弁護士メモ|千葉晃平のひとこと
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  • 【民事・時効】消費者被害救済のための参考文献  松本克美教授「続・時効と正義ー消滅時効・除斥期間論の新たな展開」(日本評論社)

    投資被害、欠陥住宅被害など、消費者被害の場面では、『加害行為を基準とすると3年、20年』といった時効・除斥期間という、権利消滅期間が経過してしまっている事案も少なくありません。東日本大震災をきっかけに被害が発覚した事案も少なくありません。

    こうした事案について、被害者側が『時の経過』のみで救済されなくなってしまうことは正義に反することも多いと感じられるなか、ご紹介させていただいた書籍は、正義の実現・被害者救済にむけて、多くの判例を分析され、実務上も大きな力をいただける内容となっています。

    『時の経過』を乗り越え被害救済に取り組む方はもとより、法的正義の考え方に触れることができる文献として、紹介させていただくものです。

     

    【民事・裁判】美術品(陶磁器・絵画)が贋作であった売買において、契約無効と売主(美術商)の責任が認められた裁判例(東京地裁H24・7・26)

    本件は、美術商が売主となり、著名な収集家所蔵の古伊万里焼、ルノワール作と告げられた絵画等の売買につき、いずれも贋作(或いは真贋が問題となるもの)であった事案で、「殊に、売主が専門家、買主が一般人である場合には、売主たる専門家は、そのような事実(注:前所有者や入手経路等)についても正確に伝えるべきであり、また、一般人である買主が売買対象の美術品の入手経路について誤解している場合には、売買契約を締結しようとする者として、これを正すべき信義則上の義務もあるということができる。」「このような専門家である売主(その代表者)と一般人である買主との間の本件絵画一のような高額な美術取引においては、売主となろうとする専門家は、買主となろうとする一般人に対し、当該美術品の市場における価値を正確に伝える信義則上の義務があるというべきである。」などと判示し、錯誤無効、売主の賠償責任を認めた事案です(判例時報2162号86頁)。

    控訴されているようですが、事案が珍しい感があることはおくとしても、専門家の責任の参考となる判断と思われます。なお、美術品の真贋に関する裁判例は、上記判例時報の解説部分にいくつか例があげられています。

     

    【民事・裁判】土地所有者による、土地内の他人の送水管切断行為が、不法行為にあたる判断された裁判例(東京地裁H24・4・27)

    仮に権利が存するとしても、裁判所を通じないで強制執行的な行為ができるとすると、社会秩序の混乱・社会的弱者の権利侵害等が生じることから、私人の権利実現は司法手続きを通じて行うという原則があり、自力執行の禁止(自力救済の禁止、自救行為の禁止)といわれています。

    本裁判例は、自力執行を行った土地所有者らに対し、「他人の所有物及びこれを使用収益する利益を侵害する行為であり、許されざる自救行為として違法であることは明らかである。」と判示し、結論として、約540万円の損害賠償を命じました(判例時報2160号47頁)。

    実務上参考となることのほか、法の原則、権利の存在と行使等を考える題材としてアップさせていただきました。

    【民事・裁判】交通事故の加害者側が、示談・訴訟において、当初過失を認めながらその後これを争う態度に至った態度が不誠実であるとして、慰謝料が増額された事案(福岡高裁H24・7・31判決)

    福岡高裁は、加害者側の保険会社の対応につき「事故から3年たった後にも加害者側に過失があることを前提として示談交渉がなされたいたことを考えれば、不誠実な態度であるとのそしりを免れない。」として、通常の事案に比し、慰謝料を増額し加害者側に賠償を命じました(判例時報2161号54頁)。一審判決も同様の判断であり、福岡高裁判決も確定しています。

    交通事故被害において、加害者側の保険会社が窓口となることも少なくないですが、残念ながら、被害者や事故当事者・関係者の「気持ち」に寄り添った対応が大きく欠けていると感じざるを得ないことも少なくなく、本判決は、こうした保険会社の対応へ警鐘をならすものもあります。

    交通事故被害救済に参考となる裁判例(考え方)です。

     

    【民事・時効】手術の約25年後に、体内にタオル残置されていたことが判明した事案につき、債務不履行の消滅時効の適用を否定し、賠償を命じた裁判例(東京地裁H24・5・9)

    東日本大震災の建物・造成の瑕疵等が問題となる事案において、法律上の権利行使期間(時効・除斥期間)が問題となる相談事案も多くあります。本裁判例が、不法行為について手術時から20年経過しているとして権利行使期間(20年の除斥期間・民法724条)が経過していると判断した点は、疑問も残りますが、債務不履行構成について、「権利を行使することができる時」(民法166条1項)につき、最高裁昭和45年7月15日を引用したうえ、タオル残置の手術時ではなく、「本件摘出手術」というタオル発見時の手術時によって「初めて本件タオルの残置を知り、その権利行使を現実に期待しうるようになった」として、権利行使期間(消滅時効期間)が経過していないと判断したことは、参考になると思われます(判例時報2158号80頁)。

     

    【民事・債務】弁護士の債務整理開始通知(受任通知)が破産・否認関係の「支払の停止」にあたるとする最高裁判例(H24・10・19)

    弁護士実務上、債務整理の開始通知を発送するにあたって(或いは管財業務上)留意すべき判断かと思い、限定的な面もありますが、ご参考までにアップします。

    判決文・最高裁HP

    http://www.courts.go.jp/search/jhsp0030?hanreiid=82647&hanreiKbn=02

     

    【民事・裁判】被災(日高・大雨氾濫)時の行政の現場対応につき、義務違反を認めた裁判例(札幌高裁H24・9・21判決)

    平成15年8月の日高地方の大雨時に、行政側が早期に門の操作職員を退避させた結果、適切な門操作等が行われず、氾濫が生じ住民の損害がでた事案につき、一審に続き、行政側の義務違反を認めたものです。

     
    裁判所HP
    → http://www.courts.go.jp/search/jhsp0030?hanreiid=82575&hanreiKbn=04
     
    東日本大震災時と異なる面があることはもちろんですが、行政の職員に対する安全配慮義務の視点にもふれ、しかしこうした非常時にこそ対応すべきであることを判示するなど、東日本大震災時の問題にも参考になる裁判例と思われます。

    【民事・マンション騒音】階上の騒音につき差し止め・賠償を認めた裁判例(東京地裁H24・3・15)

    マンション上下階における騒音問題につき、上階の者に対し、午後9時から翌日午前7時までの時間帯は40dBを超える騒音を、午前7時から同日午後9時までの間は53dBを超える騒音を、下階の部屋に聞こえるようにしてはならないこと、及び慰謝料・治療費・騒音測定費用の賠償を命じたものです(東京地裁H24・3・15 判例時報2155号71頁)。

    騒音による損害賠償を認める事案も多いとはいえませんが、さらに差し止めを認める例は多くはなく(認めたものとして横浜地裁S56・2・18 判例時報1005号158頁)、騒音立証の方法も含め、実務上参考になると思われます。

    【民事・家族】内縁解消後の財産分与義務につき、相続されるとする裁判例(大阪高裁H23・11・15決定)

    内縁解消後に、財産分与審判手続中に、財産分与義務者が死亡した事案につき、その義務者の相続人が財産分与義務を相続するか否かが問題となったものです。大阪高裁平成23年11月15日決定は、相続性を肯定しました(判例時報2154号75頁)。

    反対の立場からは、内縁関係の死亡解消の考え方(最高裁平成12年3月10日決定・判例時報1716号60頁)からすれば、相続性を否定すべきとの主張がなされましたが、その最高裁決定とは事案が異なるとして、相続性が肯定されたものです。

    内縁関係(社会的結合関係)の増加・多様化のなか、実務上、参考になる事案です。

     

    【民事・霊感商法】浄霊等の儀式により多額の金員を支出されたことにつき、寺院関係者の共同不法行為責任・寺院の使用者責任が認められた事例(名古屋地裁H24・4・13判決)

    いわゆる霊感商法被害の事例です。信教の自由との慎重な判断が求められる一方、信教・宗教に名をかりた悪質被害もあとをたちません。違法性判断基準として参考になると思われ、当該部分を、引用・アップいたします(判例時報2153号54頁)。

     

    「一般に、宗教団体が、当該宗教団体の宗教的教義の実践として、信者等に対して、儀式等を受けるように勧誘したり、任意に寄附や献金をするよう求めること自体は、信教の自由の一様態としての宗教活動の自由として保障されなければならないものであって、これを殊更に制限したり、違法と評価することは厳に慎まなければならない。

     また、金員の出捐を伴う儀式等を受けることを勧誘するに際して、特定の宗教を信じる者が、当該宗教団体における教義等に基づく、科学的に証明し得ない様な事象、存在、因果関係等を理由とするような吉凶禍福を説き、儀式等を受けることによって、そうした吉凶禍福を一定程度有利に解決することができるなどと信者等に説明することについても、その説明内容がおよそ科学的に証明できないことなどを理由として、直ちに虚偽と断じ、あるいは違法と評価することもすべきではないし、予め信者等の境遇や悩み等を把握した上で、そうした悩み等を解決する手段として、金員の出捐を含む宗教的教義の具体的実践を勧誘することも、直ちに違法と評価されるものではない。
     しかしながら、上記のような行為が、信者等をいたずらに不安に陥れたり、畏怖させたりした上で、そのような心理状態につけ込んで行われ、社会一般的に信者等の自由な意思に基づくものとはいえないような態様で行われたものである場合や、信者等の社会的地位や資産状況等に照らして不相当な多額の金員を支出させるなど、社会的に考えて一般的に相当と認められる範囲を著しく逸脱するものである場合などには、そのような行為は、反社会的なものと評価され、公序良俗に反するものとして、違法なものになるといわざるを得ない。そして、そのような行為の違法性の有無は、常に一つ一つの行為ごとに判断されるべきものとはいえず、信者に対する一連の行為を全体として見た場合に、社会的に相当と認められる範囲を逸脱するといえる場合には、その全体をもって違法な行為ということもできるというべきである。」