会チラシの説明は、景表法10条1号所定の「商品の内容について、実際のものよりも著しく優良であると誤認される表示」として優良誤認表示にあたる。」と判示しチラシ記載の差し止めを認めました。
    控訴されていますが、個々人では実現し難い誤認・不当表示をとめさせるもので、社会的に大きな意義を有するものです。
    適格消費者団体の活動の大きな意義のひとつです。

    【民法・参考】民法(債権関係)の改正に関する要綱案(法務省HP・H27・2・10決定)

    公表されています。今国会で成立見通しで、施行はまだ先ですが、実務家とては一度は全部に目をとおておくとよいと思われ、
    市民の方もざっとみていただくと雰囲気が伝わると思います。
    法務省HP

    http://www.moj.go.jp/shingi1/shingi04900244.html