弁護士メモ|千葉晃平のひとこと
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  • 【民事・家族】審判に基づく子どもの引き渡し(強制執行)は困難であるとしながら、監護権者を定めて子どもの引き渡しを命じることが相当とされた裁判例(東京高裁H24・6・6決定)

    妻が子ども(9歳、5歳)と同居していたところ、夫が子どもを奪取した事案で、妻から子どもの引き渡し審判が申し立てられた事案です。子どもの意向等を踏まえ、夫のもとから強制的に子どもを引き離すことはできないとし強制執行が不能であるとことを認める一方、妻を監護権者と定めて夫に対し子どもの引き渡しを命じたものです(判例時報2152号44頁)。

    法的問題点としては、強制執行が不能であれば、子どもの引き渡しを命じる意味はないのではないかという点にありますが、子の福祉の観点等から、上記決定を相当としています。親族関係を扱う家庭裁判所にはこうした紛争に踏み込んで解決案(判断)を示すことが求められていること、法的正義を示すこと、違法行為の放置を避けること等から意味ある判断と思われます。

     

     

    【民事・契約】フランチャイズ契約の更新拒絶が債務不履行にあたるとして、フランチャイザー(マスター)に対し損害賠償が命ぜられた裁判例(東京地裁H24・1・30)

    いわゆる「ほっかほっか亭」の事案です。持ち帰り弁当販売事業を展開するマスターフランチャイザー(マスター)がしたフランチャイズ契約の更新拒絶が、債務不履行に当たるとして、サブフランチャイザーが新事業立ち上げのために支出した費用の一部につき損害賠償請求が認められた事例です。請求額が金20億円余に対し、金5億円余の支払いを命じたものです(判例時報2149号74頁)。控訴されているようです。

    判決では、「本件契約は、契約期間が満了しても、更新されて継続すると期待する合理的な理由があったというべきであって、このような期待は法的に保護されるべきものであるから、被告は、やむを得ない事由がない限り、更新を拒絶することは許されなかったと認められる」と述べており、他のフランチャイズ契約、継続的契約関係の紛争にも参考となる判断です。

    もっとも、現実の事案では、具体的な事実関係こそが争われることも多いです。

     

    【民事・債務】武富士の経営者個人責任を認めた裁判例(横浜地裁H24・7・17判決 裁判所HP全文掲載)

    武富士は現在会社更生という法的整理の状態ですが、いわゆる過払金(相当額)につき経営者に対する支払いを求めた事案につき、支払いを命じる判決が出されました。既にマスコミ等報道されていましたが、今般、裁判所HPに全文が掲載されました↓。

    http://www.courts.go.jp/search/jhsp0030?hanreiid=82481&hanreiKbn=04

     

    泣き寝入りせず問題の本質を追及し続ける当事者・弁護団の活動のたまものと思われ、今後の被害者救済にも大きな力となるものです。

    とくに、「武富士及び被告は、平成19年判決がされた4か月後である19年10月7日の時点以降は、引直計算をして、貸金債権の存否を確認することが十分可能であり,それをすべきであったにもかかわらず、それをせずに、貸金の請求をし、弁済を受けていたから、その時点で貸金債権が存在しない顧客については、通常の貸金業者であれば貸金債権が事実的、法律的根拠を欠くものであることを容易に知り得たにもかかわらず、あえて顧客に対して貸金の返還を請求し、弁済を受領していたと認められる。したがって、被告において,武富士が平成19年10月7日以降に貸金債権が存在しない顧客に対して貸金の返還を請求し弁済を受領した行為は、不法行為を構成すると認められる。」(判決文13から14頁)とする部分は、他社の違法取立・請求の被害救済にも大きな参考になると思われます。

     

    コンビニエンスストアの販売価格拘束が独禁法違反の違法性ありとされ損害賠償が命ぜられた事案(福岡地裁H23・9・15判決)

    フランチャイザー(本部)のフランチャイジー(加盟店)に対する、米飯・チルド等の消費商品(デイリー商品)について再販価格拘束が独占禁止法19条(不公正な取引方法の禁止)に反する違法があるとして、フランチャイザー(本部)に対し、損害賠償を命じた事案です(判時2133号80頁)。実務的には、損害額につき裁判所が「相当な損害額」を認定できるとする民事訴訟法248条が適用された点も参考になります。

    フランチャイズをめぐる紛争(加盟店が被害を受けるもの)は度々訴訟となっており、当HPでも、大阪地裁H22年5月12日判決の際に紹介したところです↓。

    http://www.kc-law.jp/cgi-bin/mt/mt.cgi?__mode=view&_type=entry&id=109&blog_id=2

    複数店舗の預金執行につき預金債権額による特定を認めた決定(東京高裁H23・10・26)

    預金債権を差し押さえるためには、同じ銀行でありながら、支店毎に手続きをとるべきだというのが旧来の考え方でした。しかしながら、この考え方ですと、銀行が名寄せ可能なシステムを有していること、そもそも銀行は各支店ではなく当該銀行自体がひとつの権利主体であること、民事訴訟で権利が確定しながら現実の回収が困難となり、ひるがっては民事訴訟という法制度自体の信頼性・有用性が揺らぎつつあること等々の問題があり、近時、強制執行の場面で、こうした問題をのりこえる決定例が多数出されるようになっています。本件は、全店一括順位付け方式による特定を否定した最高裁H23・9・20(判時2129号41頁)の後の判断でもあり、重要な意義を有すると思われます(判時2130号4頁)。

     

    訴訟遅延目的の貸金業者の控訴に対し制裁金納付が命じられた事例(大阪地裁H23・1・14判決)

    大阪地裁H23・1・14判決(判時2117号44頁)は、いわゆる過払金訴訟の事案で、貸金業者が控訴した事案につき、貸金業者の控訴は訴訟遅延のみを目的とするものであり、控訴権の濫用として、控訴権の濫用に対する制裁規定(民事訴訟法302条)に基づき、貸金業者側に金3万円の国庫納付を命じました。

    珍しい事案ですが、貸金業者の不当な応訴態度に対し、司法権を担う裁判所として正しい判断を示されたものであり、参考になると思われます。

    ※ 民事訴訟法303条(控訴権の濫用に対する制裁)

    1 控訴裁判所は、前条第一項の規定により控訴を棄却する場合において、控訴人が訴訟の完結を遅延させることのみを目的として控訴を提起したものと認めるときは、控訴人に対し、控訴の提起の手数料として納付すべき金額の十倍以下の金銭の納付を命ずることができる。
    2 前項の規定による裁判は、判決の主文に掲げなければならない。
    3 第一項の規定による裁判は、本案判決を変更する判決の言渡しにより、その効力を失う。
    4 上告裁判所は、上告を棄却する場合においても、第一項の規定による裁判を変更することができる。
    5 第百八十九条の規定は、第一項の規定による裁判について準用する。

     

    登録なき所有権留保自動車につき、別除権行使(引きあげ)を認められないとする判例(最高裁H22・6・4)

    民事再生事案における債権者からの自動車引渡請求につき、最高裁は、「原則として再生手続開始の時点で当該特定の担保権につき登記、登録等を具備している必要があるのであって(民事再生法45条参照)、本件自動車につき、再生手続開始の時点で被上告人を所有者とする登録がされていない限り、販売会社を所有者とする登録がされていても、被上告人が、本件立替金等債権を担保するために本件三者契約に基づき留保した所有権を別除権として行使することは許されない。」と判示しました。

    いわゆる個人破産の場面などにおける自動車引渡請求の実務的取扱にも少なからず影響があると思われます。

    要旨・全文は最高裁HPに掲載されています↓。

    http://www.courts.go.jp/search/jhsp0030?action_id=dspDetail&hanreiSrchKbn=01&hanreiNo=80283&hanreiKbn=01

    自衛隊内の女性自衛官への性暴力・退職強要等につき、国(自衛隊)の責任認める判決(札幌地裁H22・7・29)

    札幌地裁で争われていた、自衛官(女性)が上司たる自衛官から性暴力を受け、さらに、係る被害につき訴訟を提起したところ、不当に再任用を拒否された事案につき、平成22年7月29日、札幌地裁(民事第3部・橋詰均裁判長)は、国(自衛隊)の責任を認め、国に対し金580万円(慰謝料500万円、弁護士費用80万円)の支払いを命じました。

    国は判決内容を争えない(否定できない)と判断したのでしょう。控訴せずに上記判決は確定しました。

    判決の重要性はもとより、原告の提訴に至る勇気、原告・支援者・弁護団のご活動に敬意を表します。

    詳細は、NPJのホームページ内の下記アドレスでご参照いただけます。

    http://www.news-pj.net/request/joseijieikanjinken/index.html

    パロマ製給湯器一酸化炭素中毒事故で元社長ら有罪判決(東京地裁H22・5・11)

    大きく報道されているとおり、パロマ製給湯器の一酸化炭素中毒死亡事故につき、元社長(代表者)に対し、小林被告に禁固1年6月、執行猶予3年(求刑禁固2年)、元品質管理部長に対し、禁固1年、執行猶予3年(求刑禁固1年6月)を言い渡しました。死亡等の被害を知りながら人命優先の措置を怠ったものであり、改めて原因究明・民事上の賠償に関する製造者としての責任ある対応がのぞまれます。

    民事関係の動向など↓。

    http://www.news-pj.net/npj/2008/paroma-20080118.html

    CFD取引は賭博行為・公序良俗違反で違法とする判決(東京地裁H21・10・1)

    東京地裁(民事第16部)において、平成21年10月1日、いわゆるCFD取引(店頭証拠金差額決済取引)につき「本件取引は、偶然の事情によって利益の得喪を争うものとして賭博行為に該当し、公序良俗に反し、違法である」との判断が示されました(過失相殺なし)。業者代表者の責任も認めており、近時多発するCFD取引被害救済の大きな力になる判決と思われます。