弁護士メモ|千葉晃平のひとこと
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  • 【裁判・民事】売買目的物が建築基準法違反・都市計画法違反状態であることにつき、売主(各申請手続実行者・宅地建物取引業者)に調査説明義務違反を認め、排水施設設置費用等の賠償を命じたもの(東京地裁H26・3・26)

    給油所として使用されている物件に関する売買であり、建築基準法違反・都市計画法違反状態であることにつき、売主(各申請手続実行者・宅地建物取引業者)に調査説明義務違反を認め、(1)排水施設設置費用870万4500円、(2)変更許可申請等費用125万円に過失相殺3割とし、(3)弁護士費用70万円の合計766万8150円の賠償を命じたものです(東京地裁平成26年3月26日判決・判例時報2243号56頁)。

     

    過失相殺がなされているの、複数の給油所経営を行っている買主の属性等による特殊な事情によるものと理解されます。

    【裁判・民事】土地売買において、宅地建物取引業者が、20数年前に同土地上の建物で自死があったことが説明義務違反・不法行為にあたるとする裁判例(高松高裁H26・6・19)

    慰謝料合計150万円を認めた一審松山地判平成25年11月7日を維持するものです(判例時報2236号101頁。確定しています)。説明義務が守られていた場合に比して、不完全な状態での交渉等を余儀なくされたこと等を理由としています。自死の時期も含め、不動産取引上はもとより他の説明義務の把握に参考となるものです。

    【裁判・民事】司法書士の登記済証の真否の調査義務違反が問題とされた事案につき、義務違反を認める一方、賠償義務を否定した裁判例(東京地裁H26・4・14)

    東京地裁平成26年4月14日判決(判例時報2234号69頁)は、不動産登記申請手続を受任した司法書士が偽造登記済証の所有権移転に係る原因行為の日付に全部事項証明書の記載と齟齬があることを見過ごし何らの調査もしなかった事案につき、当該司法書士の義務違反(債務不履行)を認める一方、原告(依頼者)が不動産業者であることや実質的な損害を受けているのは別人であること等から、原告(依頼者)との関係で賠償義務は否定しました。

     

    司法書士の義務違反の判断基準や損害把握の点で参考となる一事例と思われます(確定しています)。

    【裁判・民事】ツイッター投稿記事により名誉棄損を受けたと主張する者からの、IPアドレス保有者に対する発信者情報開示請求が認められた事案(東京高裁H26・5・28)

    東京高裁平成26年5月28日判決(判例時報2233号113頁)は、特定電気通信役務提供者の損害賠償責任の制限及び発信者情報の開示に関する法律(いわゆるプロバイダ責任制限法)4条1項の発信者情報の意味・範囲が問題となった事案につき、侵害情報投稿の際に用いられたものに限定されず、ログインの際に用いられた氏名・名称・電子メールアドレスがこれにあたるものとして、開示請求を認めました。

    近時のネット関係事案の解決にむけ参考となるものと思われます。

    【裁判・民事】事故後26年以上経過した後に提起された損害賠償請求訴訟において、民法724条に基づく消滅時効・除斥期間の主張を排斥した裁判例(東京地裁H26・4・14)

    東京地裁平成26年4月14日判決(判例時報2233号123頁)は、鉄道高架橋のブロック片落下事故によって頭部を受傷した被害者が、相当期間経過後に知的障害・高次脳機能障害等が発生したとして事故後26年以上経過した後に損賠賠償を求めた事案において、民法724条前段については「被害者がその請求権を行使することができる程度に具体的な認識が必要」として、民法724条後段については「損害の性質上加害行為が終了してから相当の期間が経過した後に損害が生じる場合」として、いずれも加害者側の主張を排斥し、1億5884万円超の損害賠償を命じました(控訴あり)。


    民法724条後段を古典的な除斥期間と把握していると思われる点は問題ですが、その除斥期間の不合理性を乗り越える事案として、実務上、参考になるものです。

    【裁判・民事】オンライン送達が、送達先の代理人弁理士の意思能力欠如等により無効とされた事案(知財高裁H25・3・25)

    知的財産権の事案であり工業所有権に関する手続等の特則に関する法律5条1項の規定によるいわゆるオンライン送達の手続での問題ですが、送達受領者の意思能力の問題など一般的にも問題になり得るもので、実務上も留意すべきものと思われます(判例時報2233号137頁)。

    【裁判・民事】70歳超の母のキャッシュカードを所持し暗証番号を知っていた娘が行った預金払戻請求に応じた銀行につき、銀行側の払戻権限確認義務違反を認め、2082万円の支払いを命じた裁判例(東京地裁H26・8・21)

    東京地裁平成26年8月21日判決(金融・商事判例1453号56頁)は、娘がATMで引き出そうとした後、銀行担当者が事情確認の際に、娘が建築費用支払いのためであるとか不自然な説明を行っていること、預金残高のほぼ全額の引き出しであること等の事情がありながら、本人へ意思確認しなかったことに注意義務違反を認めたものです。銀行側の免責特約の主張も排斥しました。


    控訴れているとのことですが、銀行側の杜撰な対応への判断として実務上も参考になると思われます。

    【裁判・民事】公序良俗違反の無効な契約(無限連鎖講・総額約25億円の被害)につき、給付を受けた会員側が金員の返還請求を拒むことは、信義則上許されないとした事案(最高裁H26・10・28)

    民法708条では「不法な原因のために給付をした者は、その給付したものの返還を請求することができない。ただし、不法な原因が受益者についてのみ存したときは、この限りでない。」(不法原因給付)とされており、これによれば本件事業者(無限連鎖講の実施者)から、各会員への給付の返還はできないものとも考えられるところ、最高裁平成26年10月28日判決(金融・商事判例1454号16頁)は、会員側の返還拒絶は、信義則上許されないと判示し、会員側へ返還を命じました。

    本件では、下級審(東京地裁・東京高裁)とも会員側の返還拒絶を認めていたものですが、最高裁は、請求権者が破産管財人であること、返金を受けた場合に使途(配当)等も考慮し、上記判断を示しました。

    法708条(不法原因給付)の実務的感覚を理解するものとして参考になるものです。

    【裁判・民事】不動産の信託受託者として当該不動産の転貸及び保守管理をしていた者が、当該不動産の屋上漏水事故について、民法717条1項の占有者に該当するとして損害賠償が命じられた事案(東京地裁H24・2・7)

    民法717条1項はいわゆる土地の工作物責任として不動産の占有者に対する責任を定めています。東京地裁平成24年2月7日判決(判例タイムズ1404号200頁)は、保守管理者側から「転貸を目的としており、経済的利益及び損失の一切は所有者たるAに帰属することとされ、・・・(保守管理者側の)権限は厳しく制限され、本件建物の現実の支配管理を行う実質的な権限を有していなかった」との反論につき、転貸目的が立証されていないと述べるとともに「民法717条1項の土地の工作物の占有者は事実上工作物を支配していれば足り、経済的利益や損失の帰属がないからといって占有者ではないということはできない。」と判示し、損害賠償を命じました(控訴後和解と報告されています)。

     法717条は、実務上も重要な規定であり、その具体的適用例として参考となるものと思われます。

    【裁判・民事】高齢者を売主とし、不動産取引専門業者を買主とする不動産売買契約につき、意思無能力を理由に無効とした裁判例(東京地裁H26・2・25)

    売主は時85歳でMRI画像上顕著な大脳萎縮等が確認されていたなか、所有する東京都目黒区の土地建物を600万円で売却した事案です。東京地裁平成26年2月25日は、売主が「自己の行為の結果を正しく理解し合理的な判断をする能力が著しく障害されていた」として、売買契約を無効としました。

     

    意思能力・行為能力や無効・取消等の概念の理解は難しい面もありますが、意思能力が欠けるとして契約を「無効」とする判断として、高齢者救済の観点からも参考になると思われます。

     

    また、本件では買主側が、不動産の売買・賃貸管理及びその仲介等を営む会社であることも大きな問題であり、判決においても「不動産取引の専門家として十分な注意を尽くしたとは言い難い」と述べられています。

     

    なお、控訴されています。